■本書の構成:「はじめに」のあと、3部8章から成る本文、付録、村瀬俊朗氏の解説。
■ 第1部「心理的安全性のパワー」:この概念の発見とその後の研究の軌跡。
● 概念の発見:
著者は博士課程一年のとき、複数病院にわたる医療ミスに関する大人数の調査団に参加。著者に医学的知識は無いが、チームワークが医療の誤り率にもたらす影響を調べることを担当した。調査団の医療専門家によるインタビューやチーム毎の医療ミスの率などの調査判定結果の提供を受けた。これを調べると、有能と評価された医療チームほど医療ミスが多いという、予想外の結果になっていて当惑した。
そこで著者は予備知識を持たない助手を雇って別途調査する。その結果、メンバーが医療ミスに関し自由に話すかどうかが、チームによって大きく異なることが分る。自由に話せるチームについて、調査判定結果と照合すると、ミスの報告数が多くかつ有能という評価になっているチームだった。
熟考の結果、メンバーがミスを自由に発言でき問題を共有するチームであることがチームの能力につながるのだ、との考えがひらめく。このようなチームの特性を「心理的安全性(Psychological Safety)」という言葉で表現することとした。
この段階では仮説だが、その後、他国を含めて数々の調査研究を行なわれ、考察が深まり、「心理的安全性」の重要性が裏付けられる。
● 心理的安全性の測定:チームに心理的安全性がどの程度あるのかを判断する方法。
著者は、チームの心理的安全性の測定法として幾つかの質問項目に対する意識調査を示している。
これらの質問に対し、非常にそう思う7から、絶対そう思わない1というのまで、7段階で答える。すべての項目の答えを集計して心理的安全性の測定結果とする。
質問項目の一例を挙げると:
項目2、このチームでは、メンバーが困難や難題を提起することができる。
一方、逆傾向の質問もある:
項目1、このチームでミスをしたらとがめられる。
逆方向の質問の答えは7点を1点に、1点を7点になどと逆転させて集計する。
■ 第2部「職場の心理的安全性」:数々の実例。【】内は筆者の独り言。
● 心理的安全性の低い組織の例
⚫︎ フォルクスワーゲン(2015年):排気ガス不正測定ソフト。強権的リーダーの実現不可能な命令に対し、罵倒覚悟で悪い知らせを報告するのは困難。一方、リーダーは、無報告は順調だと思う。
【日本の自動車会社の不正:厳しい開発目標・内部指摘無視には心理的安全性の一面を感ずる。】
⚫︎ ウェルズ・ファーゴ銀行(2016年発覚):達成不可能なノルマを課せられた行員による顧客をだます商法【日本の類似事件、「再発防止・一同礼」の儀式の後の原因究明と防止策は?】。
⚫︎ テネリフェ空港ジャンボ機衝突事故(1977年):死者583人、滑走路でのジャンボ機衝突事故。事故調査では音声記録などの発言内容が重要だが、何故こういう発言がされなかったかを考えることも重要だと言う。他方の航空機に滑走路に出て良いという管制官の発言は出ていない。所が機長は「行くぞ」と滑走路に出ることを命じた。このとき副操縦士が「許可を待つべき」と言えなかった理由は? 機長は最高級パイロットで他のパイロットの技術の審査権を持っていたという。
もっと勇気を持って発言すべきだ、などと言うのは簡単だが、それが出来ない状況があるということは、他の諸例と共通する。心理的安全性を制度化・組織化する改革が必要なのだ、という。この事故の後、全パイロットがクルーマネジメント訓練を受けることを義務付ける制度化がなされた由。
【本書を読む途中、着陸許可を得た日航機が、羽田空港滑走路上で海上保安庁機に衝突炎上する事故が起きた。乗客乗員全員が脱出したのは不幸中の幸いだったが、離陸許可の出ていない海上保安庁機がなぜ滑走路上に出たのかの疑問が残る。交信記録に出て来ない乗員の無言の意味も重要だと感じた。機長以外の乗員は亡くなったが、チームに関して心理的安全性の面からの調査も必要。】
⚫︎ 東日本大地震津波・東電原発事故(2011年):東電福島第一原発事故について、石橋克彦教授らの地震・津波に関する再三の警告があったが、政府・原子力安全委員会や東電が無視した結果だと述べる。心理的安全性の高い文化であれば、真剣に検討された可能性があったと。
⚫︎ 米国のがん研究所での医療事故(1994年):本来の4倍量の投薬処方に対して看護師も薬剤師も声を上げず患者が死亡した。メンバーが沈黙し情報提供が必要と思われる時にも保身と羞恥回避を優先した結果と言える。疑問や懸念を表明したが実際は問題でなかったとしても、沈黙を守るより遥かに良いということを、メンバーもリーダーも認識して置くべきだという。
【神の手などと権威ある医師をTVで見るが、スタッフが神様に御意見するのは難しかろう。】
●心理的安全性の高い組織の例
⚫︎ ハドソン川の奇跡(2009年):着陸後すぐ鳥の群に突込んでエンジンが炎上した事故。機長はクルーマネジメント訓練の指導者、スタッフは訓練を受けたメンバー。残された時間が無いので、対話は最小に。管制官は他の管制塔との会話を同時に機長が聞けるように配慮した。ライフジャケットをつける暇は無く、機長は着水を知らせず衝撃の備えを指示して、川の上に完璧に着水させた。近くの船が次々と乗客を岸に運び、用意された救急隊に渡した。
【クリント・イーストウッドが映画化。最後に乗客乗員が集まる記念日行事の実映像が流れる。】
⚫︎ 東電福島第二原発(2011年3月)大地震津波の後の福島第二原発増田尚宏所長の指揮と400人の所員の不眠不休の活動。所長は得た情報の全て、第一原発の爆発の情報も含めて、ホワイトボードに記し、自分の方針(所員の報告により修正したことも)を書いて確認させた。4基の原子炉のうち3基が冷却機能を失ったことが判明。本社から送らせた重さ1トンのケーブルを、200人が交代で9kmに敷設して冷却機能を回復した。平時に20人が機械で一ヶ月かかる工事を、余震と被曝・周囲の散乱状態などの悪条件下、人手で24時間。その結果、15日朝、全原子炉の冷温停止に成功した。
最新情報と実施案を常に公開し、メンバーの意見に耳を傾け自案を修正するという所長のやり方により、身体的危険は有っても心理的安全性が得られた所員達が、プラントを守れる可能性とその責任を再確認し、団結して命懸けの難作業を成就出来たのだという。
【このことは日本であまり報じられていないように思う。本書で初めて知った。】
■ 第3部「恐れのない組織をつくる」
⚫︎ 心理的安全性の高い組織を作る:リーダーのツールキット(一連の知識とスキル)、心理的安全性の土台(フレーミングとリフレーミング)、参加を求め意見を引出す、リーダーの自己評価など。
その後、絶えず見直し再生が必要なこと。
⚫︎ 心理的安全性に関するFAQ:質問だけ略記。
皆が意見を言い会議効率が低下? 上司でない私に出来ること? 内部告発につながるものか? 独裁的経営者で業績が良いのだが? 言いたい放題な同僚にイラつくが? 本当の考えを言ったら皆に嫌われたが? 変る気のない上司の場合、どうすべき? 権力格差の大きい文化の中国・日本で達成は困難では?
⚫︎ 著者の最後のアドバイス:心理的安全性の構築は、大小様々な調整を繰返しつつ最終的に前進となるようなプロセス。ヨットが風上に向ってジグザグに進むのと同様、適宜方向を変えながら前に進むのだというつもりで、オヤリナサイ。
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恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす 単行本 – 2021/2/3
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日本の人事部主催 HRアワード2021書籍部門優秀賞受賞!
『チームが機能するとはどういうことか』の著者であり、2011年以来、経営思想家ランキング「Thinkers50」に選出され続けている、エイミー・C・エドモンドソン教授最新刊!
篠田真貴子氏(エール株式会社取締役)推薦!
「心理的安全性ってそういうことだったのか!
心理的安全性の解釈が人によって違うことが気になっていた。しかし、本家本元による本書を読んで、すっきりと整理ができた。心理的安全性とは個人の資質ではなく集団の規範、ぬるい環境というよりもむしろ成果志向の環境なのだ。失敗と成功の事例を通して、このコンセプトへの理解が深まり、実践への示唆が得られるだろう。「恐れ」から解き放たれれば、私たちはもっと大胆に行動できる。」
Googleの研究で注目を集める心理的安全性。
このコンセプトの生みの親であるハーバード大教授が、 ピクサー、フォルクスワーゲン、福島原発など様々な事例を分析し、 対人関係の不安がいかに組織を蝕むか、 そして、それを乗り越えた組織のあり方を描く。
目次
はじめに
第1部 心理的安全性のパワー
第1章 土台
第2章 研究の軌跡
第2部 職場の心理的安全性
第3章 回避できる失敗
第4章 危険な沈黙
第5章 フィアレスな職場
第6章 無事に
第3部 フィアレスな組織をつくる
第7章 実現させる
第8章 次に何が起きるのか
解説 村瀬俊朗
『チームが機能するとはどういうことか』の著者であり、2011年以来、経営思想家ランキング「Thinkers50」に選出され続けている、エイミー・C・エドモンドソン教授最新刊!
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心理的安全性の解釈が人によって違うことが気になっていた。しかし、本家本元による本書を読んで、すっきりと整理ができた。心理的安全性とは個人の資質ではなく集団の規範、ぬるい環境というよりもむしろ成果志向の環境なのだ。失敗と成功の事例を通して、このコンセプトへの理解が深まり、実践への示唆が得られるだろう。「恐れ」から解き放たれれば、私たちはもっと大胆に行動できる。」
Googleの研究で注目を集める心理的安全性。
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目次
はじめに
第1部 心理的安全性のパワー
第1章 土台
第2章 研究の軌跡
第2部 職場の心理的安全性
第3章 回避できる失敗
第4章 危険な沈黙
第5章 フィアレスな職場
第6章 無事に
第3部 フィアレスな組織をつくる
第7章 実現させる
第8章 次に何が起きるのか
解説 村瀬俊朗
- 本の長さ320ページ
- 言語日本語
- 出版社英治出版
- 発売日2021/2/3
- 寸法15.6 x 2.2 x 21.7 cm
- ISBN-104862762883
- ISBN-13978-4862762887
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出版社より
商品の説明
著者について
著者
エイミー・C・エドモンドソン Amy C. Edmondson
ハーバード・ビジネススクール教授。リーダーシップ、チーム、組織学習の研究と教育に従事し、2011年以来、経営思想家ランキング「Thinkers50」に選出され続けている。彼女の論文は、Harvard Business Review、California Management Review、Administrative Science Quarterly、Academy of Management Journalなどに掲載されている。『チームが機能するとはどういうことか――「学習力」と「実行力」を高める実践アプローチ』(英治出版)の著者でもある。
訳者
野津智子 Tomoko Nozu
翻訳家。獨協大学外国語学部フランス語学科卒業。主な訳書に、『チームが機能するとはどういうことか』『謙虚なリーダーシップ』『[新訳]最前線のリーダーシップ』『サーバントであれ』『シンクロニシティ【増補改訂版】』(いずれも英治出版)、『仕事は楽しいかね?』(きこ書房)、『やってはいけない7つの「悪い」習慣』(日本実業出版社)、『死ぬ気で自分を愛しなさい』(河出書房新社)などがある。
解説
村瀬俊朗 Toshio Murase
早稲田大学商学部准教授。1997年に高校を卒業後、渡米。2011年、University of Central Floridaで博士号取得(産業組織心理学)。Northwestern UniversityおよびGeorgia Institute of Technologyで博士研究員(ポスドク)をつとめた後、シカゴにあるRoosevelt Universityで教鞭を執る。2017年9月から現職。専門はリーダーシップとチームワーク研究。
エイミー・C・エドモンドソン Amy C. Edmondson
ハーバード・ビジネススクール教授。リーダーシップ、チーム、組織学習の研究と教育に従事し、2011年以来、経営思想家ランキング「Thinkers50」に選出され続けている。彼女の論文は、Harvard Business Review、California Management Review、Administrative Science Quarterly、Academy of Management Journalなどに掲載されている。『チームが機能するとはどういうことか――「学習力」と「実行力」を高める実践アプローチ』(英治出版)の著者でもある。
訳者
野津智子 Tomoko Nozu
翻訳家。獨協大学外国語学部フランス語学科卒業。主な訳書に、『チームが機能するとはどういうことか』『謙虚なリーダーシップ』『[新訳]最前線のリーダーシップ』『サーバントであれ』『シンクロニシティ【増補改訂版】』(いずれも英治出版)、『仕事は楽しいかね?』(きこ書房)、『やってはいけない7つの「悪い」習慣』(日本実業出版社)、『死ぬ気で自分を愛しなさい』(河出書房新社)などがある。
解説
村瀬俊朗 Toshio Murase
早稲田大学商学部准教授。1997年に高校を卒業後、渡米。2011年、University of Central Floridaで博士号取得(産業組織心理学)。Northwestern UniversityおよびGeorgia Institute of Technologyで博士研究員(ポスドク)をつとめた後、シカゴにあるRoosevelt Universityで教鞭を執る。2017年9月から現職。専門はリーダーシップとチームワーク研究。
登録情報
- 出版社 : 英治出版 (2021/2/3)
- 発売日 : 2021/2/3
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 320ページ
- ISBN-10 : 4862762883
- ISBN-13 : 978-4862762887
- 寸法 : 15.6 x 2.2 x 21.7 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 948位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2024年1月31日に日本でレビュー済み
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2024年1月5日に日本でレビュー済み
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そういう組織が伸びるのでしょうね。
でも、上になると、力を使いたくなるのも世の常か。
理想のケースが成立すると、羨ましい会社になるかも。
でも、上になると、力を使いたくなるのも世の常か。
理想のケースが成立すると、羨ましい会社になるかも。
2024年3月23日に日本でレビュー済み
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職場のハラスメントに関する調査報告書の作成に携わっていたのですが、この本は心理的安全性の基本となる考え方が丁寧に記述されており、ハラスメント解消に向けた指針として、とても参考になりました。
2023年10月22日に日本でレビュー済み
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管理職の勉強で勧められました。最初はなかなか開けなかったのですが、読みだしたら、とても興味がわき、私のペースでは、早く読み終えた感じです。
2024年3月14日に日本でレビュー済み
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心理的安全性という言葉が一人歩きしてその言葉の響きから「仲良しクラブ」と誤解している人も多いようなのでこの本で心理的安全性について正しく学ぶべきであると考えます。
心理的安全性は生産性の高い企業に必須であるので、日本企業の生産性向上のために日本の全てのビジネスパーソンに読んでもらいたい一冊です。
心理的安全性は生産性の高い企業に必須であるので、日本企業の生産性向上のために日本の全てのビジネスパーソンに読んでもらいたい一冊です。
2021年10月10日に日本でレビュー済み
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著者とグーグルのプロジェクト・アリストテレスが行った研究は、深い関係にあるようだ(p.18)。グーグルの研究は、~「効果的なチームとは何か」を知る~というタイトルで日本語訳が、Google e:Work にアップされている。こちらを参照することをお勧めしたい。
研究はグーグル内のパーフェクト・チームの五つの特徴が明らかにされている。本書でも少しだけ紹介されているが、1心理的安全性 以外、順番とネーミングが異なっている(p.70-1)。
グーグルが発表したものを下記に示す。上から重要度に応じて並べられている。
1 心理的安全性: 心理的安全性の高いチームのメンバーは、他のメンバーに対してリスクを取ることに不安を感じていません。自分の過ちを認めたり、質問をしたり、新しいアイデアを披露したりしても、誰も自分を馬鹿にしたり罰したりしないと信じられる余地があります。
2 相互信頼: 他のメンバーが仕事を高いクオリティで時間内に仕上げてくれると、互いに信じていること。(表現の修正あり)
3 構造と明確さ: 効果的なチームをつくるには、職務上で要求されていること、その要求を満たすためのプロセス、そしてメンバーの行動がもたらす成果について、個々のメンバーが理解していることが重要となります。
4 仕事の意味: チームの効果性を向上するためには、仕事そのもの、またはその成果に対して目的意識を感じられる必要があります。仕事の意味は属人的なものであり、経済的な安定を得る、家族を支える、チームの成功を助ける、自己表現するなど、人によってさまざまです。
5 インパクト: 自分の仕事には意義があるとメンバーが主観的に思えるかどうかは、チームにとって重要なことです。
本書は、一番重要な「心理的安全性」について詳しく解説したものといえる。著者の名は、グーグルの研究でもたびたび引用されている。
仕事は複雑性や不確実性が避けられない。ならば、一人より複数の人たちの共同作業である方が心強い。チームで仕事をするのはそのためである。日本では、だから職場の人間関係が大切ということになるのだが、そうなっていないところが興味深い。
著者は「心理的安全性」という概念を「対人関係においてリスクのある行動をしてもこのチームでは安全であるという、チームメンバーによって共有された考え」と定義している(グーグル研究の日本語訳)。原文は、“shared belief held by members of a team that the team is safe for interpersonal risk-taking.’’ である(What Google Learned From Its Quest to Build the Perfect Team ― The New York Times Magazine より)。ここは、「チームでは安全である」ではなく、「チームは安全である」とすべきだ。なぜなら、「1心理的安全性」「2相互信頼」「3構造と明確さ」は、組織としてのチームに備わった特徴であり、属人的特徴である「4仕事の意味」「5インパクト」とは区別されるからである。
本書は「恐れないメンバー」を作るのではなく、「恐れない組織」を作るのが目的なのだから、この区別は重要となる。
全体として本書は、エドモンドソンの研究歴の回顧録といった印象である。グーグルの研究のように、短くまとめることはできないものか。確かに事実が述べられているのだが、事実を知ったからといって、「心理的安全性」が得られるものではない。「心理的安全性」を求めるあまり安心を求めれば、相互信頼は失われてしまう。安心とは、相手との関りで、相手の行動の不確定要素を限りなく減らすこと。信頼とは、相手の行動は不確定だが、大丈夫という方に賭けることである。「心理的安全性」の定義にあったrisk-taking することである。「心理的安全性」は安心を求めることではないのだ。
以上、組織と個人の区別、「心理的安全性」と安心の区別は難しいものがあるが、本書はこの点について、あまり意識していないようだ。
研究はグーグル内のパーフェクト・チームの五つの特徴が明らかにされている。本書でも少しだけ紹介されているが、1心理的安全性 以外、順番とネーミングが異なっている(p.70-1)。
グーグルが発表したものを下記に示す。上から重要度に応じて並べられている。
1 心理的安全性: 心理的安全性の高いチームのメンバーは、他のメンバーに対してリスクを取ることに不安を感じていません。自分の過ちを認めたり、質問をしたり、新しいアイデアを披露したりしても、誰も自分を馬鹿にしたり罰したりしないと信じられる余地があります。
2 相互信頼: 他のメンバーが仕事を高いクオリティで時間内に仕上げてくれると、互いに信じていること。(表現の修正あり)
3 構造と明確さ: 効果的なチームをつくるには、職務上で要求されていること、その要求を満たすためのプロセス、そしてメンバーの行動がもたらす成果について、個々のメンバーが理解していることが重要となります。
4 仕事の意味: チームの効果性を向上するためには、仕事そのもの、またはその成果に対して目的意識を感じられる必要があります。仕事の意味は属人的なものであり、経済的な安定を得る、家族を支える、チームの成功を助ける、自己表現するなど、人によってさまざまです。
5 インパクト: 自分の仕事には意義があるとメンバーが主観的に思えるかどうかは、チームにとって重要なことです。
本書は、一番重要な「心理的安全性」について詳しく解説したものといえる。著者の名は、グーグルの研究でもたびたび引用されている。
仕事は複雑性や不確実性が避けられない。ならば、一人より複数の人たちの共同作業である方が心強い。チームで仕事をするのはそのためである。日本では、だから職場の人間関係が大切ということになるのだが、そうなっていないところが興味深い。
著者は「心理的安全性」という概念を「対人関係においてリスクのある行動をしてもこのチームでは安全であるという、チームメンバーによって共有された考え」と定義している(グーグル研究の日本語訳)。原文は、“shared belief held by members of a team that the team is safe for interpersonal risk-taking.’’ である(What Google Learned From Its Quest to Build the Perfect Team ― The New York Times Magazine より)。ここは、「チームでは安全である」ではなく、「チームは安全である」とすべきだ。なぜなら、「1心理的安全性」「2相互信頼」「3構造と明確さ」は、組織としてのチームに備わった特徴であり、属人的特徴である「4仕事の意味」「5インパクト」とは区別されるからである。
本書は「恐れないメンバー」を作るのではなく、「恐れない組織」を作るのが目的なのだから、この区別は重要となる。
全体として本書は、エドモンドソンの研究歴の回顧録といった印象である。グーグルの研究のように、短くまとめることはできないものか。確かに事実が述べられているのだが、事実を知ったからといって、「心理的安全性」が得られるものではない。「心理的安全性」を求めるあまり安心を求めれば、相互信頼は失われてしまう。安心とは、相手との関りで、相手の行動の不確定要素を限りなく減らすこと。信頼とは、相手の行動は不確定だが、大丈夫という方に賭けることである。「心理的安全性」の定義にあったrisk-taking することである。「心理的安全性」は安心を求めることではないのだ。
以上、組織と個人の区別、「心理的安全性」と安心の区別は難しいものがあるが、本書はこの点について、あまり意識していないようだ。
2024年1月4日に日本でレビュー済み
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簡易包装と置き配が良いです
2023年11月16日に日本でレビュー済み
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読みたい、とずっと思っていました。想像通り素晴らしい本でした。