著者は日本における英国史、とりわけ、英王室の歴史の第一人者。本書「世界史のリタレシー」は若い世代に、世界の中の日本を学んでもらうためのシーリーズで、とてもわかりやすい文章で書かれている。
本書は、英国における立憲君主制、すなわち国王と議会の関係を考える上で最も重要な出来事であった名誉革命に焦点を当てた労作である。
権力とはいつの時代でも農業や工業生産の収穫物に対して課税して、それを原資として社会や国家が国や社会を営んでいく力である。戦前の日本では社稷という言葉が用いられていた。英国の歴史は、国王の恣意的な政策や行動を容認できなくなった貴族や国民が王を退位させて、議会を発足させたことで展開してきた。
しかし、権力と権威は別物で、英国の場合でも、フランスの場合でも革命によって一度は国王が追放されて、共和制度が誕生しても、革命を起こした人物が独裁化して、元の木阿弥になる。英国では、国王を処刑したオリバー・クロンウエルが、そして、フランス革命では、ナポレオンが皇帝となり、やがて、国民の失望の末に王政復古が起きた。
英国においては、王権と議会の力の折々の対立や均衡へのさまざま工夫を経て、現在の立憲君主制という制度で落ち着いている。6月に総選挙を行うために首相が議会を解散したのだが、首相に解散の許可を与えているのはチャールズ国王である。
日本も天皇を元首として、首相や内閣が存在し、その前提として衆議院と参議院が機能している。世界で今戦争を起こしている、そして、覇権を強硬に主張している国家においては、独裁者に権力が集中し、たとえ、間違った判断をされても、国民は羊のように従うのみである。
そう考えると、英国と日本においては、権力と権威が二分化されていて、お互いに暴走しないようになっているのは素晴らしい政治的な工夫である。英国において、その契機となった名誉革命の背景を本書で知り、目から鱗であった。
中学生になった年に長兄が買い求めた中央公論社の『世界の歴史』の緑の装丁の本を手にして、夢が広がった。本書と、このシリーズは、若者に世界史をわかりやすく理解してもらうためには最適の書である。真の国際人とは、単に英語が話せるだけではなく、英語が国際語となった歴史や社会の背景を理解することが前提である。本書は、その最適な手引きである。
Kindle 価格: | ¥1,089 (税込) |
獲得ポイント: | 11ポイント (1%) |
を購読しました。 続刊の配信が可能になってから24時間以内に予約注文します。最新刊がリリースされると、予約注文期間中に利用可能な最低価格がデフォルトで設定している支払い方法に請求されます。
「メンバーシップおよび購読」で、支払い方法や端末の更新、続刊のスキップやキャンセルができます。
エラーが発生しました。 エラーのため、お客様の定期購読を処理できませんでした。更新してもう一度やり直してください。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
世界史のリテラシー イギリス国王とは、なにか 名誉革命 Kindle版
なぜ、王権と議会は協調できたのか? 立憲君主制の確立は、「奇蹟」の革命であった。
イギリスには、どうして未だに国王がいるのか? 世界の今を解くカギは、すべて歴史の中にある――。誰もが一度は耳にしたことがある「歴史的事件」と、誰もが疑問を抱く一つの「問い」を軸に、各国史の第一人者が過去と現在をつないで未来を見通す新シリーズの第6弾! なぜイングランドは「立憲君主制」になったのか? なぜ「絶対君主制」にはならなかったのか? 〈国王は君臨すれども統治せず〉。「賢人会議」から議院内閣制の定着を経て現代へ。一千年以上の長きにわたる「王権」と「議会」の絶妙な関係を解き明かす。
【内容】
第1章 いかにしてイングランドに「立憲君主制」が確立されたのか?
第2章 イングランドはなぜ「絶対君主制」にならなかったのか?
第3章 「外人王」の登場で議院内閣制の定着と「財政=軍事国家」の形成へ
第4章 イギリスにはなぜ国王が必要なのか?
イギリスには、どうして未だに国王がいるのか? 世界の今を解くカギは、すべて歴史の中にある――。誰もが一度は耳にしたことがある「歴史的事件」と、誰もが疑問を抱く一つの「問い」を軸に、各国史の第一人者が過去と現在をつないで未来を見通す新シリーズの第6弾! なぜイングランドは「立憲君主制」になったのか? なぜ「絶対君主制」にはならなかったのか? 〈国王は君臨すれども統治せず〉。「賢人会議」から議院内閣制の定着を経て現代へ。一千年以上の長きにわたる「王権」と「議会」の絶妙な関係を解き明かす。
【内容】
第1章 いかにしてイングランドに「立憲君主制」が確立されたのか?
第2章 イングランドはなぜ「絶対君主制」にならなかったのか?
第3章 「外人王」の登場で議院内閣制の定着と「財政=軍事国家」の形成へ
第4章 イギリスにはなぜ国王が必要なのか?
- 言語日本語
- 出版社NHK出版
- 発売日2024/5/10
- ファイルサイズ19482 KB
この本はファイルサイズが大きいため、ダウンロードに時間がかかる場合があります。Kindle端末では、この本を3G接続でダウンロードすることができませんので、Wi-Fiネットワークをご利用ください。
この本を読んだ購入者はこれも読んでいます
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
商品の説明
著者について
関東学院大学国際文化学部教授。1967年東京都生まれ。立教大学文学部史学科卒業、英国オックスフォード大学セント・アントニーズ・コレッジ留学、上智大学大学院文学研究科史学専攻博士後期課程修了。博士(史学)。専門はイギリス政治外交史、ヨーロッパ国際政治史。主な著書に『ヴィクトリア女王』『物語 イギリスの歴史』(上下)『エリザベス女王』『貴族とは何か』『君主制とはなんだろうか』など。
登録情報
- ASIN : B0D3QYHRQ3
- 出版社 : NHK出版 (2024/5/10)
- 発売日 : 2024/5/10
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 19482 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効にされていません
- Word Wise : 有効にされていません
- 付箋メモ : Kindle Scribeで
- 本の長さ : 170ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 72,532位Kindleストア (Kindleストアの売れ筋ランキングを見る)
- - 415位世界史 (Kindleストア)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
カスタマーレビュー
星5つ中5つ
5つのうち5つ
全体的な星の数と星別のパーセンテージの内訳を計算するにあたり、単純平均は使用されていません。当システムでは、レビューがどの程度新しいか、レビュー担当者がAmazonで購入したかどうかなど、特定の要素をより重視しています。 詳細はこちら
3グローバルレーティング
虚偽のレビューは一切容認しません
私たちの目標は、すべてのレビューを信頼性の高い、有益なものにすることです。だからこそ、私たちはテクノロジーと人間の調査員の両方を活用して、お客様が偽のレビューを見る前にブロックしています。 詳細はこちら
コミュニティガイドラインに違反するAmazonアカウントはブロックされます。また、レビューを購入した出品者をブロックし、そのようなレビューを投稿した当事者に対して法的措置を取ります。 報告方法について学ぶ
イメージ付きのレビュー
5 星
読みやすく、わかりやすい
教科書サイズの大きさで、読みやすい。写真、図版も大きく、見やすい。貴族、政治家の人たちが、国王を追い出した話としても面白い名誉革命から、章立てがスタートし、読むものを惹きつける。そのあとの章で、なぜイギリスに議会政治が、そして王制が続いたのかが、時代をさかのぼり、書かれてある。読みやすく、理解しやすい。おススメです。
フィードバックをお寄せいただきありがとうございます
申し訳ありませんが、エラーが発生しました
申し訳ありませんが、レビューを読み込めませんでした
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2024年5月18日に日本でレビュー済み
教科書サイズの大きさで、読みやすい。
写真、図版も大きく、見やすい。
貴族、政治家の人たちが、国王を追い出した話としても面白い名誉革命から、章立てがスタートし、読むものを惹きつける。
そのあとの章で、なぜイギリスに議会政治が、そして王制が続いたのかが、時代をさかのぼり、書かれてある。
読みやすく、理解しやすい。おススメです。
写真、図版も大きく、見やすい。
貴族、政治家の人たちが、国王を追い出した話としても面白い名誉革命から、章立てがスタートし、読むものを惹きつける。
そのあとの章で、なぜイギリスに議会政治が、そして王制が続いたのかが、時代をさかのぼり、書かれてある。
読みやすく、理解しやすい。おススメです。
教科書サイズの大きさで、読みやすい。
写真、図版も大きく、見やすい。
貴族、政治家の人たちが、国王を追い出した話としても面白い名誉革命から、章立てがスタートし、読むものを惹きつける。
そのあとの章で、なぜイギリスに議会政治が、そして王制が続いたのかが、時代をさかのぼり、書かれてある。
読みやすく、理解しやすい。おススメです。
写真、図版も大きく、見やすい。
貴族、政治家の人たちが、国王を追い出した話としても面白い名誉革命から、章立てがスタートし、読むものを惹きつける。
そのあとの章で、なぜイギリスに議会政治が、そして王制が続いたのかが、時代をさかのぼり、書かれてある。
読みやすく、理解しやすい。おススメです。
このレビューの画像