今も忘れられない創作物というモノが、人にはあると思う
映画だったり音楽、アニメ、マンガ、そしてゲームだったりと、それは人それぞれなモノだ
どうせだったら、僕もアメリカの名作映画に衝撃をうけたり、自虐的なロッカーの自殺報道で肩をがっくり落としたかったが、
なんの因果か神様の嫌がらせなのか、僕にとってはこのゲームがまさにそうだった
「愛の共産化」を謳うラブラブ党きっての実力がある論客の主人公(プレイヤーは口げんかで敵と戦う)は
党首の一人娘と付き合い、党を裏切り、愛を貫く決意をし正義の味方キャプテン・ラヴに変身し、悪に立ち向かう
先に説明すると、このゲームは「馬鹿ゲー」という括りで見られるギャルゲーであり、それについて何も異論は無い
どうみたってイロモノ臭しかしない 僕だってそう思った
だが、「この作品はなにかしらクルな……ッ!」とゲーマーとしての嗅覚がそう告げていた
その実感は電撃プレイステーションで有名ゲームと肩を並んでひな壇(四人体制)でレビューされていたのを見て確信に変わる
(平均点は75点くらいだったような?各レビュアー個人によるお勧めの赤字も記載されていたと思います)
補足として、当時の電撃プレイステーションは「東京魔人學園剣風帖」や「高機動幻想ガンパレードマーチ」など
明らかに売れなそうな名作ゲームを発掘することでたびたび注目されていた
まあ「フロントミッションオルタナティヴ」が酷評されていたこともあったが
当時のあの雑誌には生粋のゲーマー特有の嗅覚というものがありありと感じられることがあったわけだ
発売されて、このゲームは売れたか?というと、ん?って結果だったのはいうまでもないのだが、
僕は予約してダッシュで家でプレイしたわけなのである
まず、アニメムービーはなかなかにウネウネ動く
テーマソングはエンクミ(遠藤久美子)の「好きなら好きっ!」
ノリが良くて大変よろしい
さてゲームの具体的な内容をざっとレビューしよう
このゲームは各話に魅力的なサブヒロインが登場する
要するに、ヒロインとの愛を妨害するヒジョーに魅力的な娘ばかりってわけで、プレイヤーは彼女達を次々と振っていくわけなのだ
ロリっぽい女子高生、クールなバンド娘、天然ボケな保母さん、活発で勝ち気な姉としっかりものの妹の双子、
ヒロインと主人公の大事な親友、どう見ても天使な美青年、敵対組織のボスの不倫相手……
総勢8人の娘(内男性一人)があの手この手で主人公を魅了してくるのだ
スリーサイズが全員ウエスト60台なのもなんだかリアルで、おじさんは、こういうの嫌いじゃない
(隠しヒロイン名義の娘もいるので、ネットで情報は得たほうが良い)
んで、各話冒頭に各ヒロインのモノローグが挿入されるわけだが、
今見てもこの手法は巧いと思う
現代の萌えが一般化したゲーム業界でも、これと同じ表現をしたゲームを見たことがない
この点正直にこのゲームはどこまでもセンスに特化したゲームであると評価できる
そしてプレイヤーが守るヒロインなのだが、なんとエンクミ(遠藤久美子)が演じていたりする
演技についてはうぅぁ……って感じだが、わざわざサブヒロインになびくように指導したのか?と個人的には勘ぐりたい(そういう狙いではなかったらしい)
ちなみにヒロインはワガママで嫉妬深くて寂しがりやで、愛情に餓えてておまけに過去にひねくれたトラウマ持ちだったりと作品中で一番タチが悪い
僕は通しでサブヒロインを全員振ったが、各話毎になびいた人がほとんどらしい まあそりゃそうだ
サブヒロインは寓話的な存在でありえない既存のギャルゲーヒロインであり、実に人間らしい彼女は新しいタイプのヒロイン像だと思う
この観点からもこの作品は一つ進んでおり、いまだ到達できてない領域でもある というか到達する必要も無いのか……?
女の子をフル。泣かす。距離を取られる。男になびく禁断の領域を感じる。裏切る。そして修羅場……!
ハッキリ言って、このゲームほど、「愛」を渾身の馬鹿魂で表現したことは無く正に前人未踏をブッチぎっている
このゲームでしか表現できない分野があるということであり、
ゲームシステム、シナリオからも、おそらくこのゲーム一本でしか今後歴史的にも存在しえないというコトだ
プレイヤーに用意されたシステム環境は、セーブが3つまで、いつでもセーブ無し(細かいパートごとは可能)、画面はPSなので古くさい、など
細かい粗は確認出来るが、けっして不便な環境ではないので、ここでは長所と短所が相殺していると僕は考えている
ただ、欠点ばかりがよく目につく人は一考すべきかもしれない
さて今現在、プリズムコート、どきどきポヤッチオ、PS2ではドラゴンクォーターや、アンリミテッドサガなど、
かつてのメーカーに見られたチャレンジ指向、表現者魂の気概はことゲーム業界において風前の灯火だと、僕は感じる
このゲームが発売された頃は、問題も多かったが独特の熱気に溢れていた
今のゲームはそれが切磋琢磨され、洗練されたかと言うと、僕は疑問を強く感じる
どちらかといえば、失敗を避け、そこからは学ばず、売れるパターンを追究した結果の現れだと実感する次第だ
キャプテン・ラヴが片隅で評価されるのはまあ仕方ないし、創作物というモノは例え光っていても、無視されることが当然ままある
しかし、その失った可能性はやはり無視出来るものではあり得なく、
ゲーム業界が低迷した病理のささやかな原因の一つなのではないか、と僕は思うわけだ
「俺はな……真面目に馬鹿やってんだよッ!」
この台詞は、おそらく開発者の真なる叫び、メッセージだと思う
どこまでも単一方向的で感情に振り回される人間を精一杯のお馬鹿で、的確に表現したその魂を、ピエロの悲しみを僕は忘れない
多分何十年経っても、僕はこの作品をプレイして、そして「やっぱ馬鹿だなー」って笑うのだ
おそらくその心には熱い魂が、目を覚まし、くすぶっているのだろう
やっぱり最後はめでたしめでたしじゃないと、いけないと思うんだよなぁ
それが例え身勝手なふたりだけの世界であった、としても。