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中国化する日本 増補版 日中「文明の衝突」一千年史 (文春文庫 よ 35-1) 文庫 – 2014/4/10
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中国が既に千年も前に辿りついた境地に、日本は抗いつつも近づいている。まったく新しい枠組みによって描かれる、新日本史!
- 本の長さ395ページ
- 言語日本語
- 出版社文藝春秋
- 発売日2014/4/10
- ISBN-10416790084X
- ISBN-13978-4167900847
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登録情報
- 出版社 : 文藝春秋 (2014/4/10)
- 発売日 : 2014/4/10
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 395ページ
- ISBN-10 : 416790084X
- ISBN-13 : 978-4167900847
- Amazon 売れ筋ランキング: - 53,268位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
1979年生まれ。東京大学教養学部卒業。同大学院総合文化研究科博士課程修了、博士(学術)。当時の専門は日本近現代史。2007年から15年にかけて地方公立大学准教授として教鞭をとり、重度のうつによる休職をへて17年離職。
歴史学者としての業績に『翻訳の政治学』(岩波書店)、『帝国の残影』(NTT出版)。在職時の講義録に『中国化する日本』(文春文庫)、『日本人はなぜ存在するか』(集英社文庫)。対談形式の共著に『「日本史」の終わり』(PHP文庫。池田信夫氏と)、『日本の起源』(太田出版。東島誠氏と)、『史論の復権』(新潮新書。7名との対論集)。ほか、寄稿した論文集等多数。
2018年に病気の体験を踏まえて現代の反知性主義に新たな光をあてた『知性は死なない』(文藝春秋)を発表し、執筆活動を再開。2020年、斎藤環氏との共著『心を病んだらいけないの?』(新潮選書)で小林秀雄賞。
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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学説の一部を切り取って、著者の主張に全面的に賛同しているかのように読ませるすり替えが目についた。
史論ゆえに仕方ない部分ではあるが、おおざっぱな議論が目についた。
無知蒙昧な世間一般の蒙を啓いてやろうという若気の至りにも似た覇気と、不遇なるがゆえのルサンチマンがどうしても目についてしまう。
そこがもったいない。
60歳すぎて枯れたころに書き直してみたらどうだろうか。
私は2008年2月1日の朝日新聞オピニオン「異議あり」で著者を知りました。
そして10年近く時間が経ってから本著を読みましたが、
中国化と言う言葉の意味合いは理解できます。
そしてそれは歴史の必然なのでしょうか?
「もしも今のコロナ禍が起きていなければ」
歴史に”もしも”は有りませんが、中国国家元首が国賓として日本を訪れていたはずで、
それは著者の言う中国化を進める力になっていたのでしょうか?
それとも、もっと長い時間軸の話になるのでしょうか?
本著の「はじめに」と「おわりに」を読むと、著者がまるで別人のように感じられてしまう。
「これだけ説明しても分からないの?歴史の必然が」
と言いつつも、歴史を説明できない歴史家が、その言い訳に持ち出すという
「国民性」に言及せざるを得ないもどかしさに困惑されているのでしょうか?
申し訳ありませんが、著書の内容よりも著者御自身の方に惹かれてしまいます。
学者ってすごいですね。
朧気ながらそうではないかと思っていたことを、的確に言葉にしてくれています。
今現在の混沌とした状況の中ではこれに活路を掛けるしか無いとさえ思いました。
出来るだけ多くの方々に読んでいただきたい良書です。
・・・
本作は歴史書の顔と日本論の二つの顔を持つと言えますが、そのどちらの切り口も非常に興味深いものだと思います。
歴史書としては「中国化」の概念の導入。
宋代以降の中国にこそ自由主義の形が形成され、皇帝による支配と理念の体現(中華思想・朱子学)および活動の自由というセットを提示。自由主義はこの時すでに完成していると言えます。アメリカで言えば、理念としては「自由」、そしてあとは個人の競争(自由主義)でどうぞと。現代中国は政治としては共産党一党独裁も、経済活動は自由主義。とこのような感じ。政治的に逆らわない限り経済は自由、これぞ自由主義。
中国は隋や唐では皇帝もおり科挙もありましたが彼らは中心ではなく、実質は門閥貴族の支配であったとされます(日本だと平安時代の藤原氏のイメージでしょうか)。この体制は宋代に入り大幅に変化、強力な皇帝と彼に面談(殿試)を受けた科挙合格者(官僚)たちによる独裁支配により権力の掌握が完成します。所謂貴族的既得権益を守るコネ的地域社会を壊し、マーケットでの流動性や才覚を重視した社会が志向されます。
これに対し、日本は反藤原氏としての平家による「中国化」が潰され、鎌倉幕府によるムラ社会化・封建体制が構築、江戸時代にその頂点を見ます。そこでは封建制が利き、褒賞としての土地・地位は固定され、武士は名誉はあるが困窮し、商人は金はあるが名誉がない、農家の次男坊以下は土地ももらえず結婚もできずワーキングプアとして都市へ流れ込む、などの総不満社会であったとします。我々がイメージする江戸文化が咲き誇る素敵な時代、とは全く違いますね。
そのため明治維新は農家や武家の次男三男が中心となり勃興します。筆者はこうした不満分子を「パンクロッカー」に例えています。捨てるものがない向う見ずな不満分子ですね。維新以降、確かに自由な社会になりますが、当時はセーフティーネットもなく、これはこれで別の不満分子も生まれます。不満分子は江戸時代の守られた固定的な社会を志向します。
その後、江戸時代への揺り戻しが社会主義の隆盛とともに現れたり、日本国民という理念に訴える軍国主義・全体主義などを経て先の大戦敗戦終了から現代へと歩を進めます。
この近現代の中途半端な日本社会の特長を筆者は「ブロン」と呼び、江戸的封建社会と自由主義社会の「いいとこどり」の失敗バージョンとします。「わるいところどり」ですね。言ったら、何かあるたびに空気を読めと言われる割に、人が困ると助けもなく自己責任とするような社会でしょうか。
筆者は中国化(自由主義化)は避けられないとしつつも、どのような社会が良いのかについてはハッキリと明言していないように見えます。一つの策としてベーシック・インカムに言及していますが、ねじれた年金制度の着地点としてはありうる案だとは思います。
・・・
改めてですが、こういう作品は好きです。
斬新なアイディアと多くの文献への言及は非常に参考になります。他に読んでみたい本が沢山できました。書き方がシニカルなのが多少気になりますが、歴史をしっかり勉強せえという毒もあるのでしょう。また、歴史に依拠したうえでどういう社会が良いのかを考える議論を喚起したい、という想いもあるようです。
歴史好き、政治好き、議論好き、将来の日本に漠たる不安のある人等々には是非読んでほしい一冊です。私もまた時間をおいて再読したいと思います。非常に知的ドライブ感を感じる作品であると思います。