この映画の「主役」はスーザン・サランドンなのではないか。ポール・ニューマンはmedium(媒介)である。
多くの方が指摘するとおり、ハリーは1966年のハードボイルドの傑作『動く標的』The Moving Targetの私立探偵ルー・ハーパーを想起させる。制作者の頭にも、このことはあったであろうことは想像に難くない。ただ主要な人物がみな、人生の黄昏、twilightを迎えつつある。金への渇望、生々しい欲望はここにはない。3大俳優が出演しているにもかかわらず、その地味さゆえか、制作当時(1998年)日本公開されなかった。ソフト化に際し、「葬られた過去」と副題がつけられた。本映画でも多くのハードボイルドの構成要素である、過去の亡霊、男女の愛、寡黙な友情、富者と貧者などが静かに静謐に流れている。確かに地味で、弱い部分もあるが、老い、それでも消えぬ愛など、人生の滋味が感じられる佳品だ。
元警官であり元私立探偵であるハリー・・ロス(ニューマン)は、訳あって2年前から元ハリウッドの大スター夫婦、ジャック・エイムス(ジーン・ハックマン)、キャサリン・エイムス(スーザン・サランドン)の下に身を寄せている。キャサリンに好意を抱いていて、ジャックはそれを知りつつ、ハリーとは友情で結ばれている。まずこの三人の関係が不思議な距離感を保っていて興味深い。ハリーはいわば「居候」であり、ポーカーの相手をしたり、機械を直したり探偵稼業から離れて「使用人」のような生活を送っている。一見、事件をタフにさばいていく探偵のかつてのキレは見られず、「かわいそうな人」扱いなのである。(事件が進むにつれ、かつての手腕が衰えていないことが描かれるのだが)。ジャックは病で余命1年。彼はある者に現金を届けるよう、ハリーに極秘で依頼する。エイムス夫妻は20年前に葬ったはずの過去の亡霊を怖れているようなのである。
いわゆるハードボイルド作品において、探偵はcatalyst(触媒)、あるいはmedium(媒介・媒体)の役割を果たすことが多い。
登場人物の思惑や欲望、愛情に化学反応を起こし、物語を前へ前へと進め、着地させる。極論すれば、物語の中心は探偵ではなく、謎ときでもなく、そのような思惑をもつ人々とその感情。本作でも、鑑賞後に余韻を残すのは、エイムス夫妻(特にサランドンふんするキャサリン)のお互いへの愛情である。あまりにも深く、どこか俗人離れした夫婦の愛情は、多くの者を不幸にしていく。
★以下、次の★まで核心に触れています。ご注意ください
キャサリンが夜、ひとりでピアノをつま弾いている。曲は"The very thought of you"
ビリー・ホリディやナット・キング・コールで知られる古いスローなラブ・ソングだ。「あなたを思うと 忘れてしまいそうになるの 毎日起こるささいなことも 誰もが考えてることも・・・ただ 空想の世界に暮らしているようね それでもわたしにはそれがすべて・・・」
初見時はピンとこなかったが、この物語の核・原動力はキャサリンの夫への愛ではないか。ラスト近くで、夫婦の娘がハリーに言う。
「パパとママは支え合って生きてるわ。主役を演じながらね。あなたも私もただの脇役ってこと」。キャサリンは自ら手を下しはしなかったが、人にそうするよう仕向けたことをハリーに指摘される。「平気なのか。きみのせいで大勢死んだ」。キャサリンは平然と言う「ジャックが生きていればいい」と。
キャサリンに好意を抱いていたハリーは屋敷を去る。それは夫婦の愛情に入り込むすきがないことを知ったことと、やはりこのような「本性」をもつ女性とはやっていけない、ということであろう。ハリーとしては、この女のために多くの血が(たとえ彼ら自身の欲望のためとはいえ)流れたことが許せないのであろう(ただ、典型的な「ファム・ファタール」としては描かれていない。仕向けたということすらできないかも知れない。ジャックへの愛以外に無頓着になっているのである)。エイムス夫妻がいささか俗人離れしていることをうかがわせるセリフがある。「彼らは自分の手についた血を洗い流すこともできない。それを拭いてやるやつが必要なんだ」と。
"The very thought of you" さらっと2回出てくるこの曲が、この映画の通奏低音といったらいいすぎであろうが、監督の中では意識して使用したに違いない。
先に本作はハリーが主人公ではない、と書いたが一方で屋敷を出るハリーはもはや2年間の「飼い猫」ではなくなった。その意味では、ハリーの自己回復の物語ともいえる。以上、核心部分終わり★
やるせなく、枯れたドラマであるが、一服の清涼剤となっているのが、ストッカード・チャニング(イイ女だなぁ)演じるヴァーナである。ハリーの元同僚で、「みなが狙っていた」女性刑事である。ことあるごとにハリーをかばうのだが、過去に「熱い」こともあったように描かれていて、ハリーにいまだまんざらでもない感情をもっているところが微笑ましい。ラストでOPでのエピソードが活きてくる。終始、twilightな空気に支配されているが、ホッとさせられ、気分よく見終えることができる。
なお、監督のロバート・ベントンに少し触れておきたい。ベントンは『夕陽の群盗』(未見。傑作との評価が高い)でデビュー。以前に『俺たちに明日はない』の脚本を手掛けている。『クレイマー・クレイマー』でアカデミー監督賞・脚本賞受賞。『プレイス・イン・ザ・ハート』で脚本賞受賞。かなり評価が高く隠れファン(?)も多い。丁寧にエピソードを積み、正攻法でドラマを語れる現代では稀有なアメリカ映画の監督である。また脚本家でもあるので、セリフが非常によい。ご高齢だがもう1本頑張って撮って欲しいところである。
「私のこと、愛してる?」との問いに、無言で部屋を去るハリー。キャサリンは誰もいない虚空に向かってつぶやく。「私もよ」。キャサリンにとってハリーの心の声は、yesだったか noだったのか。
The very thought of you. 無条件の愛情は時に悲劇を生む。
トワイライト~葬られた過去~ [DVD]
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フォーマット | 色, ドルビー, ワイドスクリーン, 字幕付き, 吹き替え |
コントリビュータ | ストッカード・チャニング, ジャンカルロ・エスポジート, リース・ウィザースプーン, ロバート・ベントン, スーザン・サランドン, リーヴ・シュレイバー, ポール・ニューマン, ジーン・ハックマン |
稼働時間 | 1 時間 34 分 |
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商品の説明
パラマウントの傑作&名作がお求めやすい価格でリリース!!
スクリーンの伝説ポール・ニューマンが輝かしい出演者を率いて称賛を浴びた、サスペンス満載のスリラー映画。ポール・ニューマン演じるやつれた私立探偵ハリー・ロスは、ハリウッドの夢と策略と隠蔽工作がからんだ、長年未解決の殺人事件に引きずり込まれる。「クレイマー、クレイマー」「ノーバディーズ・フール」のロバート・ベントン監督が再びニューマンと組んだ多層構成の性格劇。低俗で見境なくて、絶望と信頼と裏切りに満ちたハリウッドの住人たちを演じるのは、スーザン・サランドン、ジーン・ハックマン、ジェームズ・ガーナー、ストッカード・チャニング、リース・ウィザースプーン。冒頭からエンディングまで、黄昏にたたずむかのような作品である。
※ジャケット写真、商品仕様などは予告なく変更となる場合がございますのでご了承ください。
登録情報
- 梱包サイズ : 18.03 x 13.76 x 1.48 cm; 83.16 g
- EAN : 4988113760027
- 監督 : ロバート・ベントン
- メディア形式 : 色, ドルビー, ワイドスクリーン, 字幕付き, 吹き替え
- 時間 : 1 時間 34 分
- 発売日 : 2010/3/26
- 出演 : ポール・ニューマン, スーザン・サランドン, ジーン・ハックマン, ストッカード・チャニング, リース・ウィザースプーン
- 販売元 : パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
- ASIN : B003441MXI
- 原産国 : 日本
- ディスク枚数 : 1
- Amazon 売れ筋ランキング: - 19,904位DVD (DVDの売れ筋ランキングを見る)
- - 637位外国のミステリー・サスペンス映画
- - 1,773位外国のドラマ映画
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2014年7月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2016年3月1日に日本でレビュー済み
大好きなハードボイルド映画について書く。
『クレイマー、クレイマー』のロバート・ベントン監督の『トワイライト 葬られた過去』(未公開のDVD)は、オールドファン向けの佳品だ。
冒頭からエンディングまで、黄昏にたたずむかのような作品であるという惹句は大仰過ぎるけれど、見て損はない。
主人公は元警官上がりの探偵で、今はしがない飲んだくれ。
娘と女房がいたが、娘に死なれアル中になるというお決まりな役どころ。
だが、このダメ男がどうにか立ち直り、タバコもやめた。
ファーストシーンではプールサイドで、サングラスに口ひげで、ビールをラッパ飲みしていた。
まあ、ありがちな、いかにも正統派ハードボイルドのキャラクターである。
演じるは、ポール・ニューマンで、これが堪らなく好い。
クールでふてぶてしく不良っぽい。そのわりにストイックで、ちょっぴり哀愁などあって、でもやっぱダメ男。
けれども何故かカッコイイ。
そんな主人公がある日、突然、殺人事件に巻き込まれる。しかも容疑者になる。
遠望のよい高台の豪邸に住む元同僚が、『かわいい女』のフィリップ・マーロウ役や『ロックフォード氏の事件メモ』のジェームス・ガーナーだった。
最近、エリオット・グールドの『ロング・グッドバイ』をDVDで見直した。
深夜にわがままな猫にご飯をねだられて、わざわざカレー風味の缶詰を買いに、スーパーまで車で出かける。設定は’70年代に置き換えられている。
真夜中なのに、若いイカレ女達がベランダで揺れるように踊ったり、ヨガに没入したりていて、ワケワカラン人種がご近所さんである。
そういえば、ポール・ニューマンの『動く標的』でも、冒頭、朝起きるとコーヒーを切らしていて、ゴミ箱から使い古しを拾って、出涸らしのコーヒーを飲むシーンがあった。
これまたうらぶれて、みじめったらしいのだが、そこがカッコよい。
射ちたければ射ったら~というラストのストップモーションも、決まってました。
ロバート・ミッチャムの『さらば愛しき女よ』の評価が圧倒的に高い。なるほど、原作のムードにはぴったりでしょうね。
演出のディックリチャードは写真家出身だから、構図や’40年代の物憂い紫煙渦巻くクラブなどのムード作りはさすがに上手かった。
年令がいってから観たせいだろうが、ロバート・ミッチャムが年取り過ぎだなと思った。
なんかねー、人生に疲れきっちゃった。。。って感じだった。
グルーミーな感じは良く出ていたし、シャーロット・ランプリングの謎の女はいかにもさすがで、絵になっていた。
グールド演じるこちらのマーロウはチェーンスモーカーで、いつも煙草をくわえ、車の前に飛び出したワンちゃんにも心優しい。
だからタフでもないし、すこしマヌケでもあり、哀愁というより、動物を可愛がる善人という感じかなぁ。
これ、当初、オンタイムでロードショーで観た時に、ある意味で原作を徹底的に裏切っているし、ど、どうなんだろうって思った。
面白くはあったが、ハードボイルド映画というには、あまりにルース過ぎるよな~と思った。
再見すると、なるほどルースには違いないが、緩いというか、ゆっくりとまったりと~がいい味になっていた。
時代の流れかもしれないなぁ。
正統派ハードボイルドは『最初に失踪ありき』と書いたのは、小鷹 信光 だったと思う。
『かわいい女』、『ロング・グッドバイ』、『さらば愛しき女よ』も失踪から始まる。
今日の冒頭に、採り上げた『トワイライト 葬られた過去』も御他聞にもれず、失踪がある。
ロスマクドナルドの『ウィチャーリー家の女 』以降の、アメリカ家庭の悲劇というテーマにも近い。
ロスマクの描く私立探偵リューアーチャーは失踪調査のため、事件に介入すると、他者の秘め事を剔抉することになる。アーチャーの介入が家庭の悲劇の引き金になり、やがて家庭の崩壊をもたらす。アーチャーは介入に迷い、病めるアメリカの現実に絶望する。それが’70年初頭のハードボイルド小説だった。
それから20年余、『トワイライト 葬られた過去』では、ラストなど暖かな気分になれた。
う~ん、似たような境遇なのにポール・ニューマンが演じると、MMKでよいなあ。
モテテ、モテテ、困るってえヤツですよ。いいなあ。
NY州の田舎の冬景色が美しかった『ノーバディーズ・フール』(これまたロバート・ベントン監督作品)もそうだったけど、ちょっと世をすねた永遠の不良がよく似合う。人生の盛りを過ぎた独身男の孤影も漂う。
『黄昏』のヘンリー・フォンダも、哀愁があったが、ヘンリー・フォンダの場合、毒気を抜かれて枯淡の境地が侘しかった。まっ、そういう映画なのですが・・・。身につまされてしまった。
やっぱ、少しは不良っぽくないとつまんない。
そういう老境を迎えたいものである。まっ、ムリかもしれませんけれど。。。
不良でなければ生きてゆけない。
エロオヤジでなければ、生きる資格がない。
『クレイマー、クレイマー』のロバート・ベントン監督の『トワイライト 葬られた過去』(未公開のDVD)は、オールドファン向けの佳品だ。
冒頭からエンディングまで、黄昏にたたずむかのような作品であるという惹句は大仰過ぎるけれど、見て損はない。
主人公は元警官上がりの探偵で、今はしがない飲んだくれ。
娘と女房がいたが、娘に死なれアル中になるというお決まりな役どころ。
だが、このダメ男がどうにか立ち直り、タバコもやめた。
ファーストシーンではプールサイドで、サングラスに口ひげで、ビールをラッパ飲みしていた。
まあ、ありがちな、いかにも正統派ハードボイルドのキャラクターである。
演じるは、ポール・ニューマンで、これが堪らなく好い。
クールでふてぶてしく不良っぽい。そのわりにストイックで、ちょっぴり哀愁などあって、でもやっぱダメ男。
けれども何故かカッコイイ。
そんな主人公がある日、突然、殺人事件に巻き込まれる。しかも容疑者になる。
遠望のよい高台の豪邸に住む元同僚が、『かわいい女』のフィリップ・マーロウ役や『ロックフォード氏の事件メモ』のジェームス・ガーナーだった。
最近、エリオット・グールドの『ロング・グッドバイ』をDVDで見直した。
深夜にわがままな猫にご飯をねだられて、わざわざカレー風味の缶詰を買いに、スーパーまで車で出かける。設定は’70年代に置き換えられている。
真夜中なのに、若いイカレ女達がベランダで揺れるように踊ったり、ヨガに没入したりていて、ワケワカラン人種がご近所さんである。
そういえば、ポール・ニューマンの『動く標的』でも、冒頭、朝起きるとコーヒーを切らしていて、ゴミ箱から使い古しを拾って、出涸らしのコーヒーを飲むシーンがあった。
これまたうらぶれて、みじめったらしいのだが、そこがカッコよい。
射ちたければ射ったら~というラストのストップモーションも、決まってました。
ロバート・ミッチャムの『さらば愛しき女よ』の評価が圧倒的に高い。なるほど、原作のムードにはぴったりでしょうね。
演出のディックリチャードは写真家出身だから、構図や’40年代の物憂い紫煙渦巻くクラブなどのムード作りはさすがに上手かった。
年令がいってから観たせいだろうが、ロバート・ミッチャムが年取り過ぎだなと思った。
なんかねー、人生に疲れきっちゃった。。。って感じだった。
グルーミーな感じは良く出ていたし、シャーロット・ランプリングの謎の女はいかにもさすがで、絵になっていた。
グールド演じるこちらのマーロウはチェーンスモーカーで、いつも煙草をくわえ、車の前に飛び出したワンちゃんにも心優しい。
だからタフでもないし、すこしマヌケでもあり、哀愁というより、動物を可愛がる善人という感じかなぁ。
これ、当初、オンタイムでロードショーで観た時に、ある意味で原作を徹底的に裏切っているし、ど、どうなんだろうって思った。
面白くはあったが、ハードボイルド映画というには、あまりにルース過ぎるよな~と思った。
再見すると、なるほどルースには違いないが、緩いというか、ゆっくりとまったりと~がいい味になっていた。
時代の流れかもしれないなぁ。
正統派ハードボイルドは『最初に失踪ありき』と書いたのは、小鷹 信光 だったと思う。
『かわいい女』、『ロング・グッドバイ』、『さらば愛しき女よ』も失踪から始まる。
今日の冒頭に、採り上げた『トワイライト 葬られた過去』も御他聞にもれず、失踪がある。
ロスマクドナルドの『ウィチャーリー家の女 』以降の、アメリカ家庭の悲劇というテーマにも近い。
ロスマクの描く私立探偵リューアーチャーは失踪調査のため、事件に介入すると、他者の秘め事を剔抉することになる。アーチャーの介入が家庭の悲劇の引き金になり、やがて家庭の崩壊をもたらす。アーチャーは介入に迷い、病めるアメリカの現実に絶望する。それが’70年初頭のハードボイルド小説だった。
それから20年余、『トワイライト 葬られた過去』では、ラストなど暖かな気分になれた。
う~ん、似たような境遇なのにポール・ニューマンが演じると、MMKでよいなあ。
モテテ、モテテ、困るってえヤツですよ。いいなあ。
NY州の田舎の冬景色が美しかった『ノーバディーズ・フール』(これまたロバート・ベントン監督作品)もそうだったけど、ちょっと世をすねた永遠の不良がよく似合う。人生の盛りを過ぎた独身男の孤影も漂う。
『黄昏』のヘンリー・フォンダも、哀愁があったが、ヘンリー・フォンダの場合、毒気を抜かれて枯淡の境地が侘しかった。まっ、そういう映画なのですが・・・。身につまされてしまった。
やっぱ、少しは不良っぽくないとつまんない。
そういう老境を迎えたいものである。まっ、ムリかもしれませんけれど。。。
不良でなければ生きてゆけない。
エロオヤジでなければ、生きる資格がない。
2010年6月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「動く標的」(1966)、「新・動く標的」(1975)と続く探偵ハーパーシリーズの血脈がまだ残っていた。時間的に短い作品なので、全2作に比べてミステリー性は低いが、ハーパーの晩年はこんな感じかもと思えば、名優揃いも手伝って、意外に楽しめる作品。リース・ウィザースプーンの役どころは、パメラ・ティフィンと言うよりは、メラニー・グリフィスと言ったところか。彼女は「キューティーブロンド」(2001)で知ったのだが、「ウォーク・ザ・ライン君につづく道」(2005)で大化けして、アカデミー賞主演女優賞に輝く事になるとは思わなかった。1998年のこの作品では、その魅力の開花する少し前の彼女を観る事が出来る。2008年に惜しくも83歳で亡くなったポール・ニューマンは、この時73歳。枯れ始めているとは言え、そこは彼の事。しっかりハードボイルドしていて、嬉しい。ハンフリー・ボガートの探偵は理想だが、居そうな探偵はニューマンの演じる探偵だろう。ちょっとだらしなくて、頼りない感じを持たせるのだが、やはり格好良くハードボイルド。悪役の探偵を演じるジェームズ・ガーナーとの対決も、この手の映画の決まり事をしっかり踏まえてくれていて、泣ける。ダイハードでベレッタ92Fが使われて以来、主人公の使う拳銃も派手になり、やたらドンパチが多くなってしまった。あれでは市街地版の戦争で、ロマンの欠片も無い。たまには良いけれど、やはり、しっかりしたハードボイルド映画を観たいのは、私だけだろうか。痩せ我慢を演じられる役者も、居なくなって久しい...。