相対論や量子論に代表される現代物理学による“この世界”の描像と実在について様々な角度からの論考集であり、科学史的なことや日本での相対論の“流行”・反相対論など関連する話題も掲載されている。EPRパラドックスやブラックホール・重力波などが取り上げられているが、主として科学哲学的な視点であるようだ。すなわち方程式にしろブラックホールの“写真”にしろ、それによって我々は何を知るのか、あるいは知らないのか？ といったことである。更には認識論的な論点だけでなく存在論的なところに進んでいく。
思想哲学的観点がメインとは言え宇宙物の啓蒙書くらいは読んだことがないと頭に入りにくいかもしれない。個人的にはジルベール・シモンドンに関する記事は興味深い。ただ、相対論的質量（高速になると重くなる）は今では物理界隈ではあまり使わなくなった概念であるし、相対論の世界では古典的な実体概念が当てはまらないといっても、４次元時空内での不変量があり、４次元時空で存在論的にどうであるのかと３次元空間＋１次元時間で認識論的にどうであるのかは識別されているのか...など疑問な点はある。すると今度は直に著作を読んでみよう、となるわけである。
既にある程度知っていても案外まだ知らなかった内容が含まれているのではないかと思う。この分野は得意だと思っている人にも読む価値は大きい。
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