この本は、刑務所について書かれた本ですが、とても美しい本です。そして、心が洗われるような感動を与えてくれる本です。
日本で最初に作られた美祢社会復帰促進センターで、取り組まれてきた、自らの子どもに絵本を読み、録音して送る、その読み方を受刑者同士が励まし合いながら、ディスカッションしていくという「絵本の読みあい」の絆プログラムの12年間にわたる実践の記録が、美しい本にまとめられています。
一人ひとりの受刑者が一冊の本を選び、その読み合いの中で、自分がどのように読めばいいかを考え、自分で答えを見つけようとする中で、これまで見ないふりをしてきた自分自身の心のありように見つめなおしていく過程が、ドラマを見るようにまとめられています。
選ばれた本には、「おまえうまそうだな」「こすずめのぼうけん」「ちいさなき」など、なるほどとうなづく本から、意外な本も選ばれています。
そして、読み聞かせを見守っている他の受刑者の仲間たちも、ひとりが自分への問いかけを始めると、全員がその問題が自分の課題でもあるように、彼女を見守るようになり、応援するようになると言います。
おなじ、PFI刑務所である島根あさひで取り組まれているアミティ・プログラムは坂上香織監督の「プリズンサークル」という素晴らしい映画にまとめられ、多くの人々に感動を与えましたが、このサークルとよみあいの仲間たちには、指導者はいますが、フラットな関係であり、外部から守られた「サンクチュアリ」としても、共通しています。
本書には、児童文学作家の村中李衣さんの実践記録だけでなく、このプログラムの実施されている美祢社会復帰促進センターで、所長を務め、現在札幌矯正管区の管区長をされている中島学さんによってこのプログラムの意義が考察されています。
中島氏は女性受刑者の多くが被害性を有している加害者であるという特性を持っており、この絵本の読み合いプログラムは、そのような多くの女性受刑者の特性に適していると分析しています。
そして、絆プログラムは当人が無自覚なまま、ある種の自己開示や抱えているさまざまなトラウマからの解放が促進される構造を持っていると分析しています。また、信頼関係が構築され、自分自身がさらけ出される「居場所」が、その場に形成されていることが不可欠であり、そこでは、指導と被指導の関係ではなく、対等で同質な「フラットな関係」が必要なのだといわれます。村中さんの説得力のある実践記録を読み進めたうえで、この分析を読むと、私は、深くうなづくことができました。
この本は、刑務所の中のプログラムについて書かれた本ではありますが、親子関係に葛藤や困難を抱えていても、いなくても、多くの子供を愛する母親に読んでほしい本です。そして、選ばれている絵本の中で、自分ならどの本を選んで我が子に読み聞かせたいかなどと考えながらと、絵本ガイドとして読み進めることも可能です。
刑務所が、みずから受刑者を指導するというより、罪を犯したひとの立ち直りをうながす環境を作り、受刑者の自主的な努力を手伝っていくという受刑者処遇の新しい理念が、現実の基礎を持つものであることをこのような美しい本の形でまとめられたことは奇跡のように感じられます。
プライム無料体験をお試しいただけます
プライム無料体験で、この注文から無料配送特典をご利用いただけます。
非会員 | プライム会員 | |
---|---|---|
通常配送 | ¥410 - ¥450* | 無料 |
お急ぎ便 | ¥510 - ¥550 | |
お届け日時指定便 | ¥510 - ¥650 |
*Amazon.co.jp発送商品の注文額 ¥3,500以上は非会員も無料
無料体験はいつでもキャンセルできます。30日のプライム無料体験をぜひお試しください。
¥1,980¥1,980 税込
発送元: Amazon.co.jp 販売者: Amazon.co.jp
¥1,980¥1,980 税込
発送元: Amazon.co.jp
販売者: Amazon.co.jp
¥1,062¥1,062 税込
配送料 ¥257 6月13日-14日にお届け
発送元: ラハイナ 販売者: ラハイナ
¥1,062¥1,062 税込
配送料 ¥257 6月13日-14日にお届け
発送元: ラハイナ
販売者: ラハイナ
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
女性受刑者とわが子をつなぐ絵本の読みあい 単行本(ソフトカバー) – 2021/6/25
{"desktop_buybox_group_1":[{"displayPrice":"¥1,980","priceAmount":1980.00,"currencySymbol":"¥","integerValue":"1,980","decimalSeparator":null,"fractionalValue":null,"symbolPosition":"left","hasSpace":false,"showFractionalPartIfEmpty":true,"offerListingId":"a3ln8mi43uw5%2FnOTlfHCGe8PmtTA9uCMHVs787d%2BWGgtJLaJ0%2BvUm%2FNuS0rO%2FgfVJUyyRY62FI0EuF3RX6oYVcspvenu7u7DOY3Iav9GsvYKLpHuZ2WTPSjNAwWUKlZSEwARV%2FRaE1M%3D","locale":"ja-JP","buyingOptionType":"NEW","aapiBuyingOptionIndex":0}, {"displayPrice":"¥1,062","priceAmount":1062.00,"currencySymbol":"¥","integerValue":"1,062","decimalSeparator":null,"fractionalValue":null,"symbolPosition":"left","hasSpace":false,"showFractionalPartIfEmpty":true,"offerListingId":"a3ln8mi43uw5%2FnOTlfHCGe8PmtTA9uCMyLYlpukKY5934qjKtpJIbnffhnHVSmiFleqDdZ23bmmRqHidflccSyQ9OYVjEyefKx2fylyTc8%2BLEZ0gBcf2X3I0oW4GEE%2B2REwGoQc9oNnj3aodilHNmtgwFkbnRp9w4Cph%2BaA%2FeqzXT8sdzagD2jVrul5t9Sq1","locale":"ja-JP","buyingOptionType":"USED","aapiBuyingOptionIndex":1}]}
購入オプションとあわせ買い
■内容紹介■
会えないわが子への想いを声にのせて
病棟で児童養護施設で、赤ちゃんからお年寄りまで、場をともにするコミュニケーションを根底に「読みあい」を実践してきた著者が、受刑中の母と子を深くやわらかくつなぐ。
今、誰も排除しない社会への小さなとびらをひらく。
■もくじ■
はじめに 絵本のちから、読みあいの可能性
1章 読みあいを矯正の場に生かす ー絆プログラムの概要
2章 一人でも独りじゃない ー絆プログラム12年間の記録
3章 家族・社会につなぐ海外の試み ー感情が響きあう場づくり
4章 受刑者処遇の未来へ向けて ー絆プログラムの意義と今後の課題
5章 2020年の読みあいから見えてきたもの ー哀しみを得て生きすすむ
あとがき 終わらない道の先に
■著者略歴■
村中 李衣(ムラナカリエ)
1958 年山口県生まれ。児童文学作家、ノートルダム清心女子大学教授。
筑波大学人間学類卒業後、日本女子大学大学院で児童文学を学ぶ。その後、児童文学の創作に携わりつつ、就職先の小児病棟の子どもたちと絵本の読みあいを始める。さらに、読書療法や絵本を介したコミュニケーションの可能性について研究。保育者養成、保育者研修講師のほか、講演・受賞多数。
会えないわが子への想いを声にのせて
病棟で児童養護施設で、赤ちゃんからお年寄りまで、場をともにするコミュニケーションを根底に「読みあい」を実践してきた著者が、受刑中の母と子を深くやわらかくつなぐ。
今、誰も排除しない社会への小さなとびらをひらく。
■もくじ■
はじめに 絵本のちから、読みあいの可能性
1章 読みあいを矯正の場に生かす ー絆プログラムの概要
2章 一人でも独りじゃない ー絆プログラム12年間の記録
3章 家族・社会につなぐ海外の試み ー感情が響きあう場づくり
4章 受刑者処遇の未来へ向けて ー絆プログラムの意義と今後の課題
5章 2020年の読みあいから見えてきたもの ー哀しみを得て生きすすむ
あとがき 終わらない道の先に
■著者略歴■
村中 李衣(ムラナカリエ)
1958 年山口県生まれ。児童文学作家、ノートルダム清心女子大学教授。
筑波大学人間学類卒業後、日本女子大学大学院で児童文学を学ぶ。その後、児童文学の創作に携わりつつ、就職先の小児病棟の子どもたちと絵本の読みあいを始める。さらに、読書療法や絵本を介したコミュニケーションの可能性について研究。保育者養成、保育者研修講師のほか、講演・受賞多数。
- 本の長さ192ページ
- 言語日本語
- 出版社かもがわ出版
- 発売日2021/6/25
- 寸法15 x 1.4 x 21 cm
- ISBN-104780311624
- ISBN-13978-4780311624
よく一緒に購入されている商品
対象商品: 女性受刑者とわが子をつなぐ絵本の読みあい
¥1,980¥1,980
最短で6月10日 月曜日のお届け予定です
残り3点(入荷予定あり)
¥1,650¥1,650
最短で6月10日 月曜日のお届け予定です
残り3点(入荷予定あり)
総額:
当社の価格を見るには、これら商品をカートに追加してください。
ポイントの合計:
pt
もう一度お試しください
追加されました
一緒に購入する商品を選択してください。
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
登録情報
- 出版社 : かもがわ出版 (2021/6/25)
- 発売日 : 2021/6/25
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 192ページ
- ISBN-10 : 4780311624
- ISBN-13 : 978-4780311624
- 寸法 : 15 x 1.4 x 21 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 48,193位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 99位社会福祉関連書籍
- カスタマーレビュー:
カスタマーレビュー
星5つ中4.3つ
5つのうち4.3つ
全体的な星の数と星別のパーセンテージの内訳を計算するにあたり、単純平均は使用されていません。当システムでは、レビューがどの程度新しいか、レビュー担当者がAmazonで購入したかどうかなど、特定の要素をより重視しています。 詳細はこちら
24グローバルレーティング
虚偽のレビューは一切容認しません
私たちの目標は、すべてのレビューを信頼性の高い、有益なものにすることです。だからこそ、私たちはテクノロジーと人間の調査員の両方を活用して、お客様が偽のレビューを見る前にブロックしています。 詳細はこちら
コミュニティガイドラインに違反するAmazonアカウントはブロックされます。また、レビューを購入した出品者をブロックし、そのようなレビューを投稿した当事者に対して法的措置を取ります。 報告方法について学ぶ
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2021年7月3日に日本でレビュー済み
2021年12月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本の読み聞かせということを再認識する意味では、読む価値のある本です。後半の実践部分での受刑者の手紙のいろいろなケースが同じような展開で繰り返しがあります。少し違った視点があったり、うまくいかなかったりする事例が欲しいと思いました。
2021年6月26日に日本でレビュー済み
世界的にみても珍しい官民協働のPFI刑務所での矯正プログラムの実践内容が明らかにされていること
10年以上の実践状況が指導者の参与観察的にまとめられていること
女性受刑者を対象とし、心理改善モデルとは異なる絵本の読みあいという処遇であること
などなど、刑事司法領域から見ても対人支援領域から見ても稀有な取組が明らかにされ、ある種の生きづらさ閉塞感に風穴を開ける一冊ではないでしょうか。
10年以上の実践状況が指導者の参与観察的にまとめられていること
女性受刑者を対象とし、心理改善モデルとは異なる絵本の読みあいという処遇であること
などなど、刑事司法領域から見ても対人支援領域から見ても稀有な取組が明らかにされ、ある種の生きづらさ閉塞感に風穴を開ける一冊ではないでしょうか。
2021年9月2日に日本でレビュー済み
知り合いに、勧められて読みました。期待以上でした。
多くの人に読んで欲しいです。
多くの人に読んで欲しいです。
2021年9月2日に日本でレビュー済み
「受刑者」という言葉が誘う世俗的な興味関心とは無縁のたましいのレッスンがここには綴られています。
この世の中に絶えずおこる過ちや傷つけあいの根底に「他者を信じらずにる私」があること、そしてどんなひとも、今置かれた立場の中で精一杯「他者を愛していいんだ」という事に気づかされます。自分には関係がない、と横を向いていいひとなどいない、と思いました。表紙の女性の絵をよく見ると、姿は見えないわが子に向けて、絵本を差し出している美しいこころが伝わってきます。
この世の中に絶えずおこる過ちや傷つけあいの根底に「他者を信じらずにる私」があること、そしてどんなひとも、今置かれた立場の中で精一杯「他者を愛していいんだ」という事に気づかされます。自分には関係がない、と横を向いていいひとなどいない、と思いました。表紙の女性の絵をよく見ると、姿は見えないわが子に向けて、絵本を差し出している美しいこころが伝わってきます。
2021年9月8日に日本でレビュー済み
絆プログラムに参加している女性受刑者のほぼすべての人が被害者性を抱えた加害者であるという事実に、ハッとさせられ、読み進める気持ちが変わりました。いろんなことを考えさせられる深い一冊でした。
2021年9月1日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
女性受刑者であるという名前がつくから、「普通」と区別がされ、その違いを彼女たちは意識しなければならない。でも、その名前で隠された、見えにくくされてしまった一人ひとりの思いや、今まで歩んできた道に目を向けると、そこにはすべての人があたりまえに抱いている、でも忘れたり、恥ずかしくて紛らわしてしまいがちな「愛したい」「愛してほしい」という思いがありました。表紙には、女性受刑者の文字が杏色で書かれていますが、これは、女性受刑者である前に一人のひとであるということ、一人ひとりに読みあいの物語は生まれ、その一つひとつに意味や価値、学びがあるということを伝えてくれています。女性受刑者と指導者だからこそできた学びあいではなく、そこにいる一人ひとりが自分のこころにあるものを仲間の力を借りてのぞき込んだり、仲間のこころを支える架け橋になったりと、そこにいる一人ひとりがそこにいる一人ひとりのことをかけがえなく思っている、そんな空間や人の中ではぐくまれた学びあいなのではないかと感じました。
ここには、女性受刑者であるからという特別な内容のものは何もありません。一人ひとりのもつ背景や思いの「違い」に焦点をあてるのでなくなく、「違い」を受け止めあい、「同じ」思いを共有できる仲間や空間の中で大切に育まれてきた道が示されているのではないかと思います。このような素敵な「道」の数々を本書に大切につづって下さりありがとうございました。そして、この道はお母さん方だけではなく、子どもと思うように向き合うことができない人、何か違う自分の思いを知りながらも、自分と向き合うことから逃げている人、少しの勇気がほしい人、自分がそこにいることが大切だと気付けずに、自分の生きる価値について悩んでいる人、様々な人に少しの勇気や少しの勇気にのっかるきっかけを与えてくれるものだと思います。
ここには、女性受刑者であるからという特別な内容のものは何もありません。一人ひとりのもつ背景や思いの「違い」に焦点をあてるのでなくなく、「違い」を受け止めあい、「同じ」思いを共有できる仲間や空間の中で大切に育まれてきた道が示されているのではないかと思います。このような素敵な「道」の数々を本書に大切につづって下さりありがとうございました。そして、この道はお母さん方だけではなく、子どもと思うように向き合うことができない人、何か違う自分の思いを知りながらも、自分と向き合うことから逃げている人、少しの勇気がほしい人、自分がそこにいることが大切だと気付けずに、自分の生きる価値について悩んでいる人、様々な人に少しの勇気や少しの勇気にのっかるきっかけを与えてくれるものだと思います。
女性受刑者であるという名前がつくから、「普通」と区別がされ、その違いを彼女たちは意識しなければならない。でも、その名前で隠された、見えにくくされてしまった一人ひとりの思いや、今まで歩んできた道に目を向けると、そこにはすべての人があたりまえに抱いている、でも忘れたり、恥ずかしくて紛らわしてしまいがちな「愛したい」「愛してほしい」という思いがありました。表紙には、女性受刑者の文字が杏色で書かれていますが、これは、女性受刑者である前に一人のひとであるということ、一人ひとりに読みあいの物語は生まれ、その一つひとつに意味や価値、学びがあるということを伝えてくれています。女性受刑者と指導者だからこそできた学びあいではなく、そこにいる一人ひとりが自分のこころにあるものを仲間の力を借りてのぞき込んだり、仲間のこころを支える架け橋になったりと、そこにいる一人ひとりがそこにいる一人ひとりのことをかけがえなく思っている、そんな空間や人の中ではぐくまれた学びあいなのではないかと感じました。
ここには、女性受刑者であるからという特別な内容のものは何もありません。一人ひとりのもつ背景や思いの「違い」に焦点をあてるのでなくなく、「違い」を受け止めあい、「同じ」思いを共有できる仲間や空間の中で大切に育まれてきた道が示されているのではないかと思います。このような素敵な「道」の数々を本書に大切につづって下さりありがとうございました。そして、この道はお母さん方だけではなく、子どもと思うように向き合うことができない人、何か違う自分の思いを知りながらも、自分と向き合うことから逃げている人、少しの勇気がほしい人、自分がそこにいることが大切だと気付けずに、自分の生きる価値について悩んでいる人、様々な人に少しの勇気や少しの勇気にのっかるきっかけを与えてくれるものだと思います。
ここには、女性受刑者であるからという特別な内容のものは何もありません。一人ひとりのもつ背景や思いの「違い」に焦点をあてるのでなくなく、「違い」を受け止めあい、「同じ」思いを共有できる仲間や空間の中で大切に育まれてきた道が示されているのではないかと思います。このような素敵な「道」の数々を本書に大切につづって下さりありがとうございました。そして、この道はお母さん方だけではなく、子どもと思うように向き合うことができない人、何か違う自分の思いを知りながらも、自分と向き合うことから逃げている人、少しの勇気がほしい人、自分がそこにいることが大切だと気付けずに、自分の生きる価値について悩んでいる人、様々な人に少しの勇気や少しの勇気にのっかるきっかけを与えてくれるものだと思います。
このレビューの画像