本書は、聞きなれない言葉だと思うが「進化医学」について書かれた本である。
「生物は生存の危機に瀕した時に止むに止まれず進化する」という理論に基づいて人類の進化の歴史の必然性を紐解き、その文脈から、「現代の人類が様々な厄介な病に悩まされているのはなぜなのか?」という謎に挑戦する、現代病を大局から見たスケールの大きな本だ。
上巻では、ほとんどのページを使って、人類史を、我々がチンパンジーの系統から別れた凡そ600万年前の類人猿の時代から現代まで辿り、残りの僅かなページで、下巻の主要テーマとなると思われる理論-「その進化の結果としての現代人が今現在置かれている環境とのミスマッチが現代の様々な病気の原因となる」-の概念を紹介するところまでを扱っている。
前半の人類の進化の歴史に関する推察は極めて刺激的で興味深いものだ。順に要点をまとめて行く。
1.初期人類
特徴:2本足で直立歩行するのに適した特徴を持っている。
進化の起きた理由:気候の寒冷化により、樹上生活の猿の主食であった果実が以前ほど豊富でなくなり、食料を得るために木から下りて地上を歩く必要が生じた。そのため、歩行に要するエネルギー効率が良く、両手で果実をたくさん抱えることのできる直立歩行が有利に働いた。
2.アウストラロピテクス
特徴:頑丈な歯とがっしりとした顎、より2足歩行に適した体格。
進化の起きた理由:寒冷化により、より果実が取れなくなり、代用食の中でも栄養価の高い地下貯蔵器官(球根、芋など)を食べるようになったこと、それらが非常に固いものであったこと。また、更に寒冷化する中でより長い距離の移動を要求されたこと。
3.ホモ・エレクトス(初期ホモ属)
特徴:現生人類の形状に近い足と脚と腕、小さな歯、それなりに大きな脳と短い腸。
進化の起きた理由:子育て中の母親が自分と子供に必要なエネルギーを賄うために狩猟を行うようになったこと。そして、肉を短時間で食べて、なおかつ同じ量からより多くのエネルギーを吸収するために、肉を切り刻む必要が生じたこと。また、狩猟のために、長距離走が必要となったこと。
4.ネアンデルタール人
特徴:現代人よりも大きい脳と長い発達期間。
進化の起きた理由:狩猟、調理、協力と技術により、良質のエネルギーをもたらす食料を充分に得ることができるようになり、余剰のエネルギーを、より複雑な社会行動を取れるように脳の発達に回すように自然選択が働いた。
5.ホモサピエンス
特徴:【身体的特徴】側頭葉と頭頂葉の発達と、明瞭な発話に適した声道の構造
【能力上の特徴】上記2点により、文化的能力を生み出す力を持っていること。
進化の起きた理由:文化は、身体に進化を要求する環境からの影響を和らげたり無効にしたりすることができるため、文化的能力を得るための身体的特徴を選択した。
これらは全て、あくまで推測に過ぎないが、確度はかなり高いと感じられる。
これだけで充分に、というよりは刺激的に面白いが、これはあくまで前振り。この経緯を踏まえて現代病の起きるメカニズムとその対策に迫る下巻に大きな期待を持たせてくれる。
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人体六〇〇万年史 上──科学が明かす進化・健康・疾病 (早川書房) Kindle版
非力なヒトはなぜ厳しい自然選択を生き残れたのか。走る能力の意外な重要性とは何か。脂肪が健康を害するなら、なぜヒトの体は脂肪が溜まりやすくできているのか。2型糖尿病など、現代人特有の病はそもそもどうして現れたのか……。人類進化の歴史をさかのぼることは、不可解な病がどこから来たのかを教え、ヒトの未来を占うことにもつながる。「裸足で走ることへの回帰」を唱えて名を馳せた進化生物学者リーバーマンが満を持して世に問う、人類進化史の決定版。
- 言語日本語
- 出版社早川書房
- 発売日2015/9/25
- ファイルサイズ13889 KB
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商品の説明
著者について
◎著者紹介
ダニエル・E・リーバーマン(Daniel E. Lieberman)
ハーバード大学人類進化生物学教授、同大エドウィン・M・ラーナー2世記念生物学教授。《ネイチャー》《サイエンス》誌を初めとする専門誌に100以上の論文を寄稿。ヒトの頭部と「走る能力」の進化を専門とし、靴を履かずに走る「裸足への回帰」を提唱、「裸足の教授」と呼ばれる。その研究と発見は新聞、雑誌、書籍、あるいはテレビのニュース番組やドキュメンタリーにおいて注目されている。
◎訳者略歴
塩原通緒(しおばら・みちお)
翻訳家。立教大学文学部英米文学科卒業。訳書にボール『流れ』、スピーロ『ポアンカレ予想』(共訳)、イアコボーニ『ミラーニューロンの発見』(以上早川書房刊)、ピンカー『暴力の人類史』(共訳)、ランドール『宇宙の扉をノックする』『ワープする宇宙』、バラバシ『バースト! ――人間行動を支配するパターン』ほか多数。
ダニエル・E・リーバーマン(Daniel E. Lieberman)
ハーバード大学人類進化生物学教授、同大エドウィン・M・ラーナー2世記念生物学教授。《ネイチャー》《サイエンス》誌を初めとする専門誌に100以上の論文を寄稿。ヒトの頭部と「走る能力」の進化を専門とし、靴を履かずに走る「裸足への回帰」を提唱、「裸足の教授」と呼ばれる。その研究と発見は新聞、雑誌、書籍、あるいはテレビのニュース番組やドキュメンタリーにおいて注目されている。
◎訳者略歴
塩原通緒(しおばら・みちお)
翻訳家。立教大学文学部英米文学科卒業。訳書にボール『流れ』、スピーロ『ポアンカレ予想』(共訳)、イアコボーニ『ミラーニューロンの発見』(以上早川書房刊)、ピンカー『暴力の人類史』(共訳)、ランドール『宇宙の扉をノックする』『ワープする宇宙』、バラバシ『バースト! ――人間行動を支配するパターン』ほか多数。
登録情報
- ASIN : B015SSE0XG
- 出版社 : 早川書房 (2015/9/25)
- 発売日 : 2015/9/25
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 13889 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効
- Word Wise : 有効にされていません
- 付箋メモ : Kindle Scribeで
- 本の長さ : 407ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 52,019位Kindleストア (Kindleストアの売れ筋ランキングを見る)
- - 224位生物・バイオテクノロジー (Kindleストア)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2016年1月13日に日本でレビュー済み
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2017年11月13日に日本でレビュー済み
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上巻だけで330ページ。手に取っただけで心が折れそうになる厚さでしたが、文章は平易で興味を引くように書かれていて、1か月(!)程で読み終わりました。
こういう長い長い本は、内容がとても興味深かったとしても、「読み終わったころには最初の方に何が書いてあったか忘れてしまう」というのが玉に瑕ですね。俺だけなのか?
何百万年の間、生きるためにとても大切だった「脂肪」。だから体はどんどんそれを取り入れる、そういう風に進化してきた。でも今ではそれを取りすぎると糖尿病になってしまったり。
例えばこれが「進化的ミスマッチ」。人体の進化を理解することで、ミスマッチの原因を突き止め、どう対処していけばいいのかを考える、というのが主題ですが、上巻では、そこにたどり着くまでの「人体の進化」の歴史が詳しく、面白く書いてあります。
是非知っておきたい、知っておくべき、とても大切な知識と知恵がここにある。問題は読み終わったころにはあらかた忘れていることだけではないでしょうか。
こういう長い長い本は、内容がとても興味深かったとしても、「読み終わったころには最初の方に何が書いてあったか忘れてしまう」というのが玉に瑕ですね。俺だけなのか?
何百万年の間、生きるためにとても大切だった「脂肪」。だから体はどんどんそれを取り入れる、そういう風に進化してきた。でも今ではそれを取りすぎると糖尿病になってしまったり。
例えばこれが「進化的ミスマッチ」。人体の進化を理解することで、ミスマッチの原因を突き止め、どう対処していけばいいのかを考える、というのが主題ですが、上巻では、そこにたどり着くまでの「人体の進化」の歴史が詳しく、面白く書いてあります。
是非知っておきたい、知っておくべき、とても大切な知識と知恵がここにある。問題は読み終わったころにはあらかた忘れていることだけではないでしょうか。
2018年9月4日に日本でレビュー済み
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糖質制限の勉強をしているうちに、本書に出会いました。深く研究されており、通常は短い人生のため、後世に伝えきれなかった事が書かれていると感じました。貴重な文献だと思います。
2020年1月18日に日本でレビュー済み
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ロカボでダイエットはできなかったが、血液検査の値がすべて正常値の範囲に戻ったので、進化論の観点から理解したくて読んでみた。急速な文化変化によって起こったいろいろなミスマッチを確認したが、大筋は既読のブルーバックスの「進化から見た病気―「ダーウィン医学」のすすめ」で十分だった。無内容とは言わないが、とにかく冗長すぎる。
進化論の知見を増やしたいと思うなら、E・O・ウィルソンの「ヒトはどこから来たのか、どこへ行くのか」や、ジョセフ・ヘンリックの「文化がヒトを進化させた」を読まれることをお勧めします。
進化論の知見を増やしたいと思うなら、E・O・ウィルソンの「ヒトはどこから来たのか、どこへ行くのか」や、ジョセフ・ヘンリックの「文化がヒトを進化させた」を読まれることをお勧めします。
2017年1月28日に日本でレビュー済み
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食事や、歯についての話が面白かったです。
自然環境や生態系の変化がヒトに与えた進化や影響、順応の為の発明などがヒトに与えた影響など、いろいろうんちくが増えそうです。
自然環境や生態系の変化がヒトに与えた進化や影響、順応の為の発明などがヒトに与えた影響など、いろいろうんちくが増えそうです。
2018年9月12日に日本でレビュー済み
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人が生物の頂点に立てた最大の理由「二本足歩行」にどうしてなったかが、歴史的、骨格学的見地から推測・検証されており、私のような本質探求マニアには面白い読み物です。この系統は何冊か読みましたが、ちょっと違う視点で描かれています。その当時の居るかのようなリアリティも堪能出来ます。
2016年1月7日に日本でレビュー済み
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人体は二足歩行開始後に600万年間の狩猟採集生活に適応して進化してきたが、その後の12,000年間の農耕生活、最近250年間の産業革命を経た急激な生活環境の変化に対して生物学的には不適応となり(特に食事と運動の面)、数々の生活習慣病(本書ではミスマッチ病と呼ぶ)を発生させているということ。先進国のGDPの何割かは慢性疾患の治療とか介護に費やされており、これは新興国でも同じ傾向。まさに人類共通の解決課題。
確かに百万年単位/一万年単位/百年単位は対数(log)の世界の変化であり、そんな急激な変化に人間の遺伝子が追随できる訳がなく、数々の弊害が起こるのも無理はない。また悪しき文化が継承されることも進化に対する退化であると言える。結論は昔の生活に戻れと言っている訳では勿論なく、文化&生活習慣の改善で不必要な疾病を避けるための知恵を出して行動に移そうということ。行動経済学的のソフト・パターナリズムとも関係あり。
確かに百万年単位/一万年単位/百年単位は対数(log)の世界の変化であり、そんな急激な変化に人間の遺伝子が追随できる訳がなく、数々の弊害が起こるのも無理はない。また悪しき文化が継承されることも進化に対する退化であると言える。結論は昔の生活に戻れと言っている訳では勿論なく、文化&生活習慣の改善で不必要な疾病を避けるための知恵を出して行動に移そうということ。行動経済学的のソフト・パターナリズムとも関係あり。
2015年11月5日に日本でレビュー済み
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話はくどいが、思い当たる節ばかりで最初から最後まで一気に読ませる。
運動が嫌いで、ダイエットは失敗ばかり、血圧は高く、最近親知らずを抜き、病気で死ぬのかと心の底で漠然と思い、重大疾病カバーの保険に入り。。。
何をすべきか、何をすべきでないか。即座に実践に移せる説得力。
運動が嫌いで、ダイエットは失敗ばかり、血圧は高く、最近親知らずを抜き、病気で死ぬのかと心の底で漠然と思い、重大疾病カバーの保険に入り。。。
何をすべきか、何をすべきでないか。即座に実践に移せる説得力。