気になってはいたが、読めてなかった本で、最近読みました。
非常に面白いが、他社の反応を調べたところ、評価が二分していることに興味をそそられたので、レビューします。
芥川賞選評会のなかでも意見が分かれたことが有名らしく、それだけ評価が難しい本なのだろうと思います。
村上龍さんがDNAの記述に誤りがあると言っておられたらしいですが、これは誤解ではなかろうかと推察します。
DNAだけでできたウィルスは考えられない、みたいな文章が小説内でみられるが、これは、文字通りDNAのみで構成されたウィルスは存在しないと言っているのであって、細胞に侵入するためのタンパク質等でできたインターフェイスの存在を欠いたウィルスは存在しないだろうということを言っていると思われます。村上氏は、これを曲解したのではないかと愚考します。
ただ、いずれにせよ、そのような些末な事象を取り上げて、全体の評価を決定づけるというのは短絡的なようにも思えます。
※この芥川賞周辺の議論を読んでみましたが、芥川賞選評委員会の構成員にもっと多様性を持たせた方が良いかもしれないですね。所謂、老害みたいに言われている石原氏みたいな人もいる一方で、がちがちの理系作家や、フェミニスト女性作家、10代の若い作家、ホームレス読書家など、カオス空間にしちゃえばいいのにと勝手に思っています。
また、難解だと言われているようですが、恐らく以下のポイントが要因のように思います。
・複雑系や情報科学(プログラミング言語だけでなく、より広義の意味で、例えばDNAや自然言語、身体言語を含む)、脳科学あたりの知識を知らないと分かりにくいかもしれない。
・物事をフラットにみる視点が不足していると読みにくいかもしれない。つまり、相対化できる能力。これはどの純文学にも共通して問われる能力のように思います。
・sf小説やsfアニメなど、sf作品を触れていないと読みづらいかもしれない。ネタバレになるので詳しく言えないが、攻殻機動隊sacシリーズが問題としているテーマと、少し関連があるように思える。また、円城さんとも縁が深い伊藤計劃さんの本なども読んでおくと、入り込みやすいように思える。
ただし、以上のポイントが不明瞭でも、問題としているテーマは音楽や詩歌のように響いてくると思われます。あるいはその不明瞭さそのものが味わいであり、テーマであると言って差し支えないように思われます。だから、そのまま、ありのままに読めばよいのではないかと愚考します。また、関係やネットワークというキーワードを念頭に置きながら読むとより楽しみやすいと思います。
僕は、タイトルのように、叔父が姪との関係性の中で「輪郭」を獲得しつつある物語であると認識していますが、他にもいろいろな見方ができそうなところがこの小説の魅力の一つではなかろうかと思います。
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これはペンです(新潮文庫) Kindle版
叔父は文字だ。文字通り。文章自動生成プログラムの開発で莫大な富を得たらしい叔父から、大学生の姪に次々届く不思議な手紙。それは肉筆だけでなく、文字を刻んだ磁石やタイプボール、DNA配列として現れた――。言葉とメッセージの根源に迫る表題作と、脳内の巨大仮想都市に人生を封じこめた父の肖像「良い夜を持っている」。科学と奇想、思想と情感が織りなす魅惑の物語。
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日2014/3/1
- ファイルサイズ1286 KB
- 販売: Amazon Services International LLC
- Kindle 電子書籍リーダーFire タブレットKindle 無料読書アプリ
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登録情報
- ASIN : B07MV517Z1
- 出版社 : 新潮社 (2014/3/1)
- 発売日 : 2014/3/1
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 1286 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効にされていません
- Word Wise : 有効にされていません
- 付箋メモ : Kindle Scribeで
- 本の長さ : 153ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 188,592位Kindleストア (Kindleストアの売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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上位レビュー、対象国: 日本
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2015年2月17日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「これはペンです」は、芥川賞候補になりつつも、最終的には村上龍が「科学的な要素に重点を置いているのに、科学的記述に誤りがある」「私はこの分野を勉強したから、誤りが分かるんですけどね」などと言ったのが決め手となって落選した作品である。
さて、それは何が問題だったのかを、推測してみよう。
それはおそらく、タイプライターに関する記述である。
タイプライターでシーザー暗号(シーザー暗号とは、アルファベットの並びを一定数ずらすことで、平文を暗号文に変換する方式だ)の記述があり、そこで変換の例として、AとかCとかTとか出てくるのである。
そして、その直前に、DNAを構成する塩基であるATCGの名前が出てくる。
おそらく村上龍は、シーザー暗号の例で出てきたAとかTとかいう文字と、DNAのATGCを混同したのではないだろうか。
そして、シーザー暗号の例がAとTとCとGでないので「科学的に誤っている」という結論を導き出したのだろう。
まあ、本当のところは、知らないけどね。
個人的に問題だと思うのが、シーザー暗号とかATCGとか、ちょっと気の利いた高校生なら知っているようなことを、「自分はこの分野について執筆するために勉強したから知っているんだけどね」とか言っちゃう、ブンガクのオジサンの痛々しさと、この誤認識をその場の審査員の誰も指摘できなかったという、ブンガクのセンセイたちの理系度の低さである。
ちなみに、この次の回で円城塔は「道化師の蝶」で芥川賞を受賞しているのだが、村上龍は選考会をドタキャンしたそうである。
-------
後半の「よい夜を持っている」だが、これはよいラブラブ小説。
愛妻家で知られる円城氏の、奥さんラブラブっぷりが溢れている。
読んでいて恥ずかしくなる。
素敵。
さて、それは何が問題だったのかを、推測してみよう。
それはおそらく、タイプライターに関する記述である。
タイプライターでシーザー暗号(シーザー暗号とは、アルファベットの並びを一定数ずらすことで、平文を暗号文に変換する方式だ)の記述があり、そこで変換の例として、AとかCとかTとか出てくるのである。
そして、その直前に、DNAを構成する塩基であるATCGの名前が出てくる。
おそらく村上龍は、シーザー暗号の例で出てきたAとかTとかいう文字と、DNAのATGCを混同したのではないだろうか。
そして、シーザー暗号の例がAとTとCとGでないので「科学的に誤っている」という結論を導き出したのだろう。
まあ、本当のところは、知らないけどね。
個人的に問題だと思うのが、シーザー暗号とかATCGとか、ちょっと気の利いた高校生なら知っているようなことを、「自分はこの分野について執筆するために勉強したから知っているんだけどね」とか言っちゃう、ブンガクのオジサンの痛々しさと、この誤認識をその場の審査員の誰も指摘できなかったという、ブンガクのセンセイたちの理系度の低さである。
ちなみに、この次の回で円城塔は「道化師の蝶」で芥川賞を受賞しているのだが、村上龍は選考会をドタキャンしたそうである。
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後半の「よい夜を持っている」だが、これはよいラブラブ小説。
愛妻家で知られる円城氏の、奥さんラブラブっぷりが溢れている。
読んでいて恥ずかしくなる。
素敵。
2014年7月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「これはペンです」は、とても読みやすくきれいな文章なのだが油断すると
字面を追うだけになりなかなか頭に入ってこない妙な感触があった。
なぜか、と考えたがそもそもあまり深い意味の無い文章が多いこと、
はっきりしたストーリーが無い(あるにはあるが起承転結という形式ではない)こと、
このあたりに由来しているようだ。なかなか新しい読書体験だったが、定食屋で
カツ定食や生姜焼き定食をうめえうめえと言って食っている自分が懐石料理を
食った時のような感覚があった。
少し視点を変え、これは小説の体裁を取った詩なのだと思えば良作だと思う。
ストーリーを楽しむのではなく文章そのものを味わえばいいのだろう。
「良い夜を」は若干叙情的な部分もありそれなりに定食的視点で楽しめた。
字面を追うだけになりなかなか頭に入ってこない妙な感触があった。
なぜか、と考えたがそもそもあまり深い意味の無い文章が多いこと、
はっきりしたストーリーが無い(あるにはあるが起承転結という形式ではない)こと、
このあたりに由来しているようだ。なかなか新しい読書体験だったが、定食屋で
カツ定食や生姜焼き定食をうめえうめえと言って食っている自分が懐石料理を
食った時のような感覚があった。
少し視点を変え、これは小説の体裁を取った詩なのだと思えば良作だと思う。
ストーリーを楽しむのではなく文章そのものを味わえばいいのだろう。
「良い夜を」は若干叙情的な部分もありそれなりに定食的視点で楽しめた。
2012年6月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
作者の作品としては、「Boy's Surface」、「Self-Reference ENGINE」、「道化師の蝶」、「オブ・ザ・ベースボール」に続いて本作を手に採った。我ながら物好きとも言えるが、理数系人間のための小説を書き続ける作者には好感を抱いている。本作には表題作と「良い夜を持っている」の2つの中編が収録されている。作者の作品の一番の特徴は「読んでも理解出来ない」点にあると思う。その上で、「作品を産み出すチューリング・マシンは作者ではなく、読者の想像力の方」という独創的哲学の下で執筆している姿勢が伝わって来る。表題作はその独自の小説作法の一部を解体して見せた(チューリング・マシンが登場人物側にやや移った)感がある。
表題作は、「論文を自動生成するプログラム」及び「ある論文が自動生成された物か否かを判定するプログラム」を開発した幻の「叔父」の姿を追い続ける「姪」の手記という体裁で綴られる。ソフトウェアの世界では昔から"機械翻訳"という分野があり、R.ダールの短編には「小説の自動生成機械」を扱った話が出て来るが、その辺は充分承知の上で、小説におけるオリジナリティ、小説を構成する断片間の"関係"性を追求した快作だと思った。相変わらず、輪廻(に代表される位相幾何)の構造が埋め込まれている(「「叔父」=「姪」」あるいは「「叔父」=「読者」」であっても構わない)。この手記自身が「小説の自動生成プログラム」によって作られていると仄めかしている辺り可笑しい。更に、「姪」の母が「誰にもわからないことを言い続けて何の得があるものかね」と呟く箇所では爆笑した。従来の、位相幾何学、物理学、計算(機)理論に加え脳科学(意識)にまで作者の守備範囲が拡がっている。「良い夜を持っている」は、絶対記憶力を持っていた亡き父(サヴァン症候群 ?)の思い出を"夢"を中心に綴った情緒的作品とも取れるが、表題作のモチーフの繰り返しとも取れる。即ち、AIの限界を小説風に論述した物という意味である。しかし、APLやアイバーソンの名前が出て来るとは驚いた(この文脈では普通はPrologだろう、APL専用キーボードのためか)。私事で恐縮だが、APLは私が最初に習得したプログラミング言語なのである。
数理をもって小説を構成する稀有な作家との認識を益々強く抱いた。今後も期待したい。
表題作は、「論文を自動生成するプログラム」及び「ある論文が自動生成された物か否かを判定するプログラム」を開発した幻の「叔父」の姿を追い続ける「姪」の手記という体裁で綴られる。ソフトウェアの世界では昔から"機械翻訳"という分野があり、R.ダールの短編には「小説の自動生成機械」を扱った話が出て来るが、その辺は充分承知の上で、小説におけるオリジナリティ、小説を構成する断片間の"関係"性を追求した快作だと思った。相変わらず、輪廻(に代表される位相幾何)の構造が埋め込まれている(「「叔父」=「姪」」あるいは「「叔父」=「読者」」であっても構わない)。この手記自身が「小説の自動生成プログラム」によって作られていると仄めかしている辺り可笑しい。更に、「姪」の母が「誰にもわからないことを言い続けて何の得があるものかね」と呟く箇所では爆笑した。従来の、位相幾何学、物理学、計算(機)理論に加え脳科学(意識)にまで作者の守備範囲が拡がっている。「良い夜を持っている」は、絶対記憶力を持っていた亡き父(サヴァン症候群 ?)の思い出を"夢"を中心に綴った情緒的作品とも取れるが、表題作のモチーフの繰り返しとも取れる。即ち、AIの限界を小説風に論述した物という意味である。しかし、APLやアイバーソンの名前が出て来るとは驚いた(この文脈では普通はPrologだろう、APL専用キーボードのためか)。私事で恐縮だが、APLは私が最初に習得したプログラミング言語なのである。
数理をもって小説を構成する稀有な作家との認識を益々強く抱いた。今後も期待したい。
2018年8月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
作者にしては読み易いと思うが、でもやっぱりわからないところは安定の円城塔。表題作の文章自動作成装置と言うのは極めて今日的で、大学生がこぞってwebからのコピペで論文をでっちあげてしまう近年ほとんど社会問題化している問題を先取りしているかのように読めた。しかしそこを避けていたら、文学に未来はない、と受け取ったけれど、やっぱり根本的なところで理解不能ではあった。「良い夜を待っている」の方もわからない点では同じだが、私にはより理解し易い話で、人間離れした記憶力を持つ「父」が、それ由に現実に適応出来ない悲哀は、普通の文学のように胸をうつものがあった。これもアスペルガー症候群の人が特定の分野では天才的能力を発揮するが、と言う現実の問題とリンクして、実に興味深く読むことが出来た。こちらの方が傑作のように、私には思える。
2017年8月21日に日本でレビュー済み
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内容のレビューではないんですが、
kindle版だと『良い夜を持っている』の最終部に出てくる重要な文章が、
kindleのフォーマットでは再現できておらず、数行の文章を一枚の画像にして無理やり表示させています。
PCでもスマホでもkindleでもその部分になると急に画面いっぱいに拡大された画像が出てきて、
めちゃくちゃ興を削がれます。
そもそも文庫本が出てるのに、kindle版が単行本準拠で値段が高いままなのが意味不明。
私はこの小説が大好きで新潮文庫の紙のカバーでは読んでいるとすぐにボロボロになるため、
すでに何冊も買いなおしていたのだが、意を決してkindle版を買ってみたらこの有様だった。
出版社はもうちょっとまともな対応をしてほしい。
もしこの小説が気になっている方はkindle版ではなく紙の本を読んでいただきたいです。
kindle版だと『良い夜を持っている』の最終部に出てくる重要な文章が、
kindleのフォーマットでは再現できておらず、数行の文章を一枚の画像にして無理やり表示させています。
PCでもスマホでもkindleでもその部分になると急に画面いっぱいに拡大された画像が出てきて、
めちゃくちゃ興を削がれます。
そもそも文庫本が出てるのに、kindle版が単行本準拠で値段が高いままなのが意味不明。
私はこの小説が大好きで新潮文庫の紙のカバーでは読んでいるとすぐにボロボロになるため、
すでに何冊も買いなおしていたのだが、意を決してkindle版を買ってみたらこの有様だった。
出版社はもうちょっとまともな対応をしてほしい。
もしこの小説が気になっている方はkindle版ではなく紙の本を読んでいただきたいです。
2013年7月23日に日本でレビュー済み
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自分にとっては初円城塔作品です。
「これはペンです」、「良い夜を持っている」の2作品が収録されていますが、どちらも非常にミニマム。
起点を用意し、そこから論理展開を繰り返すことで新たな発見が生まれ、物語は進んでいきます。
度肝を抜くような壮大な設定や大きな感動を呼ぶダイナミックさといった外への広がりは皆無ですが、まるで思考実験を行なっているかのように内への広がりを無限に感じられる作品です。
言語、記憶といった人間の根幹に関わる部分を、フィクションではあるけれどもロジカルに描く筆力は圧倒的です。
「これはペンです」、「良い夜を持っている」の2作品が収録されていますが、どちらも非常にミニマム。
起点を用意し、そこから論理展開を繰り返すことで新たな発見が生まれ、物語は進んでいきます。
度肝を抜くような壮大な設定や大きな感動を呼ぶダイナミックさといった外への広がりは皆無ですが、まるで思考実験を行なっているかのように内への広がりを無限に感じられる作品です。
言語、記憶といった人間の根幹に関わる部分を、フィクションではあるけれどもロジカルに描く筆力は圧倒的です。
2013年7月13日に日本でレビュー済み
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有名なので買ってみました。
なんだか分かりません。
途中で読むのを諦めました。
時間を置いて再度チャレンジしたいと思います。
なんだか分かりません。
途中で読むのを諦めました。
時間を置いて再度チャレンジしたいと思います。