BreakingDownとはオーディション番組とその後に行われる1分間の格闘技試合の大会の総称である。
オーディションにおいてはブレイキングダウンは(以下BDと略す)リアリティ番組(リアリティショー)に分類される形態の番組である。
リアリティ番組と呼ばれるものは現在多岐にわたるが、典型的なものの一つとして「やらせや台本はないが演出はある」と言われる。
そして番組としての大まかな方向性は番組側から示されるものの、どの程度演出を意識して行動するかは個人の判断に委ねられる。
英語で恋愛リアリティショーを「Dating Show」と言うがさしずめBDは「Fighting Show」とでも言うべきであろうか。
出演者が"相手"を探し選んでいくところまでは恋愛リアリティショーと同様である。
しかしBDにおいては「戦う」相手を探していくのだ。
そしてその「戦う」という概念も出演者のバックグラウンドや目的により異なる。
アウトロー枠で登場する出演者は喧嘩(をするつもりで試合の対戦)相手を、武道・格闘家枠で出演する選手は対戦相手を、お笑い枠で登場する演者は対戦までの交渉の段階で絡めば面白い相手を探して掛け合うのである。
誰もが爪痕を残そうとするオーディションの場も各々にとってはさながら戦場なのだ。
そうして対戦相手が決まれば1分間のキックルール、選手によっては1分間のMMAルールで行われる。
アウトロー枠で登場する演者の、オーディションでの粗暴な振る舞いが悪目立ちするが、参加するのは彼らのみではない。
経験の濃淡はあれどプロ格闘技経験者や武道経験者、野球や陸上等のスポーツ経験者やお笑い芸人達も参加する。
終始落ち着いた言動で対戦要求から試合の約束まで行われるケースも実は多いのである。
これらは試合内容の実力で魅せる自信の裏返しの場合もあるであろうし、確たる実績がストーリーとして十分に機能している為あえてオーディションで気張る必要はないと考えている場合もあるであろう。
逆にある程度の実績を持つ経験者として参加しつつも、激しい舌戦やいざこざを通してストーリーを更にプラスして盛り上げようとする選手もいる。
この辺りのさじ加減が個人の価値観やその時々の流れに委ねられるのもリアリティ番組の面白さである。
アウトロー枠の出演者の粗暴さに眉を顰める方には、本書においてCEOの朝倉未来が語る「ドロップアウトした人達への厚生の機会」という言にも注目していただきたい。
2年前の彼のYouTubeチャンネルの『大きな夢を語ります』という動画も大いに参考になるかも知れない。このテラスハウスの構想が淵源となり諸事情を経て今のBreakingDownに繋がっているように思えるからだ。
彼の「格闘技経験の薄いレベルの低い選手でも立ち振る舞いで輝ける試合も残したい」との狙いも根本的には更生の機会の入り口を広く設けようとしているのだと思う。
また開催の目的として「格闘技スター選手の発掘」も語っているが、この時期に「本物」の発掘を主目的として海外でも実績のあるMMA選手が別の団体を立ち上げたのも興味深い。
下のレベルとされるお笑い枠や更生枠を残す限り純度の高い団体とは比較されやすく、時には揶揄されることも想像に難くないからだ。
しかしまさにヘルマン・ヘッセが『車輪の下』で指摘したように、後から見て我々の社会を豊かにしてくれるものは、往々にしてその当時は異端視され疎まれ爪弾きにされていだものなのだ。
後世に名を残す「本物」は案外こうした雑多な場所から芽を出すのかも知れない。
ともあれ一度道を外れた者への厚生の機会の提供と、格闘技のトップを目指す未来のスター選手発掘という二つの困難を両輪に進もうとしている一人の青年と彼の起こした団体を、私としてはこれからも見守っていきたいと思う。
車輪の下に潰されてもその轍から芽を出す雑草の強さに期待しつつ
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