歴史が複層的に構成される。
1973年に、四人のパブロが死んだ。画家、音楽家、詩人だった。
1973年4月8日没、パブロピカソ。内戦状態にあったスペインで、反政府側のフランコ軍を支援するナチス・ドイツ軍がスペイン北部バスク地方の町ゲルニカを無差別爆撃する。それに対して、ピカソは戦争反対の立場を取り、1937年にゲルニカを描いた。戦争に強い怒りを示す。
1973年7月12日没、パブロネルーダ。バスク系チリ人の家庭に生まれる。詩人であり外交官。1971年にノーベル文学賞。アジェンデ大統領のもとで、駐フランス大使をする。
1973年10月22日没。パブロ・カザルス。スペイン、カタロニア生まれで、カタロニア民謡『鳥の歌』をチェリストとしてひく。強く戦争に反対し、世界平和を求める。
1973年11月3日に死んだ。画家パブロ・ロペス。南スペインのグラナダに生まれた。グラナダで絵を描き続け、素朴な庶民の生活やジプシーたちの肖像を描き続けた。
4人のパブロは、ファシストたちに抵抗したのだった。スペインで、そしてチリで。
1970年に、チリでは大統領選挙によって、マルクス主義者として知られるアジェンデが大統領になった。合法的な社会主義連合政権だった。そして、アメリカの策動により。1973年9月11日軍によるクーデターが起こり、アジェンデは死に、ピノチェットの軍事政権ができた。
その1973年に物語は集約していく。
ヒトラーとゲーリングは、美術品をかき集めていた。ヒトラーは絵は夢の道具だが、ゲーリングにとって絵は夢そのものだった。ゲーリングはパブロロペスの150点もの作品を、収奪し、Uボートで日本に運び、筑豊の炭鉱に隠したのだった。その絵が、美術に造詣の深い、37歳の映画ジャーナリストの江間の目に触れた。なぜ、こんなところにロペスの絵があるのか?
フランス旅行で、美術館の絵を見るツアーの案内人として江間は連れて行ったのが、鳴海望洋。政財界に人脈を持つ、美術愛好家の老人に、パブロロペスの絵があったことを報告すると、その絵を探す仕事を頼まれる。鳴海という老人が不思議な力を持っている。そして、パブロカザルスにもあったという。
パブロロペスの絵以外にも60近い絵があり、それが炭鉱国管事件疑惑の時に使われた。法務次官だった田中角栄も逮捕された。1審では懲役1年6ケ月の判断がなされたが、東京高裁では無罪とされた。田中角栄がここで無罪となったことが、日本の政治にも大きな影響を与えた。ルノアールなどの絵画が、使われた。その時の鑑定をしたのが秋沢敬之助と水田。秋沢は美術史の研究家であり、江間の指導教官だった。秋沢は娘の冴子を、優秀な学生である江間の嫁にと思っていたが、江間はデモで捕まったことにより、退学していた。
日本では、山岳信仰の流れと海人の流れがある。九州最大の霊場、英彦山。中世においては3080坊、10谷、49院を数えた。修験道、山伏たちの総本山。
福島県宗像市にある沖ノ島には、航海の神様として宗像神社があり、それを祀る人たちを宗像海人族として有名である。この氏族は、古代の新羅から平安末期の日宋貿易に至るまで、半島大陸と九州の往来に大きな役割を果たしてきた。その流れを汲むのが、水沼隠志という人物がキイマンとなる。
上巻では、ここまで描かれる。五木寛之の持つエンターテイメントの手腕が、下巻で炸裂する。
やはり、五木寛之の作品の中では、秀作だ。
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戒厳令の夜 上巻 【五木寛之ノベリスク】 Kindle版
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映画雑誌社に勤める江間は、出張時に博多のバーで、「伝説中の幻の絵」といわれるパブロ・ロペスの作品を見かける。なぜここに? 大学で美術史を専攻した江間の血が騒ぐ。江間は福岡の大物国士に相談し、日本への流入経路について探索をはじめる。スペイン内乱にはじまり、ナチスのパリ占領、GHQの日本統治、さらに政界の疑獄事件へとつながっていく手がかり。舞台は筑豊からチリへ。壮大なスケールの歴史ロマン。
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2012/9/28
- ファイルサイズ523 KB
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- 出版社 : 講談社 (2012/9/28)
- 発売日 : 2012/9/28
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 523 KB
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- 本の長さ : 388ページ
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1932年、福岡県生まれ。66年『さらばモスクワ愚連隊』で小説現代新人賞、67年『蒼ざめた馬を見よ』で直木賞、76年『青春の門・筑豊編』ほかで吉川英治文学賞を受賞(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 愛について (ISBN-13:978-4591117514)』が刊行された当時に掲載されていたものです)
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- 2021年6月21日に日本でレビュー済みAmazonで購入色焼けはありましたが、痛みはなく良い状態でした。
- 2013年6月29日に日本でレビュー済みAmazonで購入日本人として一度は読んでおきたい一冊です 最終が一気に進むのは読者それぞれの思いに任されているのでしょう
- 2009年9月3日に日本でレビュー済みAmazonで購入大きなスケールを感じる小説です。
共産主義の敗北、日本民族の成り立ち、戦争、芸術。
大きなテーマの合間を縫って展開される主人公たちのドラマに釘付けになりました。
- 2014年2月23日に日本でレビュー済みAmazonで購入サンカ(漂流の民)について非常に詳しい考察が多いです。
ストーリー事態も面白く、あっという間に読ました。
- 2020年7月3日に日本でレビュー済み日本の古書店で購入しました。高校生の時に読んだのが忘れられなくて、40年以上経って、再読しました。アーティスト、真のアーティストは反体制側であること。美しいものは平和を希求する心から誕生すること。人間が老いるとはどんなことか。ピークがあって、あとは下るだけなのか。という永遠の問いに私達は生きる。五木の最高傑作だと思う。この本を書きあげるために、とても勉強している。二回目に読んでも、また感動しました。4人のパブロがどう生きたのか。是非、読んでほしい作品です。
- 2020年1月10日に日本でレビュー済み・ペダントリーの部分が気になりますが、私はこの小説が五木寛之氏の最高の小説であると思います。時を忘れて読書するという経験をさせてもらいました。
- 2015年11月5日に日本でレビュー済みおそらく今はあまり読まれなくなった、この作家。
理由は明白で書かれた、あるいは作者が生きてきた時代の思想や価値観の影響が著しい作品ばかりだからだろう。
共産主義に対する共感はその挫折も知ってひと通りではないとは言え、副産物として古代日本からの過剰にロマンティックな民俗学を妄想の武器として呼び起こす。
普遍的に物語を読む感覚からすると、ほとんど赤面もののヨタとしか思えない話が次々繰り広げられるし、なんだか超人みたいな人間ばかりが出てきて鼻白む。
ストーリー自体も肝心の〝面白くしどころ〟を避けてるような作り。
まあ、こんな時代もあったんだね、と。
ただ、三人のパブロとかネタとしては良いもの抱えてるので、そこはザンネンな気もする。もっと優れたストーリーテラーが、料理したらなっ、って。
そして、デラシネ(笑)
ほとんどギャグにしかならないよなあ。
ロマンティシズムが小説を書く上で邪魔にしかならないという好例でもあるな。