経済性や合理性視点の目的やサービスより、まず実際に人々が集まる場所があることが大事だと言い続くけてきた。
しかしこのコロナ禍で数人が集まるのでさえ非難される今日、行政や市民にさせも共感してもらえず、もやもやとした思いを本書が素晴らしく言語化してくれた。
行政はコンパクトシティの掛け声のもと、公共施設の縮小、統廃合を進める(場所だけでなく人員、予算も削減する)。その公共施設は、多数にとって便利な場所に置かれ、少数には利用がしづらいものとなる...
そこで破壊されるのは、孤独をいやし、子どもの人間関係面の成長を促し、社会課題の解決し、災害時の共助の要因となる「社会インフラ」。
原著はコロナ禍前に書かれたものだが、コロナ禍の只中であるからこそ、社会インフラを多数維持することの必要性を再認識した。
取り上げている事例は大小あれど、分断と格差が広がりつつある日本でも参考になる。
図書館をネットで結んでVRボーリング大会なんて日本でもすぐにできそうだ。
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集まる場所が必要だ――孤立を防ぎ、暮らしを守る「開かれた場」の社会学 Kindle版
ここでは、誰にも居場所がある。
高齢者がゲームに熱狂する図書館、
親どうしのつながりを育む学校、
子どもがスポーツを楽しむ警察署…
あらゆる人が受け入れられる「社会的インフラ」では
何が行われ、何が生まれているのか。
1995年のシカゴ熱波で生死を分けた要因に社会的孤立があることを突き止めた著者。
つながりを育み、私たちの暮らしと命を守るには何が必要なのか?
研究を通して見えてきたのは、当たり前にあるものとして見過ごされがちな場、
「社会的インフラ」の絶大な影響力だったーー。
コロナ禍を経験した今こそ、私たちには集まる場所が必要だ。
高齢者がゲームに熱狂する図書館、
親どうしのつながりを育む学校、
子どもがスポーツを楽しむ警察署…
あらゆる人が受け入れられる「社会的インフラ」では
何が行われ、何が生まれているのか。
1995年のシカゴ熱波で生死を分けた要因に社会的孤立があることを突き止めた著者。
つながりを育み、私たちの暮らしと命を守るには何が必要なのか?
研究を通して見えてきたのは、当たり前にあるものとして見過ごされがちな場、
「社会的インフラ」の絶大な影響力だったーー。
コロナ禍を経験した今こそ、私たちには集まる場所が必要だ。
- 言語日本語
- 出版社英治出版
- 発売日2021/12/25
- ファイルサイズ14996 KB
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出版社より
[著者] エリック・クリネンバーグ Eric Klinenberg ニューヨーク大学の社会学教授、パブリック・ナレッジ研究所所長。最初の本「Heat Wave:シカゴでの社会の剖検災害」は、6つの学術賞を受賞。2冊目の著書「空中戦:アメリカのメディアをコントロールするための戦い」は、「良心ある市民のための本」と称賛される(Kirkus)。同書で示した調査結果について米国議会にも報告した。本や学術記事に加えて、ニューヨーカー、ニューヨークタイムズマガジン、フォーチュン、ワシントンポストなどに寄稿多数。
商品の説明
著者について
[著者]
エリック・クリネンバーグ Eric Klinenberg
ニューヨーク大学の社会学教授、パブリック・ナレッジ研究所所長。最初の本「Heat Wave:シカゴでの社会の剖検災害」は、6つの学術賞を受賞。2冊目の著書「空中戦:アメリカのメディアをコントロールするための戦い」は、「良心ある市民のための本」と称賛される(Kirkus)。同書で示した調査結果について米国議会にも報告した。本や学術記事に加えて、ニューヨーカー、ニューヨークタイムズマガジン、フォーチュン、ワシントンポストなどに寄稿多数。
[訳者]
藤原朝子 Tomoko Fujiwara
学習院女子大学非常勤講師。
訳書に『THE LONELY CENTURY』(ダイヤモンド社)、『プラットフォーム革命』『ステレオタイプの科学』(英治出版)など。慶大卒。
エリック・クリネンバーグ Eric Klinenberg
ニューヨーク大学の社会学教授、パブリック・ナレッジ研究所所長。最初の本「Heat Wave:シカゴでの社会の剖検災害」は、6つの学術賞を受賞。2冊目の著書「空中戦:アメリカのメディアをコントロールするための戦い」は、「良心ある市民のための本」と称賛される(Kirkus)。同書で示した調査結果について米国議会にも報告した。本や学術記事に加えて、ニューヨーカー、ニューヨークタイムズマガジン、フォーチュン、ワシントンポストなどに寄稿多数。
[訳者]
藤原朝子 Tomoko Fujiwara
学習院女子大学非常勤講師。
訳書に『THE LONELY CENTURY』(ダイヤモンド社)、『プラットフォーム革命』『ステレオタイプの科学』(英治出版)など。慶大卒。
登録情報
- ASIN : B09N6X5X92
- 出版社 : 英治出版 (2021/12/25)
- 発売日 : 2021/12/25
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 14996 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効にされていません
- Word Wise : 有効にされていません
- 付箋メモ : Kindle Scribeで
- 本の長さ : 322ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 54,959位Kindleストア (Kindleストアの売れ筋ランキングを見る)
- - 36位NGO・NPO (本)
- - 79位NGO・NPO (Kindleストア)
- - 1,310位社会学概論
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2022年8月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
"今、これまでになく必要とされているのは、どのような物理的および社会的インフラが、もっとも人々の役に立ち、もっとも人々の命を守り、支えてくれるかについて、インクルーシブな話しあいをすることだ"2021年邦訳の本書は人々の交流を生む物理的な"場や組織のかたち"を明らかにした良書。
個人的には周りの閉店話やオンライン化を横目に、それでもコロナ禍でリアルな場をあくまで運営し続ける1人として、ヒントを探して本書を手にとりました。
さて、そんな本書は1995年に多数の被害者が発生したシカゴ熱波の原因に、かっての集団生活を支えた社会的な結びつきが失われ、社会的孤立あることをつきとめた著者が、特別な災害時ではなくても、また二極化した現代社会において【民主主義をうまく機能させるためにも】平時における人々の交流を生む物理的、伝統的な場や組織。図書館や学校、遊び場、公園、運動場、プールといった公共施設、教会や市民団体、マーケットやサードプレイスといった『社会的インフラ』こそが【決定的に重要な役割を担っている】ことをアメリカ国内はもちろん、世界中の事例を紹介しながら主張しているわけですが。
個人的には2022年現在、主流となっている【SNSやオンライン上でのコミュニケーション】では言葉も記録され、他者によって変質させられてしまうことも多く。結果、意図せずとも『相互監視社会』になっているのではないか?と危惧し、コロナ禍でも。ただ一緒にいるだけ【非言語コミュニケーション、雑談の場】は大切。と、リアルな場【無料で長居できる】お店を開け続けてきた私としては、本書で紹介される事例、著者の主張するところ(現メタ、旧FBやスタバへのチクリとした非難も含めて)には共感しかなく、勇気づけられる読後感でした。
一方で、私自身は賛否はあってもメタバース『仮想現実』には今のところは可能性を感じ、それこそ【リアルとの対立じゃなくて】物理的、伝統的な場『社会的インフラ』になんらかの制約があって【どうしても集まることができない人々】をカバーする、補完的な役割を果たせるのではないか?と考えているのですが。そういった辺りについては本書では触れられておらず。残念というか著者の意見が聞けたら。と思いました。
コロナ禍で、物理的な場づくりについて色々と思っている人にオススメ。
個人的には周りの閉店話やオンライン化を横目に、それでもコロナ禍でリアルな場をあくまで運営し続ける1人として、ヒントを探して本書を手にとりました。
さて、そんな本書は1995年に多数の被害者が発生したシカゴ熱波の原因に、かっての集団生活を支えた社会的な結びつきが失われ、社会的孤立あることをつきとめた著者が、特別な災害時ではなくても、また二極化した現代社会において【民主主義をうまく機能させるためにも】平時における人々の交流を生む物理的、伝統的な場や組織。図書館や学校、遊び場、公園、運動場、プールといった公共施設、教会や市民団体、マーケットやサードプレイスといった『社会的インフラ』こそが【決定的に重要な役割を担っている】ことをアメリカ国内はもちろん、世界中の事例を紹介しながら主張しているわけですが。
個人的には2022年現在、主流となっている【SNSやオンライン上でのコミュニケーション】では言葉も記録され、他者によって変質させられてしまうことも多く。結果、意図せずとも『相互監視社会』になっているのではないか?と危惧し、コロナ禍でも。ただ一緒にいるだけ【非言語コミュニケーション、雑談の場】は大切。と、リアルな場【無料で長居できる】お店を開け続けてきた私としては、本書で紹介される事例、著者の主張するところ(現メタ、旧FBやスタバへのチクリとした非難も含めて)には共感しかなく、勇気づけられる読後感でした。
一方で、私自身は賛否はあってもメタバース『仮想現実』には今のところは可能性を感じ、それこそ【リアルとの対立じゃなくて】物理的、伝統的な場『社会的インフラ』になんらかの制約があって【どうしても集まることができない人々】をカバーする、補完的な役割を果たせるのではないか?と考えているのですが。そういった辺りについては本書では触れられておらず。残念というか著者の意見が聞けたら。と思いました。
コロナ禍で、物理的な場づくりについて色々と思っている人にオススメ。
2022年1月10日に日本でレビュー済み
この本に興味を持ったのは、改めてリアルに対面する場というものがどういう意味を持つのか考えてみたかったからだ。コロナ禍でこれまで考えてもみなかったスピードで、オンラインのミーティングやリモートワークが自分の働く環境でも進んだ。一方で、リアルの場を通じて行っている事業に関しては大きなマイナスの影響があった。
この本は主にアメリカの国内のことを中心に書かれている。日本とは社会情勢も違う部分もあるが、著者の言いたいことは伝わる。人が集まる場を「社会的インフラ」と呼び、図書館をはじめ集合住宅のデザインや、学校や大学の運営や教育スタイルなど様々な「場」についての役割やあり方に関して多くの事例を用いて論じている。 最後はテクノロジーが「社会的インフラと」となりうるかという点が述べられている。私企業が運営している以上、公共性は後回しになっているということで現状への問題提起がある。
リアルかオンラインかという場の問題は、著者の指す「社会的インフラ」として、誰もが分け隔てなくアクセスでき、受け入れられ利用できる場となっているかどうかということがこの本では重要なテーマとなっていると思う。
個人としての冒頭の興味は、この本によって、オンラインでもリアルでも「場」づくりは、OPENで心理的な安全性が高く協力的な関係を目指したいと思うようになった。そして、リアルの場で行う事業には、単に効率的に商品やサービスを提供するという価値交換の場としてだけではなく、その場を「社会的インフラ」として機能させる改革が必要なのだろう。
この本は主にアメリカの国内のことを中心に書かれている。日本とは社会情勢も違う部分もあるが、著者の言いたいことは伝わる。人が集まる場を「社会的インフラ」と呼び、図書館をはじめ集合住宅のデザインや、学校や大学の運営や教育スタイルなど様々な「場」についての役割やあり方に関して多くの事例を用いて論じている。 最後はテクノロジーが「社会的インフラと」となりうるかという点が述べられている。私企業が運営している以上、公共性は後回しになっているということで現状への問題提起がある。
リアルかオンラインかという場の問題は、著者の指す「社会的インフラ」として、誰もが分け隔てなくアクセスでき、受け入れられ利用できる場となっているかどうかということがこの本では重要なテーマとなっていると思う。
個人としての冒頭の興味は、この本によって、オンラインでもリアルでも「場」づくりは、OPENで心理的な安全性が高く協力的な関係を目指したいと思うようになった。そして、リアルの場で行う事業には、単に効率的に商品やサービスを提供するという価値交換の場としてだけではなく、その場を「社会的インフラ」として機能させる改革が必要なのだろう。
2022年9月21日に日本でレビュー済み
人は孤独であってはならない。「内部の人間」は犯罪を犯す。人が集まるのは文明の本質であり、文明とは人が集まる都市が存在するものである。この考えに何らの異論はありません。その点でこの本のアイデアは素晴らしいものです。ぜひ読むに値します。しかし、今日の SNSとインターネットの発達した高度情報社会、それと共に「国民国家」が意義を失ったグローバリゼーションの世界、更にコロナ禍でソーシャル・ディスタンスを要求される社会で、果たして「集まる」のは「物理的」でなければいけないのか?という疑問があります。Zoom ミーティングなどの可能性は十分にあると思います。人と人とのコミュニケーションの形が変化する中、それでも本質的に重要な事を理解するために、大切な事の書かれた本だと思います。
2022年1月12日に日本でレビュー済み
これは「人が居心地よく感じる公共の場所が必要だ」と単純に主張している本ではない。民主市議や格差、人々のつながりなどへの強い危機感がこの本からは一貫して感じられる。著者は社会的インフラとしての「集まる場」とは図書館や市民農園など「集団生活を条件づける物理的な場」であると位置づけ、シカゴやニューヨークなど、アメリカの事例を中心に紹介しているが「集まる場」がすべてを解決するとも言ってはいない。分断を強めたりする恐れもあるとも指摘している。
本書は、1995年夏のシカゴでの猛暑の話から始まる。私は当時アメリカに住んでいたので、シカゴの熱波のことは覚えている。「経済的・社会的に弱い立場にある人たちは生命の危機にさらされていて大変だろう」と思いながらテレビや新聞での報道を見ていた。私が住んでいたカリフォルニア州サンフランシスコ地域でも異常な高温が続き、冷房がないアパートでは昼間暑くて大変だった。だから「あの夏」のエピソードから始まった本書の世界に、私は最初から引き込まれてしまった。熱波で亡くなった人々がいたシカゴ市内のエリアを著者が実際に訪問し、被害の差は経済的な差だけではなく、社会的インフラも一因だと分析していたのは、大変興味深かった。私の「弱い立場にある人たちは大変だ」という簡単な決めつけは、かえって社会を分断させる危険があると気づかされた。
筆者は、集まる場が「物理的空間」であることと「万人によるアクセスができるオープンで民主主義的な場」であることにこだわっている。その点で、民主主義と平等への筆者の強い想いが感じられた。ソーシャルメディアは社会インフラとよぶには教会などと比べてパワーが足りないと述べ、ソーシャルメディアを運営する企業やその他テクノロジー企業は、民主主義を守りコミュニティの分断を防ぐためには貢献できていないと厳しく批判している。日本語翻訳版しか読んでいないので、原書のニュアンスなどはわからないが、日本語版はとても読みやすかったと感じた。ただ、邦題は、ややポップな印象を与えている気もする。原題の『Palaces for the People: How Social Infrastructure Can Help Fight Inequality, Polarization, and the Decline of Civic Life』の副題の”fight”以下の表現に、本書を貫く社会インフラを構築し維持するために空間と人が必要であることを、場面や場所を変え筆者が説明している気がした。
と、ここまで書いて疑問がわいた。翻訳版の表紙に書かれている英語のタイトルは『Palaces for the People: How To Build a More Equal and United Society』と表記されている。しかし、本を開くと、クレジットのところでは『Palaces for the People: How Social Infrastructure Can Help Fight Inequality, Polarization, and the Decline of Civic Life』となっている。インターネットで検索すると、異なる出版社で日にちはほぼ変わらずにどちらのタイトルでも出版されている。タイトルの日本語訳は『Palaces for the People: How To Build a More Equal and United Society』をベースとしているように見える。原書は両方とも中身は同じなのだろうか。読んだ後で、思わぬところで混乱することとなった。
最後に、本書はもともと2018年に出版されたものではあるが、日本語への序文は2021年8月に執筆されている。コロナ禍で物理的に会えないときに私たちはどのように「集まる場」を作ったり維持したりできるかについても、少しでも言及があるか期待したが、そこはさらっと流された気もする。そこは、私たちひとりひとりが考え試行錯誤して、自分たちなりの「今の時点での解」を見つけていくしかないのかもしれない。
本書は、1995年夏のシカゴでの猛暑の話から始まる。私は当時アメリカに住んでいたので、シカゴの熱波のことは覚えている。「経済的・社会的に弱い立場にある人たちは生命の危機にさらされていて大変だろう」と思いながらテレビや新聞での報道を見ていた。私が住んでいたカリフォルニア州サンフランシスコ地域でも異常な高温が続き、冷房がないアパートでは昼間暑くて大変だった。だから「あの夏」のエピソードから始まった本書の世界に、私は最初から引き込まれてしまった。熱波で亡くなった人々がいたシカゴ市内のエリアを著者が実際に訪問し、被害の差は経済的な差だけではなく、社会的インフラも一因だと分析していたのは、大変興味深かった。私の「弱い立場にある人たちは大変だ」という簡単な決めつけは、かえって社会を分断させる危険があると気づかされた。
筆者は、集まる場が「物理的空間」であることと「万人によるアクセスができるオープンで民主主義的な場」であることにこだわっている。その点で、民主主義と平等への筆者の強い想いが感じられた。ソーシャルメディアは社会インフラとよぶには教会などと比べてパワーが足りないと述べ、ソーシャルメディアを運営する企業やその他テクノロジー企業は、民主主義を守りコミュニティの分断を防ぐためには貢献できていないと厳しく批判している。日本語翻訳版しか読んでいないので、原書のニュアンスなどはわからないが、日本語版はとても読みやすかったと感じた。ただ、邦題は、ややポップな印象を与えている気もする。原題の『Palaces for the People: How Social Infrastructure Can Help Fight Inequality, Polarization, and the Decline of Civic Life』の副題の”fight”以下の表現に、本書を貫く社会インフラを構築し維持するために空間と人が必要であることを、場面や場所を変え筆者が説明している気がした。
と、ここまで書いて疑問がわいた。翻訳版の表紙に書かれている英語のタイトルは『Palaces for the People: How To Build a More Equal and United Society』と表記されている。しかし、本を開くと、クレジットのところでは『Palaces for the People: How Social Infrastructure Can Help Fight Inequality, Polarization, and the Decline of Civic Life』となっている。インターネットで検索すると、異なる出版社で日にちはほぼ変わらずにどちらのタイトルでも出版されている。タイトルの日本語訳は『Palaces for the People: How To Build a More Equal and United Society』をベースとしているように見える。原書は両方とも中身は同じなのだろうか。読んだ後で、思わぬところで混乱することとなった。
最後に、本書はもともと2018年に出版されたものではあるが、日本語への序文は2021年8月に執筆されている。コロナ禍で物理的に会えないときに私たちはどのように「集まる場」を作ったり維持したりできるかについても、少しでも言及があるか期待したが、そこはさらっと流された気もする。そこは、私たちひとりひとりが考え試行錯誤して、自分たちなりの「今の時点での解」を見つけていくしかないのかもしれない。
2022年1月16日に日本でレビュー済み
昨今のコロナ禍に伴い、学校などの社会的インフラの多くがオンラインやハイブリッド型へ飛躍的に進化発展している。一方で、リアル対面でしか紡ぎ出さない「人と人の繋がりの深さ」を改めて考えさせられる。我々オトナには、子供たちの自己形成を促す「場」を提供する責務があり、一人ひとりが出来る範囲で「場づくり」に携わることが、人生を芳醇なものにすることを豊富な事例により感じさせてくれる名著。
2022年1月30日に日本でレビュー済み
真のつながりをつくるためには、物理的環境を共有できる場所、つまり社会的インフラが必要なのだ。と著者は主張する。
社会的インフラの例として、図書館、公共住宅、大学、団体スポーツ、教会などの多くの事例が示されている。
物理的でないオンライン上のつながりやインターネットを利用したソーシャルネットワークサービスには辛口である。
コロナ禍によって物理的な共有のオンラインへのシフトが加速した。
ウィズコロナ、アフターコロナの時代で、豊かな物理的環境とオンライン環境を構築していくためにこの本の主張を理解しておきたい。
社会的インフラの例として、図書館、公共住宅、大学、団体スポーツ、教会などの多くの事例が示されている。
物理的でないオンライン上のつながりやインターネットを利用したソーシャルネットワークサービスには辛口である。
コロナ禍によって物理的な共有のオンラインへのシフトが加速した。
ウィズコロナ、アフターコロナの時代で、豊かな物理的環境とオンライン環境を構築していくためにこの本の主張を理解しておきたい。
2022年3月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本の内容は良いもので、勉強になることもたくさんありました。残念なのは梱包です。表紙は折れ曲がり、帯はビリビリに破れ…。小さな事かもしれませんが、一購入者として開封した際はショックでした。このご時世、忙しいのは分かりますがもう少し本を丁寧に扱って頂けたらと思います。