私の人生観に大きな影響を与えた本となりました。
本の前半は、「知」の応酬でした。宮野氏は、哲学者九鬼周造(1888 - 1941)の研究者です。九鬼の言う「偶然性」の哲学をベースに、ガンに罹患するという「偶然」とその中での生き方の選択について、思索を深めていきます。それに対して磯野氏は、医療人類学のフレームワークを利用して、宮野氏を取り巻く環境を説明します。
やがて磯野氏は、二人の会話に決定的に重要な概念を導入します。文化人類学者のティム・インゴルドが「ラインズ」の中で導入した、「ライン」(軌跡)という概念です。人は様々な出会いと偶然性の中で、美しい軌跡(ライン)を描きながら生きます。
ラインを描き、「踏み跡」を残しながら終末期を生きようとする宮野氏。
しかしその宮野氏の病状は悪化します。そして出会って1年ほどの学者同士だった二人の会話は、「知の応酬」から変化します。自身の魂から言葉を紡ぎ出し、その言葉で相手の魂を乱打するような、魂の交感、いや魂の乱打戦に。
磯野氏は激を飛ばしました。「宮野にしか紡げない言葉を記し、それが世界にどう届いたかを見届けるまで、絶対に死ぬんじゃねーぞ」(2019年6月2日)
しかし病状が悪化し、意識が朦朧とした状態に陥る宮野氏を見て、磯野氏は「まだ書ける?」とメッセージを送りました。それに対する宮野氏の回答は…。
「なめんなよ、磯野真穂」
死に直面した哲学者の本領発揮。宮野氏は、磯野氏との出会いを引き受けた自身のラスト1年を総括し、思考を深めます。そして最後にたどり着いた人生観、世界観とは…。
二人の哲学、生きざま、そして急速に深まる友情に、心揺さぶられる書簡集でした。まだ残された生を生きる、全ての人にお勧めしたい一冊です。
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急に具合が悪くなる Kindle版
もし、あなたが重病に罹り、残り僅かの命と言われたら、どのように死と向き合い、人生を歩みますか?もし、あなたが死に向き合う人と出会ったら、あなたはその人と何を語り、どんな関係を築きますか?がんの転移を経験しながら生き抜く哲学者と、臨床現場の調査を積み重ねた人類学者が、死と生、別れと出会い、そして出会いを新たな始まりに変えることを巡り、20年の学問キャリアと互いの人生を賭けて交わした20通の往復書簡。
- 言語日本語
- 出版社晶文社
- 発売日2019/9/20
- ファイルサイズ9231 KB
- 販売: Amazon Services International LLC
- Kindle 電子書籍リーダーFire タブレットKindle 無料読書アプリ
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出版社より

商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
もし、あなたが重病に罹り、残り僅かの命と言われたら、どのように死と向き合い、人生を歩みますか?もし、あなたが死に向き合う人と出会ったら、あなたはその人と何を語り、どんな関係を築きますか?がんの転移を経験しながら生き抜く哲学者と、臨床現場の調査を積み重ねた人類学者が、死と生、別れと出会い、そして出会いを新たな始まりに変えることを巡り、20年の学問キャリアと互いの人生を賭けて交わした20通の往復書簡。 --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。
著者について
宮野真生子(みやの・まきこ)
福岡大学人文学部准教授。2000年、京都大学文学部文学科卒業。2007年、京都
大学大学院文学研究科博士課程(後期)単位取得満期退学。博士(人間科学)。
専門は日本哲学史。著書に『なぜ、私たちは恋をして生きるのか――「出会い」
と「恋愛」の近代日本精神史』(ナカニシヤ出版)、『出逢いのあわい――九
鬼周造における存在論理学と邂逅の倫理』(堀之内出版)、藤田尚志との共編
著に『愛・性・家族の哲学』(全3巻、ナカニシヤ出版)などがある。
磯野真穂(いその・まほ)
国際医療福祉大学大学院准教授。1999年、早稲田大学人間科学部スポーツ科学
科卒業。オレゴン州立大学応用人類学研究科修士課程修了後、2010年、早稲田
大学文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。専門は文化人類学、医療人
類学。 著書に『なぜふつうに食べられないのか――拒食と過食の文化人類学』
(春秋社)、『医療者が語る答えなき世界――いのちの守り人の人類学』(ち
くま新書)、『ダイエット幻想――やせること、愛されること』(ちくまプリ
マ―新書)などがある。 --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。
福岡大学人文学部准教授。2000年、京都大学文学部文学科卒業。2007年、京都
大学大学院文学研究科博士課程(後期)単位取得満期退学。博士(人間科学)。
専門は日本哲学史。著書に『なぜ、私たちは恋をして生きるのか――「出会い」
と「恋愛」の近代日本精神史』(ナカニシヤ出版)、『出逢いのあわい――九
鬼周造における存在論理学と邂逅の倫理』(堀之内出版)、藤田尚志との共編
著に『愛・性・家族の哲学』(全3巻、ナカニシヤ出版)などがある。
磯野真穂(いその・まほ)
国際医療福祉大学大学院准教授。1999年、早稲田大学人間科学部スポーツ科学
科卒業。オレゴン州立大学応用人類学研究科修士課程修了後、2010年、早稲田
大学文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。専門は文化人類学、医療人
類学。 著書に『なぜふつうに食べられないのか――拒食と過食の文化人類学』
(春秋社)、『医療者が語る答えなき世界――いのちの守り人の人類学』(ち
くま新書)、『ダイエット幻想――やせること、愛されること』(ちくまプリ
マ―新書)などがある。 --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
宮野/真生子
福岡大学人文学部准教授。2000年、京都大学文学部文学科卒業。2007年、京都大学大学院文学研究科博士課程(後期)単位取得満期退学。博士(人間科学)。専門は日本哲学史
磯野/真穂
国際医療福祉大学大学院准教授。1999年、早稲田大学人間科学部スポーツ科学科卒業。オレゴン州立大学応用人類学研究科修士課程修了後、2010年、早稲田大学文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。専門は文化人類学、医療人類学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。
福岡大学人文学部准教授。2000年、京都大学文学部文学科卒業。2007年、京都大学大学院文学研究科博士課程(後期)単位取得満期退学。博士(人間科学)。専門は日本哲学史
磯野/真穂
国際医療福祉大学大学院准教授。1999年、早稲田大学人間科学部スポーツ科学科卒業。オレゴン州立大学応用人類学研究科修士課程修了後、2010年、早稲田大学文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。専門は文化人類学、医療人類学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。
登録情報
- ASIN : B088GW7V11
- 出版社 : 晶文社 (2019/9/20)
- 発売日 : 2019/9/20
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 9231 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効にされていません
- Word Wise : 有効にされていません
- 付箋メモ : Kindle Scribeで
- 本の長さ : 211ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 44,072位Kindleストア (Kindleストアの売れ筋ランキングを見る)
- - 1,081位医学・薬学
- - 3,222位科学・テクノロジー (Kindleストア)
- カスタマーレビュー:
著者について
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人がわからない未来を前にどう生きるのか、に関心を持っています。人類学の魅力を学問の外に開きたい。
国際医療福祉大学大学院准教授を経て2020年4月より独立しました。研究者としての所属は慶應大学大学院です。
(略歴)1999年、早稲田大学人間科学部スポーツ科学科卒。オレゴン州立大学応用人類学修士課程修了後、早稲田大学文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。
(HP )https://www.mahoisono.com
(研究業績)https://researchmap.jp/mahoisono
(twitter)@mahoisono
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2023年12月29日に日本でレビュー済み
レポート
1人のお客様がこれが役に立ったと考えています
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2022年12月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
命の終わりを目の前に見据える中での哲学者と文化人類学者の本気の往復書簡。まさに命懸けの考察と記述。
この重みを一回読んだだけではとても消化できないので、また読みたいと思う。
この重みを一回読んだだけではとても消化できないので、また読みたいと思う。
2021年5月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
一気に読んでしまった。
落ち着かない。
乳がんで「急に具合が悪くなるかもしれない」と主治医に言われた哲学者宮野氏とたまたま意気投合した人類学者磯野氏。宮野氏の最後の時を見据えながらの往復書簡という。
同世代の女性二人。
「死はたしかにやってくる。しかし今ではないのだ」と思っていたら、死の手触りを感じる様になる。
書簡のやりとりは時間の進行。
「患者」となった人にどう接するのが良いのか。傾聴は専門家がやったらいい。ここでは、「患者」と「そうでない人」という構図ではなくて、もっと別な関係性を提示されている気がした。「患者」の気持ちを害するかもしれないことに関係性で踏み込む。この関係性は”深さ”がないと難しいなと思う。ほんのちょっと知っているくらいの人には出来ないな。
本来人間というのはひとり対ひとりであって、属性やカテゴリでひとくくりに出来るものでもないなと思う。「がん患者」と「がんじゃない人」、「先生」と「生徒」、「親」と「子」。本当は「個」と「個」。それぞれの”深さ”があるはず。そして「がん患者」であるけれども、「患者」としての生きる可能線の選択肢ではなく、「患者」ではない部分の自分で選択していく宮野氏。
わたしは「患者」がいる家族の方に対して、失敗したなあと思うことがあった。自分で思っているだけでそうでないかもしれないけど。慰める必要なんてなかったんだ。心がざわざわした。
迷惑を掛けないで死にたいという思い。わたしもそうだ。読んで思ったが、どうにもならない爪痕というか、中途半端なものを遺していくことだって悪くないのかもしれない。わたしの中に新しい気持ちが芽生えた。
”他者と出会って動かされることのなかにこそ自分という存在が立ち上がること、この出会いを引き受けるところにこそ、自分たちがいる。”
この書簡がまさにそう。
本当の最後の最後、なぜかちょっと消化不良になった。実は感情移入が激しいタイプの自分は、自分の死のイメージが湧いてきてものすごく落ち着かなかったのだが、このお二人が互いに感じられていることにちょっと共感できないというか、多分自分ならこうだというものがあって、それとちょっとずれていたのかもしれない。本当に最期の最期って、人それぞれなのだなと感じた。これはこのお二人の物語だ。それでいいのだ。自分は本を通してのぞいているだけ。
死を目の前にした哲学者の「書く」ことへの執念。それを受けとめる人。ただ受けとめるのではなく、もっと!と投げ返す。なにが正解とかあれがよくないとかそういう問題ではない。とにかく自分の死のイメージに落ち着かない。ざわざわする。感動とか崇高とかそういうのではない。二人を通して自分のことを考えているだけだ。
落ち着かない。
乳がんで「急に具合が悪くなるかもしれない」と主治医に言われた哲学者宮野氏とたまたま意気投合した人類学者磯野氏。宮野氏の最後の時を見据えながらの往復書簡という。
同世代の女性二人。
「死はたしかにやってくる。しかし今ではないのだ」と思っていたら、死の手触りを感じる様になる。
書簡のやりとりは時間の進行。
「患者」となった人にどう接するのが良いのか。傾聴は専門家がやったらいい。ここでは、「患者」と「そうでない人」という構図ではなくて、もっと別な関係性を提示されている気がした。「患者」の気持ちを害するかもしれないことに関係性で踏み込む。この関係性は”深さ”がないと難しいなと思う。ほんのちょっと知っているくらいの人には出来ないな。
本来人間というのはひとり対ひとりであって、属性やカテゴリでひとくくりに出来るものでもないなと思う。「がん患者」と「がんじゃない人」、「先生」と「生徒」、「親」と「子」。本当は「個」と「個」。それぞれの”深さ”があるはず。そして「がん患者」であるけれども、「患者」としての生きる可能線の選択肢ではなく、「患者」ではない部分の自分で選択していく宮野氏。
わたしは「患者」がいる家族の方に対して、失敗したなあと思うことがあった。自分で思っているだけでそうでないかもしれないけど。慰める必要なんてなかったんだ。心がざわざわした。
迷惑を掛けないで死にたいという思い。わたしもそうだ。読んで思ったが、どうにもならない爪痕というか、中途半端なものを遺していくことだって悪くないのかもしれない。わたしの中に新しい気持ちが芽生えた。
”他者と出会って動かされることのなかにこそ自分という存在が立ち上がること、この出会いを引き受けるところにこそ、自分たちがいる。”
この書簡がまさにそう。
本当の最後の最後、なぜかちょっと消化不良になった。実は感情移入が激しいタイプの自分は、自分の死のイメージが湧いてきてものすごく落ち着かなかったのだが、このお二人が互いに感じられていることにちょっと共感できないというか、多分自分ならこうだというものがあって、それとちょっとずれていたのかもしれない。本当に最期の最期って、人それぞれなのだなと感じた。これはこのお二人の物語だ。それでいいのだ。自分は本を通してのぞいているだけ。
死を目の前にした哲学者の「書く」ことへの執念。それを受けとめる人。ただ受けとめるのではなく、もっと!と投げ返す。なにが正解とかあれがよくないとかそういう問題ではない。とにかく自分の死のイメージに落ち着かない。ざわざわする。感動とか崇高とかそういうのではない。二人を通して自分のことを考えているだけだ。
2022年8月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
がんを宣告された教授が、どんどん具合が悪くなる中で死と生について意見を交わす交換日記みたいなものです。今までは死が偶発的なものと思っていたものが、確実な宿命へと変わったときに、二人の死生観が変化していきます。
とてもおススメ
とてもおススメ
2021年11月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
単純な生と死のお話というだけでない、人生観を揺さぶる本であった。
2021年3月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
前半は、それなりに互いに学者然としたところはあり、特に磯野さんが論点を探りながらのリード役的な面も見せる。
しかし、宮野さんの具合が本当に悪くなるにつれて――そして、互いのプライベートでの距離も近くなるのもあってか――、磯野さんのアカデミックな姿勢も大きくぶれ始め、しまいには、磯野さんの”いたかもしれない”妹の”魂の分け合い”が宮野さんだ、などといった話まで飛び出す。
他方、宮野さんのほうも後半に向かうにつれて、率直に死の恐怖を語ったりもするようになるが、逆にその思考と筆致は研ぎ澄まされてゆく。まさに鬼気迫る勢い。そして、磯野さんの「魂の分け合い」といった着想でさえも、見事なまでに九鬼周造の思想との邂逅へと導き、彼女自身の思索はさらなる高みへと向かう。
書簡形式のやりとりを提案したのも、出会ってさほど経たぬ磯野さんに相手として白羽の矢を立てたのも、宮野さん自身とのことだが、自らの思索そのものに<偶然性>を招き入れるトポスをこのように作り上げたのもまた、九鬼の思想を血肉としていた宮野さんならではのことなのかもしれない。
宮野さん自身の言葉通り、「思索する人間の業」を生き抜いた、その思索の生々しい軌跡であり、奇跡。
そして、おそらくは宮野さんに限らず、思索の軌跡の途中には常に他者を必要とするのであり――それは宮野さん自身がたどり着いた結論の一つでもある――、伴走者の磯野さんにも拍手。
しかし、宮野さんの具合が本当に悪くなるにつれて――そして、互いのプライベートでの距離も近くなるのもあってか――、磯野さんのアカデミックな姿勢も大きくぶれ始め、しまいには、磯野さんの”いたかもしれない”妹の”魂の分け合い”が宮野さんだ、などといった話まで飛び出す。
他方、宮野さんのほうも後半に向かうにつれて、率直に死の恐怖を語ったりもするようになるが、逆にその思考と筆致は研ぎ澄まされてゆく。まさに鬼気迫る勢い。そして、磯野さんの「魂の分け合い」といった着想でさえも、見事なまでに九鬼周造の思想との邂逅へと導き、彼女自身の思索はさらなる高みへと向かう。
書簡形式のやりとりを提案したのも、出会ってさほど経たぬ磯野さんに相手として白羽の矢を立てたのも、宮野さん自身とのことだが、自らの思索そのものに<偶然性>を招き入れるトポスをこのように作り上げたのもまた、九鬼の思想を血肉としていた宮野さんならではのことなのかもしれない。
宮野さん自身の言葉通り、「思索する人間の業」を生き抜いた、その思索の生々しい軌跡であり、奇跡。
そして、おそらくは宮野さんに限らず、思索の軌跡の途中には常に他者を必要とするのであり――それは宮野さん自身がたどり着いた結論の一つでもある――、伴走者の磯野さんにも拍手。
2020年8月17日に日本でレビュー済み
片方の具合がいよいよ悪くなったとき、磯野氏が「死について語ろう」と切り出したのはすばらしいと思った。
しかし、「死ぬんじゃねーぞ」「勝ちに行こうぜ」など、妙に好戦的なtwitterのような語りが多用されているのが気になった。話をどう落としていいのかわからなくなったとき、乱暴な言葉に逃げているように見えた。
あとは「約束を生きる」とか「エースを引き受ける」とか、どうしてそうポエティックな比喩に逃げてしまうのか。せっかく実体験について学術用語で切り込んでも、すぐ聞こえのいい日常用語の世界に戻ってしまう。
磯野氏の摂食障害に関する単著を読んだときにも感じたことだが、ある程度まで学術的に論じた後、ふんわりとした表現でなんとなくまとめてしまうところがもったいない。
好戦的なのは他者に対してもそうで、「患者役割を引き受けた人」や「健康だけどなにも考えてない人」が批判の対象となる。しかし、最後まで私が私の役割を決定するのだ、既存の枠組みには回収されないのだ、自然に流されないのだ、というその態度こそ、宮野氏が批判する近代的な「コントロールの欲求」の表れではないか。
好き勝手書いたが、私に書けない本であることは間違いないので、その点は尊敬する。
しかし、「死ぬんじゃねーぞ」「勝ちに行こうぜ」など、妙に好戦的なtwitterのような語りが多用されているのが気になった。話をどう落としていいのかわからなくなったとき、乱暴な言葉に逃げているように見えた。
あとは「約束を生きる」とか「エースを引き受ける」とか、どうしてそうポエティックな比喩に逃げてしまうのか。せっかく実体験について学術用語で切り込んでも、すぐ聞こえのいい日常用語の世界に戻ってしまう。
磯野氏の摂食障害に関する単著を読んだときにも感じたことだが、ある程度まで学術的に論じた後、ふんわりとした表現でなんとなくまとめてしまうところがもったいない。
好戦的なのは他者に対してもそうで、「患者役割を引き受けた人」や「健康だけどなにも考えてない人」が批判の対象となる。しかし、最後まで私が私の役割を決定するのだ、既存の枠組みには回収されないのだ、自然に流されないのだ、というその態度こそ、宮野氏が批判する近代的な「コントロールの欲求」の表れではないか。
好き勝手書いたが、私に書けない本であることは間違いないので、その点は尊敬する。
2021年3月22日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
私には言葉と感覚が結びつきにくいところもありましたが、何気に過ごしている日常もこう言うふうに考えてみると、自分が本当は何を求めているのかわかる気がしました。
このタイミングでこの本に出会えたことに感謝です。sns等でもこの本オススメしました。
このタイミングでこの本に出会えたことに感謝です。sns等でもこの本オススメしました。