これまでインド政府のチーフエコノミスト、世界銀行の副総裁兼チーフエコノミストをされてきたインド出身の経済学者バズーの書籍になります。
ターゲットとしている読者層はこれまで経済学のバックグラウンドがある人、またはない方でも対象にしておりますが前者の方は基礎的な経済分析を説明したパートは飛ばして読めます。筆者は各人が自分達のもっているアイデンティティ、規範や文化に従おうとすると、自身が犠牲となったり、利益を諦めたりと時には自身の効用を高めるというミクロ経済学での基礎となる効用最大化問題が実際には当てはまらない場合も多いと言います。もちろん筆者は経済分析自体の必要性をながら議論も進めており、経済学者から見た側面、またバスーが一市民としての視点を持ち合わせている文章が一貫して見受けられます。
特に最後の3つの章（第8章 貧困、不平等、グローバル化、第9章 グローバル化と民主主義の後退、 第10章 何をなすべきか？）は早急の課題、それの解決案について書かれており、モノもカネもヒトも動く世の中で政策に写るのは決して容易なことではありません。国々の発展のスピード、現時点での段階、各国が利用できるルールの相違、それらのチューニングになる世界政府のような統治機関よりも筆者はまずは各国の経済政策をより上手く調整する能力が必要と説きます。
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