現在ワールドカップバレーが開催されている。
ブラジルは2008年北京オリンピックでは女子が金、男子が銀を獲得している。
男女ともに世界ランキングでも常にトップ5に入る。
サッカーだけでなく、バレー王国でもあるのだ。
今回のワールドカップでは女子が5位に終わり、現在男子も3位という成績で本領を発揮できていないのかもしれないが、きっと来年のオリンピックにはきっちり仕上げてくるだろう。
さて、そのバレー王国だが、実は現在の地位を築く土台は、全て日本から学んだというのだ。
現在の女子代表監督のギマラエス氏は22歳の頃、1976年にに約40日間日本に滞在し、日本代表、NKK、中央大学で研修したそうだ。
一方男子の代表監督、レゼンデ氏も若い頃に日本の伝説的セッター、猫田氏の「画期的な」プレーに影響を受けたと言う。
現在のブラジルバレーの基礎は全て日本から学んだとも。
では一体なぜ立場は逆転してしまったのだろう?
フィジカルの部分をあきらめている、問題と向き合っていない。
精神的に弱くなっている。
などの意見もありつつも、昔は画期的だった日本バレーがその栄光にあぐらをかいて、
「新しいものを取り入れるという工夫をしてこなかったようです」
「いつまでたっても昔のまま」
「練習方法が70年代の域を出ていないんです。」
「人が機械的」
「融通が利かない」
とこのような感想を述べられてしまう。。。
この本を読んでいけばブラジル代表の練習及び育成指針、そして環境が見えてくる。
残念ながら日本が70年代のままと言われてしまうのも頷ける。
ブラジル代表では、成功する選手の条件として以下が挙げられるそうだ。(順不同)
戦術能力
身体構造
身体能力
技術力
精神力(思考力・感情・自信)
技術力
人間形成を重視した彼らの育成のステップは大まかに3段階に分けられている。
そしてそこから選ばれた選手が最終段階のプロ、代表クラスへと進んでいく。
第1段階(9歳から15歳)
バレーボールを好きになる
基礎技術の習得
第2段階(15歳から16歳)
ポジションを決め始める
体力強化開始
戦術理解
第3段階(16歳から20歳)
速く複雑なプレーを身につける
高レベルの技術及び戦術の修得
第4段階(20歳〜)
最終段階
全てをハイレベルで行う
ブラジルでは選手の可能性を若いうちに限定しない。
つまり日本のようにすぐにポジションを決めてしまったり、早い時期から勝利ばかりを目指して競技の楽しさを忘れさせることはしない。
むしろ若いうちは、技術を擁する6対6などはせずに、小さいコートに低いネットで2対2、3対3などをこなすことで、ボールに触れる機会を増やして競技を好きになってもらう工夫をしている。
これは底辺拡大にはもってこいの工夫だろう。
バレーというスポーツが好きな人が増えることにより、全体の人気が増えるため、支える人が多くなるという好循環が生まれる。
もう一つブラジルが可能性を限定していない部分は、フィジカルの部分である。
ブラジル代表は世界と比較して決して身長は高くない。
彼らはそれをふまえた上でトレーニングを行っている。
スピードばかりに気を取られている日本と違い、しっかりパワーを付けるトレーニングやケガを防ぐトレーニング、トータルのフィジカル向上を計画的に行っている。
彼らから言わせれば、日本人でも重量挙げでメダルを取った人はいるじゃないか、ということになる。
やはり世界一に裏には工夫があるのだ。
しかし、ブラジルバレーの工夫はそれだけではない。
プロリーグでは、メインスポンサーになると、国から1億8000万円相当の税金免除がされるそうだ。
つまり、国や地域への社会貢献と認められるそうだ。
もちろんそのために、様々な慈善活動及び、地域と密着したイベント等が試合では行われるそうだ。
代表の合宿施設も専用のビーチリゾートのような充実したものであるようだ。
これはブラジルバレーボール協会とリオデジャネイロ州サクアレマ市と協同で約3億円かけてホテルを改修したものだそうだ。
周囲は民家と海と湖だけの合宿地で、選手は家族も呼び寄せることができ、リラックスして集中してトレーニングを行える。
ちなみに、ラグビーのオーストラリア代表ワラビーズも、リゾート地とスポンサー契約を結び、そこを常駐の合宿地として利用する。
選手はコテージのような宿泊施設で家族やガールフレンドを呼ぶことが可能で、トレーニング施設もグラウンドも徒歩で通えるようになっている。
さて、ここまでみせられてしまうとどうだろう。
日本のバレー界の現状はどうなのだろう?
近い将来立場がブラジルと逆転しているように思考を変えないと、改革をするくらいの気概を持たないと、一流の仲間入りは厳しいのかもしれない。
そして底辺の拡大と環境改善にも目を向けないとならないだろう。
日本ではバレーは不思議な立ち位置で、世界選手権やワールドカップの世界大会が多く開催され、ジャニーズタレントとテレビ局に煽られた上に人気が成り立っている部分がある。
それなしで世界の頂点に立った国があるという認識と危機感が必要なのかもしれない。

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ブラジルバレーを最強にした「人」と「システム」 単行本 – 2009/11/1
米虫 紀子
(著)
- 本の長さ201ページ
- 言語日本語
- 出版社東邦出版
- 発売日2009/11/1
- ISBN-104809408345
- ISBN-13978-4809408342
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登録情報
- 出版社 : 東邦出版 (2009/11/1)
- 発売日 : 2009/11/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 201ページ
- ISBN-10 : 4809408345
- ISBN-13 : 978-4809408342
- Amazon 売れ筋ランキング: - 458,340位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2011年11月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2023年9月27日に日本でレビュー済み
かつてブラジルは、70年代の日本バレーを追いかけていた、という。
ミュンヘンオリンピックの頃だろうか。
それが、いつのまにか逆転してしまった。
今や日本は、ブラジルの遥か後塵を拝している。
身長、パワー、跳躍力…
日本にないとされるもの。
しかし本書で、ブラジルで選手育成を担当してきたマルキーニョ氏は言う。
「パワーは、ブラジル人だけでなく、誰にでもつけられます」と。
そして、日本人の重量挙げ選手の三宅義信氏を例に挙げるのである。
つまり氏ははっきりと言ってるのだ。
「パワーが欲しければ筋トレしろ」と。
ところがバレーに限らず日本という国のスポーツ界には、長らく「筋肉不信」があった。
要は、「過剰に筋肉を増やすと体が重くなって、結果的に動きが損なわれる」みたいな言説である。
「柔よく剛を制す」とか、「水より柔弱なるはなし」とか、そういう思想の文化が根強いのだろう。
(日本における「達人」のイメージは、具体例を挙げるならマスターヨーダである。ハリウッド映画のキャラだが東洋的理想の体現者であり、彼は筋骨隆々どころかむしろ極端に小さくてヨボヨボだ)
日本でフィジカルトレーニングが各種のスポーツ界に浸透し始めたのは、ここしばらくの話ではないだろうか。
大きな後れを背負った日本が、ブラジルに追いつく日は来るのだろうか。
近年、男子バレーは有望な若手が集まりつつあって、非常に楽しみではある。
ミュンヘンオリンピックの頃だろうか。
それが、いつのまにか逆転してしまった。
今や日本は、ブラジルの遥か後塵を拝している。
身長、パワー、跳躍力…
日本にないとされるもの。
しかし本書で、ブラジルで選手育成を担当してきたマルキーニョ氏は言う。
「パワーは、ブラジル人だけでなく、誰にでもつけられます」と。
そして、日本人の重量挙げ選手の三宅義信氏を例に挙げるのである。
つまり氏ははっきりと言ってるのだ。
「パワーが欲しければ筋トレしろ」と。
ところがバレーに限らず日本という国のスポーツ界には、長らく「筋肉不信」があった。
要は、「過剰に筋肉を増やすと体が重くなって、結果的に動きが損なわれる」みたいな言説である。
「柔よく剛を制す」とか、「水より柔弱なるはなし」とか、そういう思想の文化が根強いのだろう。
(日本における「達人」のイメージは、具体例を挙げるならマスターヨーダである。ハリウッド映画のキャラだが東洋的理想の体現者であり、彼は筋骨隆々どころかむしろ極端に小さくてヨボヨボだ)
日本でフィジカルトレーニングが各種のスポーツ界に浸透し始めたのは、ここしばらくの話ではないだろうか。
大きな後れを背負った日本が、ブラジルに追いつく日は来るのだろうか。
近年、男子バレーは有望な若手が集まりつつあって、非常に楽しみではある。
2020年6月22日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
子供がバレーを始めたので、育成の参考に読んで見ました。読んで一番に衝撃を受けたのが、育成段階の手厚さです。土台作り=競技力の向上。目先の試合の勝敗ではない骨太の育成はかくあるものかと納得の1冊でした。是非競技を問わず育成に関わる指導者に一読頂きたいと思います。
2010年4月24日に日本でレビュー済み
頂点を極めて尚さらに上を目指すブラジル。
彼らの考え方は頂点を極めて約30年思考停止した日本に一石を投じるものである。
また、バレーに限らずスポーツは指導者⇒選手(先生⇒生徒)のトップダウンではなく
自らが考え、自ら答えを出すことで伸びるものであると改めて思い知らされた。
スポーツのに携わる関係者やスポーツファンに是非呼んでもらいたい。
彼らの考え方は頂点を極めて約30年思考停止した日本に一石を投じるものである。
また、バレーに限らずスポーツは指導者⇒選手(先生⇒生徒)のトップダウンではなく
自らが考え、自ら答えを出すことで伸びるものであると改めて思い知らされた。
スポーツのに携わる関係者やスポーツファンに是非呼んでもらいたい。
2020年1月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ブラジルの育成システムには学ぶことが多いと思いました。とても良い内容だと思います。
2012年10月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
大学男子バレー部の副キャプテンをやっており、海外バレー(ブラジル、ポーランドなど)に関心があるので購入しました。
ブラジル男子のレゼンデ監督や女子のギマラエス監督のバレー哲学が多く書かれており、感銘を受けました。
特に各ポジションごとの適性やレゼンデ監督の期待する点は非常に参考になりました。
日本代表やアマチュアへの視線も書かれています。
バレーボーラー、指導者であれば必携の参考書です。
ブラジル男子のレゼンデ監督や女子のギマラエス監督のバレー哲学が多く書かれており、感銘を受けました。
特に各ポジションごとの適性やレゼンデ監督の期待する点は非常に参考になりました。
日本代表やアマチュアへの視線も書かれています。
バレーボーラー、指導者であれば必携の参考書です。
2011年1月4日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
年代別の育成システムと、幼少期のスタート時点の指導の仕方に感心しました。
2010年1月7日に日本でレビュー済み
私はいわゆる『観るだけ』のバレーボールファンです。
けれどもこの本は、素人の私でもとても読みやすく、かつ面白く読めました。
『ブラジルバレーは何故強いのか?』ではなく、『ブラジルはどうやって強いバレーを作り上げていったのか?』という視点から取材がなされていて、どの項目も興味深かった。
特にインタビュー記事は大会などではとても聞けないような日本に対する率直な発言もあって、思わずうなずきたくなるものばかり。
ブラジルのバレー環境について理解していくにつれて、日本バレーの現状の問題点まで見えてくる、そんな本でした。
テレビで見るだけでは漠然としかわからなかった日本バレーへの疑問やもどかしさに、少なからず形を与えてもらった気分です。巡り会えて本当によかった。
…、私のような観るだけの素人なんかとは比べ物にならないほど、日本でバレーボールに深く関わっているような方々がこの本を読んだら、一体どんな感想を抱かれるのでしょう?
ブラジルが70年代の日本バレーをスタート地点にしていることを単純に喜ぶのでしょうか?
それとも、70年代のバレーをゴール地点にしてしまったが故の日本の現状に危機感を抱いてくれるのでしょうか?
興味深いです。
けれどもこの本は、素人の私でもとても読みやすく、かつ面白く読めました。
『ブラジルバレーは何故強いのか?』ではなく、『ブラジルはどうやって強いバレーを作り上げていったのか?』という視点から取材がなされていて、どの項目も興味深かった。
特にインタビュー記事は大会などではとても聞けないような日本に対する率直な発言もあって、思わずうなずきたくなるものばかり。
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テレビで見るだけでは漠然としかわからなかった日本バレーへの疑問やもどかしさに、少なからず形を与えてもらった気分です。巡り会えて本当によかった。
…、私のような観るだけの素人なんかとは比べ物にならないほど、日本でバレーボールに深く関わっているような方々がこの本を読んだら、一体どんな感想を抱かれるのでしょう?
ブラジルが70年代の日本バレーをスタート地点にしていることを単純に喜ぶのでしょうか?
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興味深いです。