八世界シリーズに属する短編が発表順に収録されており、
本書では1974年から1976年発表の七作品が集められている。
作品が発表された年で、1975年は、ベトナム戦争終結した年であり、
また、70年代といえば、映画では、アメリカン・ニューシネマが席巻し、愛と平和とセックスが唱えられた時代であった。
八世界シリーズとは、宇宙人の侵出により地球を失った人類が、へびつかい座から送られてくる高密度レーザーに含まれていた情報をもとにして
創り上げられた超テクノロジーを身にまとい、クローン技術、人体改造、そして手軽な性転換等の遺伝子操作を駆使して自らを環境に適応させ、
太陽系の各地に進出している世界を、その背景としている。
この短編集では、いくつかのイベントを通して、極めてパーソナルな視点で登場人物たちの心のひだが描かれていく。
それは、例えば、
不死に近い生命を獲得し、手軽な性転換できる時代に、月に住む主人公がピクニックで体験する初めての地球の姿と、
セックスについての思いや、老化に対する恐怖であったり、
ひと夏の体験として、クローンの姉と、水星を旅しながら描き出される水星の自然と、性転換やクローン技術が生みだす新たな家族・親子の姿、
冥王星軌道のはるか外側の虚空を舞台とした、ボーイ・ミーツ・ガールのラブストーリーや、
クローンと記憶移植により何度でも人が再生できるようになった社会で、何度も殺害されて再生された主人公が、自分殺しの犯人を探す話しであったりと、
様々な状況下での出来事が描かれるが、その視点は、一人称で、常に内省的で、自分の心の変化に向けられている。
それにしても、何だろう、読後に感じる、この優しさと、寂しさ。。。。そして、センスオブワンダーは。。
サイバーパンクの先駆け的存在と評される作品であるが、ヴァーリイの作品の質感は、それとは全く異なるものであり、
非常にオリジナルで、他のどの作家でも体験できない文学的な体験である。
同時に、著者が物理学を専攻していたことより、惑星の天体現象等の科学描写に強い説得力があり、
話の展開も、極めて論理的で、SFとして安心して読みすすめることができる。
まとめると、ここに収められた全ての作品は、超傑作だということ。
バチガルビとか、村上春樹とか好きな人は、特に楽しめるのではないでしょうか。
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汝、コンピューターの夢 (〈八世界〉全短編1) (創元SF文庫) 文庫 – 2015/10/11
突如現われた超越知性により地球を追放された人類は、太陽系外縁で謎の通信ビームを発見。それを解読して得た、卓越した科学技術を用いて自らの肉体を改変し、水星から冥王星にいたる様々な環境に適応して、新たな文明を築く……性別変更や人格コピーさえ個人の自由になった未来を、鋭い予見性と鮮やかな叙情で描く。70~80年代を代表する天才の傑作〈八世界〉シリーズ既発表全短編を、新訳&改訳で贈る。第1巻は7編を収録。
- 本の長さ397ページ
- 言語日本語
- 出版社東京創元社
- 発売日2015/10/11
- ISBN-104488673058
- ISBN-13978-4488673055
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登録情報
- 出版社 : 東京創元社 (2015/10/11)
- 発売日 : 2015/10/11
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 397ページ
- ISBN-10 : 4488673058
- ISBN-13 : 978-4488673055
- Amazon 売れ筋ランキング: - 749,967位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 353位創元SF文庫
- - 3,655位SF・ホラー・ファンタジー (本)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2016年4月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「スチールビーチ」「ブルーシャンパン」が好きで「蛇使い座」も読んだが、この短編集は日常的過ぎる気がした。SFとしては正しい、しかし、もう少し高揚感が欲しい。あり得る未来描写や、その時代には人の常識も変容しているであろう心理も丁寧に描けている。でもせっかくの「八世界」なのだから、もっとすごいセンスオブワンダーを見たかった。
2017年3月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
がっつり系のSF短編集。1970年代に書かれたものであるが、古くさくはない。むしろ、今につながる技術や発想などを鑑みると、現代の作品の発想の質が悪いように思えてくる。舞台は未来の太陽系。想像上の技術が当たり前の世界であり、情景を映像として頭の中に浮かべるのは苦労するが、それを楽しく感じるし、楽しめたら他のSF作品も楽しく読めるだろう。個人的に好きな作品は、「カンザスの風景」、表題作の「汝、コンピューターの夢」、「汝、コンピューターの夢」だ。
2015年12月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ディレー二とヴァーリイの新刊が読めるなんて、いい一年でした。
SFの傑作は、ありもしない事だけを書いているのに、読者にノスタルジーと喪失感を刻みつけたりします。なんてカッコつけるのは恥ずかしいので、正直に言います。いつでもヴァーリーはたまらないなあ。良い。もう絶対戻れない、夏休みの終わりの記憶がよみがえるよ。もっと読みてえなあ。
星4つなのは、早川書房刊「逆行の夏」と収録が重なっているからです。やっぱりちょっとがっかりしますもん。もっと読みたいんですから。
SFの傑作は、ありもしない事だけを書いているのに、読者にノスタルジーと喪失感を刻みつけたりします。なんてカッコつけるのは恥ずかしいので、正直に言います。いつでもヴァーリーはたまらないなあ。良い。もう絶対戻れない、夏休みの終わりの記憶がよみがえるよ。もっと読みてえなあ。
星4つなのは、早川書房刊「逆行の夏」と収録が重なっているからです。やっぱりちょっとがっかりしますもん。もっと読みたいんですから。
2015年12月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
早川の「残像」「ブルーシャンペン」、創元の「バービーはなぜ殺される」で、すっかりとりこになったヴァーリィ。既刊三冊は、八世界シリーズ以外も混じっていたため、八世界の世界観が途切れる面があった。新作はないが、八世界ものだけを発表順に収録する企画に興味を持って買い、再読した。新訳も二編あるし、何より世界観が明確になって、八世界がより一層わかる感じがした。続巻が待ち遠しい。
絶対に戻れない故郷・地球を常に感じながら、人類は辺境で気ままに暮らしている。この人類がどこか捨て鉢で、いつも寂しそうなのは、やはり地球を失ったという意識からなのだろう。驚異のテクノロジーを駆使しながら、八世界の人類は孤独である。
絶対に戻れない故郷・地球を常に感じながら、人類は辺境で気ままに暮らしている。この人類がどこか捨て鉢で、いつも寂しそうなのは、やはり地球を失ったという意識からなのだろう。驚異のテクノロジーを駆使しながら、八世界の人類は孤独である。
2018年5月26日に日本でレビュー済み
「ピクニック・ニアサイド」という題名は覚えていたが、内容は忘れていた。もっと危機感がある話だと思っていたが..
芯は、ハードでいい感じにもかかわらず、恋愛観、関係が邪魔。ハッキリ言ってべたべたしすぎで気持ち悪い。
人口密度がものすごく低い領域が舞台であるためか、今よりもタブーも少ない。著者はそれを言いたいのだろう。
間違っていないと思うが、それを前面に出しすぎる主人公たちは、その時代においては意識過剰なのではないだろうか。
とか、なんとか考えると主題に入る前に疲れてしまいます。
芯は、ハードでいい感じにもかかわらず、恋愛観、関係が邪魔。ハッキリ言ってべたべたしすぎで気持ち悪い。
人口密度がものすごく低い領域が舞台であるためか、今よりもタブーも少ない。著者はそれを言いたいのだろう。
間違っていないと思うが、それを前面に出しすぎる主人公たちは、その時代においては意識過剰なのではないだろうか。
とか、なんとか考えると主題に入る前に疲れてしまいます。
2015年11月15日に日本でレビュー済み
ジョン・ヴァーリイの「八世界シリーズ」の特徴はクローン技術により「自由に改変可能な性別と肉体を持った人類」の登場であり、それによる「異星環境へ適応した肉体」であり、「脳内データを移行することにより肉体が滅んでも次々と次の肉体へ乗り換えることで可能になった不死」である。最新のSF作品ではごく当たり前の設定だが、これが当時には意外と衝撃的だった。
肉体は精神の入れ物であり、その肉体さえ交換可能なのなら人間は不死、そして精神というのはデータでしかなく、いくらでもアップロード/ダウンロード可能、という設定というのは、人間は畢竟「モノ」である、「モノ」でしかない、ということだ。そして幾らでも改変可能な肉体、というのは、それは人間である必要すらない、ということだし、何度もとっかえひっかえできる性別、というのは、逆に言うともはやジェンダーに意味はない、ということでもある。つまりジョン・ヴァーリイは「(一般的な)人間という概念」を全部ぶっ壊した所から物語を始めているのである。これはある意味革命的なことだったのかもしれない。
さて、これらのジョン・ヴァーリイ小説の特徴は、既に何十年も前から言われてきたことで、オレがなにか新しいことを言っているわけではまるでないのだが、それでも今回『汝、コンピューターの夢』を読み終えて気付いたことがある。それは、これだけ「人間という概念」を壊しまくり、ひたすらエキセントリックな新人類とその社会を描きながらも、ジョン・ヴァーリイはただ一点、「愛」だけはどの物語にも存在する、ということだ。これだけ奇異な物語を表出させながら、どの物語にもロマンス要素は必ずと言っていいほどあり、しかもそれが物語の展開に最も重要な役割を与えられているのだ。即ち、全てが変わってしまった人類が、「愛」だけは変わらず持ち続けている、といういうことなのだ。そして、その「人間的要素」ただ一つだけで、これら奇異な人々の登場する奇異な物語が共感可能となっているのである。
これは別に「愛の不滅」を訴えてるとかそういうことじゃなくて、作家ジョン・ヴァーリイの中にそういったロマンチズムがあったからなのだろうと思う。だから、肉体も精神も「モノ」として捉え未来世界を描写する最新SFのニヒリズムと、この一点においてジョン・ヴァーリイは線引きがされる。それによりジョン・ヴァーリイの小説には旧世代SF作家ならでは古臭さと温かみとがある。古臭い、というのは厳密なテクノロジー描写が成されない、という部分にもあるんだが、ジョン・ヴァーリイの興味はそこには無く、肉体や精神の持つ限定されたくびきを全部チャラにした「新しい人間の在り方」を描きたかった、ということなんじゃないかな。
肉体は精神の入れ物であり、その肉体さえ交換可能なのなら人間は不死、そして精神というのはデータでしかなく、いくらでもアップロード/ダウンロード可能、という設定というのは、人間は畢竟「モノ」である、「モノ」でしかない、ということだ。そして幾らでも改変可能な肉体、というのは、それは人間である必要すらない、ということだし、何度もとっかえひっかえできる性別、というのは、逆に言うともはやジェンダーに意味はない、ということでもある。つまりジョン・ヴァーリイは「(一般的な)人間という概念」を全部ぶっ壊した所から物語を始めているのである。これはある意味革命的なことだったのかもしれない。
さて、これらのジョン・ヴァーリイ小説の特徴は、既に何十年も前から言われてきたことで、オレがなにか新しいことを言っているわけではまるでないのだが、それでも今回『汝、コンピューターの夢』を読み終えて気付いたことがある。それは、これだけ「人間という概念」を壊しまくり、ひたすらエキセントリックな新人類とその社会を描きながらも、ジョン・ヴァーリイはただ一点、「愛」だけはどの物語にも存在する、ということだ。これだけ奇異な物語を表出させながら、どの物語にもロマンス要素は必ずと言っていいほどあり、しかもそれが物語の展開に最も重要な役割を与えられているのだ。即ち、全てが変わってしまった人類が、「愛」だけは変わらず持ち続けている、といういうことなのだ。そして、その「人間的要素」ただ一つだけで、これら奇異な人々の登場する奇異な物語が共感可能となっているのである。
これは別に「愛の不滅」を訴えてるとかそういうことじゃなくて、作家ジョン・ヴァーリイの中にそういったロマンチズムがあったからなのだろうと思う。だから、肉体も精神も「モノ」として捉え未来世界を描写する最新SFのニヒリズムと、この一点においてジョン・ヴァーリイは線引きがされる。それによりジョン・ヴァーリイの小説には旧世代SF作家ならでは古臭さと温かみとがある。古臭い、というのは厳密なテクノロジー描写が成されない、という部分にもあるんだが、ジョン・ヴァーリイの興味はそこには無く、肉体や精神の持つ限定されたくびきを全部チャラにした「新しい人間の在り方」を描きたかった、ということなんじゃないかな。