形式自体はよくある逆行転生ですが、
化学者としての立場や知識から歴史を変えていくにあたり、リアリティーをもたせるための知識がすごいと感じました。
それでいて読みやすい文章になっていておすすめです。
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令和の化学者・鷹司耀子の帝都転生 プラスチック素材で日本を救う (宝島社文庫) Kindle版
応募総数14,271作品。第9回ネット小説大賞受賞作品。明治34年、鷹司家に生まれた公爵令嬢・耀子は、わずか4歳にして、合成繊維である「66ナイロン」を作り出すことに成功する。この幼い子供――鷹司耀子は、120年以上も未来の令和を生きる高分子化学者が時代を遡って転生した姿だった――。明治時代に転生した“プラスチックの専門家”が、現代知識を使って日本を化学立国に変えていく「ものづくり浪漫譚」です。
- 言語日本語
- 出版社宝島社
- 発売日2022/11/5
- ファイルサイズ4818 KB
- 販売: Amazon Services International LLC
- Kindle 電子書籍リーダーFire タブレットKindle 無料読書アプリ
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登録情報
- ASIN : B0BJJXL4TB
- 出版社 : 宝島社 (2022/11/5)
- 発売日 : 2022/11/5
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 4818 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効にされていません
- Word Wise : 有効にされていません
- 付箋メモ : Kindle Scribeで
- 本の長さ : 249ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 152,826位Kindleストア (Kindleストアの売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2022年12月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2023年4月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
中学生や高校生が転生して大活躍する冒険ものに飽き飽きしていたので面白く読めました。
2022年12月6日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
日露戦争時からの改変物、日本が化学繊維を始めとする国力増加(技術重視)する転生物。
なろうで読んでた物の再編集版、なろうの方が主人公が色々多方面に手を伸ばしていて好きだったが……。
単行本化して初めて手に取った人にはこちらの方がテンポ良いのかも知れない。
あとこの話の肝「化学繊維」に対する脚注?は作者のこだわりが感じられる一冊です。
なろうで読んでた物の再編集版、なろうの方が主人公が色々多方面に手を伸ばしていて好きだったが……。
単行本化して初めて手に取った人にはこちらの方がテンポ良いのかも知れない。
あとこの話の肝「化学繊維」に対する脚注?は作者のこだわりが感じられる一冊です。
2022年12月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
大変面白かったです。元は令和の男性有機化学者が転生したとの設定から、活き活きと描かれる主人公の耀子に、著者の想いが乗っているのかなと推察するのも楽しいです。
加えて、わかりやすい解説のおかげで、科学知識も得られてお得な感じです。
科学が世の中の様々な力になっているところからも、中高生にも読んでほしい作品です。
それにしても、耀子がこれだけ世の中を動かしていると、KGBやFBIに命を狙われるのではないかと心配です。続きが出版されたら是非買って読みたいです。
加えて、わかりやすい解説のおかげで、科学知識も得られてお得な感じです。
科学が世の中の様々な力になっているところからも、中高生にも読んでほしい作品です。
それにしても、耀子がこれだけ世の中を動かしていると、KGBやFBIに命を狙われるのではないかと心配です。続きが出版されたら是非買って読みたいです。
2022年11月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
公爵家の史実にはない末娘に1900年頃に逆行転生した男性有機化学者が、有機化学と前世で知っていた歴史を元に世界を変えていく物語。
高校の有機化学が苦手だったので、解説がありがたい。ストッキングが人気になったり…。
耀子さんのキャラが面白いのが魅力ですね。少し前世の人格が今世に引きずられつつあるのも好きです。
物語の展開としては化学の発展に伴う産業の振興以外にも仮想戦記の側面もあり面白い。
Web版からさすがに商標とかネタは載せられなかったかと察しました。
耀子さんがこれからも世界を変えていく姿が見たいです。
続刊して欲しいですね。
高校の有機化学が苦手だったので、解説がありがたい。ストッキングが人気になったり…。
耀子さんのキャラが面白いのが魅力ですね。少し前世の人格が今世に引きずられつつあるのも好きです。
物語の展開としては化学の発展に伴う産業の振興以外にも仮想戦記の側面もあり面白い。
Web版からさすがに商標とかネタは載せられなかったかと察しました。
耀子さんがこれからも世界を変えていく姿が見たいです。
続刊して欲しいですね。
2023年1月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
物語の始まりから一冊で20年間が吹っ飛んでしまった。僕が今まで読んだ転生もので1番早いペースだ。特に時間の流れが遅いはずの子供時代がこれほどのスピードで進むのは異例と言えるだろう。人は体感感覚としては20歳まで生きたら大体人生の半分を生きたと感じるのが一生とされる。
もしこの小説が体感時間を大切にしているとすれば、主人公が亡くなるのに必要な小説時間は後一冊、ということになる。
つまりこの本は体感時間よりも自分が描きたい時間軸に焦点を当てており、作者は自分の体感時間が子供の頃どうであったかに関しては完全に失念しているということだ。
そこは大きな減点要素だろう。
どうしてこれまで多くの転生小説が20代までの時間を費やしてきたかを考えれば何がまずいかはわかるはずだ。この作品に関してはもはやその点の取り返しはつかないわけだが……
そこを抜きにすれば充分に楽しめる作品ではある。
一言で言うならば、詩が足りない。この作品に関しての一番の感想は、そこかもしれない。
それを抜きにすれば、楽しめたと言えるだろう。
もしこの小説が体感時間を大切にしているとすれば、主人公が亡くなるのに必要な小説時間は後一冊、ということになる。
つまりこの本は体感時間よりも自分が描きたい時間軸に焦点を当てており、作者は自分の体感時間が子供の頃どうであったかに関しては完全に失念しているということだ。
そこは大きな減点要素だろう。
どうしてこれまで多くの転生小説が20代までの時間を費やしてきたかを考えれば何がまずいかはわかるはずだ。この作品に関してはもはやその点の取り返しはつかないわけだが……
そこを抜きにすれば充分に楽しめる作品ではある。
一言で言うならば、詩が足りない。この作品に関しての一番の感想は、そこかもしれない。
それを抜きにすれば、楽しめたと言えるだろう。
2022年12月10日に日本でレビュー済み
「素材工学」は、歴史好きの読者にとってもなじみのない題材かもしれません。
焦点を狭めて「架空戦記」の読者に言い換えようと多くの方にとって未知の領域に踏み込むのかも。
言ってしまえば「化学」と「歴史」をドッキングさせた、斬新な作品が本作になるのでしょうか。
とまれ。タイトルで作品の前提はほとんど理解いただけると思うので、軽く触れるだけにしておきます。
ところで当初のタイトル『鷹は瑞穂の空を飛ぶ』も、なかなかに伸びやかでよいものと思ったりも。
むろん誰に向けてつぶやくものでもありませんが、よろしければ心のどこかに留め置いていただければ。
そんなわけでタイトルにいらっしゃる主人公の「鷹司耀子」女史の前世は、高分子化学を修めた、令和没の技術者でした。各種機械の図面設計もでき、軍事系を含めそこそこの歴史知識も持っています。
そんな主人公は「貧すれば鈍する」を地で行ったため道を誤った大日本帝国をより良い形に導こうと密やかに決意します。そうして先人たちに助けられつつ国と共に成長していくストーリーとなっています。
未来知識によって各種技術を提供し、国富の増大や軍事の発展、外交方針の転換を目指す。それによって本来の歴史なら命を落としただろう軍人や労働者たちの命を救っていき、結果的に国威も増していく。
言わば歴史のIFを取り扱う「架空戦記」のお約束に則ったわかりやすいサクセスストーリーなのです。
銃後でモノを作って国を富ませて人命を守れたことは、きっと万人にとって嬉しい読書体験でしょう。
続き、その辺を絡めて「小説家になろう」掲載版と書籍版との相違点について軽く比較してみますと。
主人公が長じ、未来知識に基づき革新的な発明を世に送り出していくにあたり、父「鷹司煕通」公爵をはじめ彼女の芯を占める家族周りの描写が強化されました。結果、導入や展開がスムーズになっています。
他方ではカットされているエピソードも存在しますが、取捨選択の傾向を見ると主人公視点および彼女が知りえた範囲内で物語を再構成している向きがあったりします。
確かに連載時は単発エピソードの集積だけでも回りました。ただ文庫本一冊という区切りでは視点があちこちに散って散漫になりがちなので強固な筋を打ち込むことにした、と言えるのかもしれません。
それとこの種の歴史を広範に取り扱っている小説はどうしても事実の羅列になってしまいがちなところがあると思います。が、主人公の視点を軸に歴史という物語を捉え直してやろうという意志も感じます。
要は主人公の魅力が増したのだと、そうご理解ください。
魂は令和の時代を知り、生身の人間としては明治から昭和に至るまでを生きようとする「鷹司耀子」の人物の解像度が上がったことについて、一読者としては大いに歓迎したいわけです。
あと、少し話は飛んで一応ですが補足ついでに断っておきますと。鷹司女史の前世は男性ですが、そちらのニーズに応える意図はないのだろうと、いち「TS(性転換)」ファンとして断言しておきます。
これで作品の評価にケチが付いたらたまったものではないので一応補足しておきます。
「公爵令嬢」に転生した理由付けとしては肩書がもたらす権威がまずひとつ。それと重厚になりがちな架空戦記に華や柔らかさをもたらすために、女性の外見が必須だったと理解できます。
続いて、性転換を取り扱った作品にはつきものの性自認のゆらぎやそれらがもたらす煩悶などが欠如している点は、それらを書いている暇がない等の理由で納得できます。
そもそも幼少期の時点からして鷹司女史は完全に順応してますし、作品の焦点ではないことは明白です。
すこし真面目なことを述べてみると、主人公が技術者として裏方に徹しているのが本作の特徴です。
そのため女性なら表舞台に立たされずに済むという隠れたメリットを狙ってのことなのかもしれません。
まぁチェーホフの銃ではあるまいし、別に前世が男性でも女性でもどっちでもいいと私は思うのですけれど。あえて理由を探すなら元々が女性だったら、現代的とは程遠い「男尊女卑」な当時の風潮にもっと大きく斬り込まざるを得ない。それと現実的に考えれば理工学系の男女比は、極端に男の方に偏っている。
……などといったところかもしれません。
ちなみに主人公の前世がどういう人物だったかの詳細は枝葉末節とばかりにばっさりカットしています。せいぜい経歴と、2022年現在における一般的な教養などを持っていることがわかる程度です。
過剰に前世のことを引きずってもらっては「鷹司耀子」の一貫性と彼女目線のストーリーラインが損なわれることにもなるので個人的にはありがたいですね。
……いささか脱線が長くなりました。レビューの論点を個人的な感想の方へズラしていきます。
全体的にWEB版からネタ成分はオミットされていることは確かですが、ネット上で流布されている定番のパロディネタを軽妙に織り込むなどした、読みやすくて楽しい筆致は健在でした。
この種の小説の醍醐味でもある、教科書に載らない歴史上の人物に興味が持てることも確実でしょう。
それと先述した通り、本作は主人公の知りえた範囲で話が展開されます。
必然的に、戦争も経過報告などでさらっと結果が伝わる形になっているのも作風と合っていて上手なところですね。さしずめポジティブな方向に世界全体が進んでいくようでいてテンポもいい。
一方でかなり軽快に成功体験を積んでくる作品なので勘違いしそうになりますが、主人公は一足飛びを避けて段階を踏むことを重視するスタンスを取っており、その辺で説得力が生まれるのも面白いところ。
ここで個人的に気に入った一例を挙げてみますが、森鴎外が「脚気」が蔓延した原因のひとりになってしまい、後世で非難を浴びているというのは一部でかなり有名な話ですよね。
ところが本作ではきちんと彼だけが原因ではなく、当時の医学界に問題があったことを明示しており、一個人にすべて責任を帰すような短絡的な書き方になっていなかった点がとても好印象でした。
反面、少し気になった点としては、本作の特長でもある化学用語の多さでしょうか。
ページをめくるたび配置されていると言って過言ではない怒涛の注釈でカバーしているとはいえ、どうしても基礎的な教養が必要になってくるのが本作を読み解く上で難点と言えるかもしれません。
本当に、あえて言えば程度の指摘なのでご容赦いただきたいのですが、架空戦記かそれに類するジャンルの小説を「宝島社文庫」というレーベルから発刊するのは少々風変わりな試みと思うだけに一点ほど。
ちなみに私自身は戦史、戦術論などのミリタリー知識はある程度押さえていました。門外漢である化学式をはじめとする有機化学の方も、なんとか高校時代の記憶を探り探りでついていけました。
しかして終盤に至ると初見では面食らい、ほとんど魔法の呪文を読み解く感覚を覚えたりもしました。
多少認識に穴が開こうとも、文脈で理解はできるのですけどね。
以上。
ここからはまとめに入らせていただきます。
この巻の中で取り扱われたのは日露戦争と第一次世界大戦というふたつの大戦争を近代日本と主人公が駆け抜けるまでです。エピローグで鷹司女史自らが振り返っている通り、激動の二十年間でした。
そこに注目するだけでいくらでも本が書けそうな、興味深い偉人や会戦などをダース単位ですっ飛ばしていく構成になりましたが、一々深掘りをしていれば話がまったく進まないのも確かです。
よって身動きしづらい幼少期と合わせて、一気にカレンダーを先に進めたのは悪くない判断でしょう。
なお続刊が出た暁には、史実にあまり頼れない架空の歴史へと踏み込んでいくことになるのでしょう。
世界大戦を早期終結させるというウルトラCを決めた波及効果はそれだけ大きいということです。
それと先の展開に少し触れておくと、引き続き「自動車」と「飛行機」というふたつのテクノロジーにおいて世界の先進を歩むべく、主人公と日本は挑んでいくことになります。それも軍と民、両方の軸から。
時に。架空の歴史と聞けば、史実という原作が使いにくくなることも確かです。
軸足を欠いたふわふわした展開になるのかもという、読者諸姉諸兄の危惧もきっとあることでしょう。
ところがですね、本作の場合は技術史という異なった軸に話を移すことができるのです。
主人公が技術者であったからこそ、自然に物語の論点を移動させて読者の興味を持続させるのですね。
さて、いささか長々と語り過ぎました。
レビューを閉じる前に少々物語を振り返っておきます。
歴史改変を行うためには先立つものとしてまず外貨と人材が必要でした。
それを稼ぐにあたって、元々日本が持っていた製糸業などの軽工業と親和性を持つ新素材、それと平行して泥沼の戦場を経験しなければ持ち帰れなかった新戦術などを持ち込み人と金を稼ぎました。
外交面では大陸に深入りせず、イギリスをはじめとする欧州列強との協調にとにかく努めました。
と。そんなこんなで、ここ第一巻は、ネット上で先行する「文明開化後の日本が道を誤らないためにはどうすべきか?」という方法論に比較的忠実な、足固めを行う巻であったとも思います。
ただし、本作が先行作品に埋もれずに存在感を示せたのは、高分子化学という唯一無二の切り口によって、歴史という偉大な物語を再構成していこうという一点に尽きるのかもしれません。
ゆるふわな公爵令嬢という今の時代の主人公を介して。今も昔も大事にした進取の気風に乗っかって。
テクノロジーというのは人を幸せにするものなのだと高らかに謳い上げました。
「戦争」は確かに歴史を形作る中ではとても巨大なピースだと、私もそう思っています。
けれど、私が本作を読んで思ったのは、それ以上に戦争と戦争の間の人々の営みに勝るものはないのだという、確かで素敵なメッセージが織り込まれていた。――そう思えてならないという、事実なのですね。
焦点を狭めて「架空戦記」の読者に言い換えようと多くの方にとって未知の領域に踏み込むのかも。
言ってしまえば「化学」と「歴史」をドッキングさせた、斬新な作品が本作になるのでしょうか。
とまれ。タイトルで作品の前提はほとんど理解いただけると思うので、軽く触れるだけにしておきます。
ところで当初のタイトル『鷹は瑞穂の空を飛ぶ』も、なかなかに伸びやかでよいものと思ったりも。
むろん誰に向けてつぶやくものでもありませんが、よろしければ心のどこかに留め置いていただければ。
そんなわけでタイトルにいらっしゃる主人公の「鷹司耀子」女史の前世は、高分子化学を修めた、令和没の技術者でした。各種機械の図面設計もでき、軍事系を含めそこそこの歴史知識も持っています。
そんな主人公は「貧すれば鈍する」を地で行ったため道を誤った大日本帝国をより良い形に導こうと密やかに決意します。そうして先人たちに助けられつつ国と共に成長していくストーリーとなっています。
未来知識によって各種技術を提供し、国富の増大や軍事の発展、外交方針の転換を目指す。それによって本来の歴史なら命を落としただろう軍人や労働者たちの命を救っていき、結果的に国威も増していく。
言わば歴史のIFを取り扱う「架空戦記」のお約束に則ったわかりやすいサクセスストーリーなのです。
銃後でモノを作って国を富ませて人命を守れたことは、きっと万人にとって嬉しい読書体験でしょう。
続き、その辺を絡めて「小説家になろう」掲載版と書籍版との相違点について軽く比較してみますと。
主人公が長じ、未来知識に基づき革新的な発明を世に送り出していくにあたり、父「鷹司煕通」公爵をはじめ彼女の芯を占める家族周りの描写が強化されました。結果、導入や展開がスムーズになっています。
他方ではカットされているエピソードも存在しますが、取捨選択の傾向を見ると主人公視点および彼女が知りえた範囲内で物語を再構成している向きがあったりします。
確かに連載時は単発エピソードの集積だけでも回りました。ただ文庫本一冊という区切りでは視点があちこちに散って散漫になりがちなので強固な筋を打ち込むことにした、と言えるのかもしれません。
それとこの種の歴史を広範に取り扱っている小説はどうしても事実の羅列になってしまいがちなところがあると思います。が、主人公の視点を軸に歴史という物語を捉え直してやろうという意志も感じます。
要は主人公の魅力が増したのだと、そうご理解ください。
魂は令和の時代を知り、生身の人間としては明治から昭和に至るまでを生きようとする「鷹司耀子」の人物の解像度が上がったことについて、一読者としては大いに歓迎したいわけです。
あと、少し話は飛んで一応ですが補足ついでに断っておきますと。鷹司女史の前世は男性ですが、そちらのニーズに応える意図はないのだろうと、いち「TS(性転換)」ファンとして断言しておきます。
これで作品の評価にケチが付いたらたまったものではないので一応補足しておきます。
「公爵令嬢」に転生した理由付けとしては肩書がもたらす権威がまずひとつ。それと重厚になりがちな架空戦記に華や柔らかさをもたらすために、女性の外見が必須だったと理解できます。
続いて、性転換を取り扱った作品にはつきものの性自認のゆらぎやそれらがもたらす煩悶などが欠如している点は、それらを書いている暇がない等の理由で納得できます。
そもそも幼少期の時点からして鷹司女史は完全に順応してますし、作品の焦点ではないことは明白です。
すこし真面目なことを述べてみると、主人公が技術者として裏方に徹しているのが本作の特徴です。
そのため女性なら表舞台に立たされずに済むという隠れたメリットを狙ってのことなのかもしれません。
まぁチェーホフの銃ではあるまいし、別に前世が男性でも女性でもどっちでもいいと私は思うのですけれど。あえて理由を探すなら元々が女性だったら、現代的とは程遠い「男尊女卑」な当時の風潮にもっと大きく斬り込まざるを得ない。それと現実的に考えれば理工学系の男女比は、極端に男の方に偏っている。
……などといったところかもしれません。
ちなみに主人公の前世がどういう人物だったかの詳細は枝葉末節とばかりにばっさりカットしています。せいぜい経歴と、2022年現在における一般的な教養などを持っていることがわかる程度です。
過剰に前世のことを引きずってもらっては「鷹司耀子」の一貫性と彼女目線のストーリーラインが損なわれることにもなるので個人的にはありがたいですね。
……いささか脱線が長くなりました。レビューの論点を個人的な感想の方へズラしていきます。
全体的にWEB版からネタ成分はオミットされていることは確かですが、ネット上で流布されている定番のパロディネタを軽妙に織り込むなどした、読みやすくて楽しい筆致は健在でした。
この種の小説の醍醐味でもある、教科書に載らない歴史上の人物に興味が持てることも確実でしょう。
それと先述した通り、本作は主人公の知りえた範囲で話が展開されます。
必然的に、戦争も経過報告などでさらっと結果が伝わる形になっているのも作風と合っていて上手なところですね。さしずめポジティブな方向に世界全体が進んでいくようでいてテンポもいい。
一方でかなり軽快に成功体験を積んでくる作品なので勘違いしそうになりますが、主人公は一足飛びを避けて段階を踏むことを重視するスタンスを取っており、その辺で説得力が生まれるのも面白いところ。
ここで個人的に気に入った一例を挙げてみますが、森鴎外が「脚気」が蔓延した原因のひとりになってしまい、後世で非難を浴びているというのは一部でかなり有名な話ですよね。
ところが本作ではきちんと彼だけが原因ではなく、当時の医学界に問題があったことを明示しており、一個人にすべて責任を帰すような短絡的な書き方になっていなかった点がとても好印象でした。
反面、少し気になった点としては、本作の特長でもある化学用語の多さでしょうか。
ページをめくるたび配置されていると言って過言ではない怒涛の注釈でカバーしているとはいえ、どうしても基礎的な教養が必要になってくるのが本作を読み解く上で難点と言えるかもしれません。
本当に、あえて言えば程度の指摘なのでご容赦いただきたいのですが、架空戦記かそれに類するジャンルの小説を「宝島社文庫」というレーベルから発刊するのは少々風変わりな試みと思うだけに一点ほど。
ちなみに私自身は戦史、戦術論などのミリタリー知識はある程度押さえていました。門外漢である化学式をはじめとする有機化学の方も、なんとか高校時代の記憶を探り探りでついていけました。
しかして終盤に至ると初見では面食らい、ほとんど魔法の呪文を読み解く感覚を覚えたりもしました。
多少認識に穴が開こうとも、文脈で理解はできるのですけどね。
以上。
ここからはまとめに入らせていただきます。
この巻の中で取り扱われたのは日露戦争と第一次世界大戦というふたつの大戦争を近代日本と主人公が駆け抜けるまでです。エピローグで鷹司女史自らが振り返っている通り、激動の二十年間でした。
そこに注目するだけでいくらでも本が書けそうな、興味深い偉人や会戦などをダース単位ですっ飛ばしていく構成になりましたが、一々深掘りをしていれば話がまったく進まないのも確かです。
よって身動きしづらい幼少期と合わせて、一気にカレンダーを先に進めたのは悪くない判断でしょう。
なお続刊が出た暁には、史実にあまり頼れない架空の歴史へと踏み込んでいくことになるのでしょう。
世界大戦を早期終結させるというウルトラCを決めた波及効果はそれだけ大きいということです。
それと先の展開に少し触れておくと、引き続き「自動車」と「飛行機」というふたつのテクノロジーにおいて世界の先進を歩むべく、主人公と日本は挑んでいくことになります。それも軍と民、両方の軸から。
時に。架空の歴史と聞けば、史実という原作が使いにくくなることも確かです。
軸足を欠いたふわふわした展開になるのかもという、読者諸姉諸兄の危惧もきっとあることでしょう。
ところがですね、本作の場合は技術史という異なった軸に話を移すことができるのです。
主人公が技術者であったからこそ、自然に物語の論点を移動させて読者の興味を持続させるのですね。
さて、いささか長々と語り過ぎました。
レビューを閉じる前に少々物語を振り返っておきます。
歴史改変を行うためには先立つものとしてまず外貨と人材が必要でした。
それを稼ぐにあたって、元々日本が持っていた製糸業などの軽工業と親和性を持つ新素材、それと平行して泥沼の戦場を経験しなければ持ち帰れなかった新戦術などを持ち込み人と金を稼ぎました。
外交面では大陸に深入りせず、イギリスをはじめとする欧州列強との協調にとにかく努めました。
と。そんなこんなで、ここ第一巻は、ネット上で先行する「文明開化後の日本が道を誤らないためにはどうすべきか?」という方法論に比較的忠実な、足固めを行う巻であったとも思います。
ただし、本作が先行作品に埋もれずに存在感を示せたのは、高分子化学という唯一無二の切り口によって、歴史という偉大な物語を再構成していこうという一点に尽きるのかもしれません。
ゆるふわな公爵令嬢という今の時代の主人公を介して。今も昔も大事にした進取の気風に乗っかって。
テクノロジーというのは人を幸せにするものなのだと高らかに謳い上げました。
「戦争」は確かに歴史を形作る中ではとても巨大なピースだと、私もそう思っています。
けれど、私が本作を読んで思ったのは、それ以上に戦争と戦争の間の人々の営みに勝るものはないのだという、確かで素敵なメッセージが織り込まれていた。――そう思えてならないという、事実なのですね。
2023年1月26日に日本でレビュー済み
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大抵の歴史改変小説は技術チートや歴史の先読みが多いが現代に身近に有る化学製品も時代が違えば十分使えると分かるのが新鮮に感じる。初心者には難しいかもしれんが今までの歴史改変系小説に飽きている人はweb版を見て判断して欲しい。私は大変面白いが万人受けしないかなで☆4評価