村上春樹さんと父親との確執についてはいろんな所で目にして来ましたが、
本書は、小学生の時に、その父と海外沿いまで「猫を捨てに行った」思い出を
語るところからスタートしています。
毎朝、小さな声でお経を唱えていた父から聞いた中国での悲惨な戦争体験談。
村上氏が30歳の時に小説家としてデビューした際には、彼の父は誰よりも
喜んでくれたそうですが、その時点ですでに親子関係は冷え切っていたといいます。
そんな冷めきった関係だった父と子が、久しぶりに腹を割って話し合って「和解」
したのは、父が９０で息子の村上氏が６０の時のことだったそうです。まさに、
近いようで遠いのが、親子関係なのかもしれませんね。
全体で120ページと薄目の本ですが、村上氏お気に入りの台湾出身でコミック
「緑の歌₋収集群風₋」が話題の高妍(ガオ イェン)さんのカラー挿絵も入っており、
非常に充実した内容になっています。
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イメージ付きのレビュー
それらのことがとても近くに存在している
「猫を棄てる 父親について語るとき」（村上春樹 文藝春秋）を読む。 作者は、「父親」と海辺に一匹の猫を棄てに行ったことを思い出し、「父親」の戦争の後を克明に辿ることによって、いくつかのことを何時になく力強く、曖昧さのない形で語っています。「継承」すること。「引き受ける」こと。極私的で本当にささやかな「歴史」を思うこと。そして、そのことがただそこにあるということ。 村上龍が近作で母親の記憶を語り、村上春樹がこの小説において父親の記憶を記した、そういう事実をこの同じ時代を生きた私たちが受け止めること。 私自身の話は本当にどうでもいいことかもしれませんが、私の父親は海軍士官として北海道にいて、＜南方＞で多くの若者たちが斃れていった時期、部下を連れて、捕虫網を持って「蝶々捕り」をしていたとあっさりと語ったことがありました。私は、その時の父親の表情をどうしても思い出すことができない。
