いま話題の弁護士小説家の作品。
公正取引委員会という極めて特殊な世界を舞台に選びながら、それでいて難解な部分を一切見せず、あくまで胸躍るミステリエンターテインメントとして仕上げているところはさすがの技量。
テンポよし、キャラよし、ミステリとしても及第。軽い気持ちでどんどん読み進めたい小説を探している人にはぴったりです。
弁護士や官僚というのは厳密な言葉選びの世界で勝負しているので、こういうバックグラウンドを持つ人のフィクションはどうしてもテンポが悪くなり、世間ウケしないことが多々ありますが、この著者の作品はそうした点にまったく心配がありません。
もちろん本人や担当編集者も相当意識しているでしょうが、エンタメ成分と法律的な厳密性のバランスが私にはまことに心地よく、楽しく読めました。
言葉は悪いが、確かに「売れる」小説です。早やばやとドラマ化が決まるのも分かります。
とは言いつつ、瑣末ながら気になった点を2点。
○登場人物の名前があまりに突飛で、慣れるまでは抵抗があるかも
主人公の姓が「白熊」、バディ役が「小勝負」です(笑)。著者は「主役の人は主役級の名前にすること」をポリシーにしているようですが(「小説現代」2021年12月号 p.80 著者特別インタビューより)、さすがにインパクト強すぎ。ラノベを読んでいるようで慣れるまで抵抗がありました。登場人物の姓は結構重要で、これだけで本を閉じる人もいると思われ、もう少し落ち着いてほしい。
ただ、実在の苗字のようなので、全国に点在する白熊さんと小勝負さんには申し訳ありません(笑)
○「弱小官庁・公正取引委員会」
本文に「(公正取引委員会は)令状があれば強制的に捜索差押ができる警察とは違うのだ」「警察のように強制捜査ができれば楽なのに」といった記述がありますが、この部分は完全に事実に反していて、公取委も令状を請求すれば強制処分たる臨検・捜索・差押ができますし、その執行には必要な処分として部屋の鍵をこじ開けたり、その際に執行妨害する人を現行犯逮捕することもできるでしょう。国税のマルサや証券取引委員会と同じ犯則調査の取り扱いです。
物語の全編にわたって、告発を目指さない行政調査とこの告発を目指す犯則調査を意図的に混同させているようなので、その存在に触れなければフェアではないように思います。
もちろん、著者は知った上で、エンタメ性のために敢えてこういう設定にしたのでしょうが、この小説を読んだ人が調査現場で登場人物のホテル経営者と同じような検査妨害をするリスクを考えると、何らかのエクスキューズがあった方が(被疑者のためにも公取委のためにも)いいように思います。法曹資格者が書いたとなると、著者が意図したかは別にして、法律的な記述をそのまま信用する読者は多そうなので。
あと、公取委を随所にわたり「弱小官庁」と表現していますが、ちょっとしつこいかなあと。伝統的な規制緩和施策やプラットフォーム規制などに関しては霞が関においても一定の影響力があるようですし、まあ単に一般国民の知名度がないだけでしょう。
弁護士歴3年程度でデビューした作家が弱小弱小と言い切るのもちょっとどうなのかとも。そのほうが面白いのは分かりますが。
少なくとも知人の大企業は公取委にとんでもない煮え湯を飲まされましたので、漏れ伝わってくる話を聞いていると大した権力がないとはとても言えなさそうであります(笑)だいたい、検査忌避なんて到底無理です。
以上、外野の野暮なツッコミはこれくらいにしましょう。重厚な推理小説とは言えませんが、夏の陽気のスキマ時間に読むにはぴったりの「さわやか薄味」小説です。
続編が書けそうな終わり方ですし、今後の白熊ちゃんと小勝負くんに期待します!
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弱くても戦え! 『元彼の遺言状』著者、注目の新鋭が放つ面白さ最高の「公取委」ミステリー。
ウェディング業界を巣食う談合、下請けいじめ、立入検査拒否。市場の独り占めを取り締まる公正取引委員会を舞台に、凸凹バディが悪を成敗する!
公正取引委員会の審査官、白熊楓は、聴取対象者が自殺した責任を問われ、部署異動に。東大首席・ハーバード大留学帰りのエリート審査官・小勝負勉と同じチームで働くことになった。二人は反発しあいながらも、ウェディング業界の価格カルテル調査に乗り出す。数々の妨害を越えて、市場を支配する巨悪を打ち倒せるか。ノンストップ・エンターテインメント・ミステリー!
「デビュー2年目の勝負作です。わくわくドキドキ、ちょっぴり身につまされ、不思議と力が湧いてくる。理屈抜きで面白い王道エンターテインメントを目指して書きました。エンタメの幕の内弁当、どうぞ召し上がれ!」―新川帆立
ウェディング業界を巣食う談合、下請けいじめ、立入検査拒否。市場の独り占めを取り締まる公正取引委員会を舞台に、凸凹バディが悪を成敗する!
公正取引委員会の審査官、白熊楓は、聴取対象者が自殺した責任を問われ、部署異動に。東大首席・ハーバード大留学帰りのエリート審査官・小勝負勉と同じチームで働くことになった。二人は反発しあいながらも、ウェディング業界の価格カルテル調査に乗り出す。数々の妨害を越えて、市場を支配する巨悪を打ち倒せるか。ノンストップ・エンターテインメント・ミステリー!
「デビュー2年目の勝負作です。わくわくドキドキ、ちょっぴり身につまされ、不思議と力が湧いてくる。理屈抜きで面白い王道エンターテインメントを目指して書きました。エンタメの幕の内弁当、どうぞ召し上がれ!」―新川帆立
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2022/5/11
- ファイルサイズ2962 KB
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商品の説明
著者について
新川 帆立
(しんかわ・ほたて)1991年アメリカ合衆国テキサス州ダラス生まれ。宮崎県宮崎市育ち。東京大学法学部卒業、同法科大学院修了後、弁護士として勤務。第19回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、2021年『元彼の遺言状』でデビュー。最新刊は『剣持麗子のワンナイト推理』。
(しんかわ・ほたて)1991年アメリカ合衆国テキサス州ダラス生まれ。宮崎県宮崎市育ち。東京大学法学部卒業、同法科大学院修了後、弁護士として勤務。第19回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、2021年『元彼の遺言状』でデビュー。最新刊は『剣持麗子のワンナイト推理』。
登録情報
- ASIN : B09YR7B4H6
- 出版社 : 講談社 (2022/5/11)
- 発売日 : 2022/5/11
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 2962 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効
- Word Wise : 有効にされていません
- 付箋メモ : Kindle Scribeで
- 本の長さ : 345ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 69,924位Kindleストア (Kindleストアの売れ筋ランキングを見る)
- - 3,881位投資・金融・会社経営 (Kindleストア)
- - 6,934位投資・金融・会社経営 (本)
- - 7,406位日本の小説・文芸
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著者について
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2022年6月4日に日本でレビュー済み
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2023年4月29日に日本でレビュー済み
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主人公の白熊さんは、キャラは平凡で、魅力も平凡なので、この人が主人公の続編は読まないかな。
準主人公の小勝負さんは、結構キャラ立ちしていて、少し魅力的なので、この人が主人公の続編があれば、読もうかな。
著者の女性弁護士が主人公の他の本は、主人公のキャラ設定、ストーリーのスピード感などとても面白かったが、この本のストーリーはややもっさりとしていて、色恋話もなんか不要な感じです。
準主人公の小勝負さんは、結構キャラ立ちしていて、少し魅力的なので、この人が主人公の続編があれば、読もうかな。
著者の女性弁護士が主人公の他の本は、主人公のキャラ設定、ストーリーのスピード感などとても面白かったが、この本のストーリーはややもっさりとしていて、色恋話もなんか不要な感じです。
2022年6月23日に日本でレビュー済み
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主要取引先の取引条件が厳しすぎて色々試行錯誤中の身としては、公正取引委員会の抱える背景や立ち入り調査が発動するロジックが物語を通して良く分かり大変勉強になりました。
弱い立場にある中小零細企業は波風立てないよう親事業者の偏った要求に応じがちですが、毅然として向き合うことが大事だと勇気をもらえました。
教材としても活用できる良書です。
弱い立場にある中小零細企業は波風立てないよう親事業者の偏った要求に応じがちですが、毅然として向き合うことが大事だと勇気をもらえました。
教材としても活用できる良書です。
2022年5月17日に日本でレビュー済み
面白かった。続編も期待します。
2023年6月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
公正取引委員会の仕事は、日常生活では縁がないが、その概要の一部が分かった。
白熊楓と小勝負の会話が、面白い。
白熊楓と小勝負の会話が、面白い。
2022年6月13日に日本でレビュー済み
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来月からテレビ化され、主役を演じる女優がイメージぴったりで、それを頭に入れて読むとすごく実感が湧きます。でもストーリーとしては、ダイナミクスにかけます。でも考えてみれば、もともと公正取引委員会は凄く地味な仕事で、著者がむしろ頑張ってここまで盛り上げてくれたのかもしれません。公正取引委員会には良いPRになるでしょう。
2022年7月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
しませんか?と言うきらいが無くは無いけど、まー、面白かったな。