「酒エッセイの名手」というか、私にとっては「日本で一番面白い雑誌”酒とつまみ”の編集長」である大竹聡さん「待望の処女小説」ということで、迷わず購入した。
特に、昨年出された「酒呑まれ」はしっかり私の心の琴線をつま弾いてくれたので、期待は尚更。
読み始めると、いきなり飲み屋での会話。会話、と言っても、話し手が一方的に他の知らない客に酔っぱらい口調で話しかけている。これがずっと続くのか・・・という思いもしたが、マクラでありほっとした。
小説の本体ではジローという、大竹さんのこと自身であろう編集者を主人公として進んでゆく。
これまでの大竹さんの作品を数冊読んでいたので、これが自伝的な作品であるとはすぐに分かった（本の帯を見てもだいたい推測はつくんですけどね）。
自伝的なことは「酒呑まれ」にもたっぷり書かれていたが、ここでは父とのストーリーに焦点が当てられている。
ただ、一人称で語っていた「酒呑まれ」と比べ、小説であるからなのかもしれないが、ストーリー部分が多くその分心情描写が少ないので、淡々とした印象を受け、物足りなさも感じた。
しかし、読み進めてみると、ここに描かれている父とのストーリーは、大竹さんが最初の小説にどうしても書いておきたかったこと、書かずにはその先に進めないと思っていることでは・・・間違っているかもしれないが、そんな気がしてきた。
ならば、若干の読みにくさを感じる（失礼！）マクラの部分の意味合いも分かってきたような。
きっと大竹さん、この処女作を書き上げて、他の作家と違った意味で吹っ切れたような気持ちになっているんではないか。そして、今までエッセイに描かれていたような酒にまつわる馬鹿馬鹿しい話しをモチーフにして、既存のファンが待ち望んでいるように小説も書いてくれるんじゃないか、と期待させてくれる。
その意味で３．７星、四捨五入して４星です。
この本を読み上げた後、飲み屋に入って飲んだレモンサワーも美味しかったし。
「酒とつまみ 第１５号」も待ってます（笑）。
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