「ラジオじゃないと届かない」ということは、反面「なぜ、ラジオだけは届けられるのか」と考えられないか?
本書を読みながら、ラジオに対する著者の熱い思いが伝わってきた。
「結局、ラジオって何なんだ?」
これを問い続けながら番組を作り続ける名プロデューサーの葛藤。
確かに我々が扱っているエンタテインメントは、一般の企業が行っている仕事とは異なる部分があるのかもしれない。
感覚的には「エンタメの仕事だからこそ」という部分が確かに存在する気はする。
しかしながら、それが何かと問われると、明確に答えられない自分がいる。
前述の「ラジオとは何か?」だけでも、考えだすと深いのである。
結局、そんな夢のような、陽炎のような、あやふやな部分を追い求めているのが我々なのかもしれない。
だからこそ、日々葛藤を繰り返しているのかもしれない。
思いが強過ぎることを仕事にするには辛すぎる。
それが嫌で職場を去って行った人も、少なからず過去には存在する。
一方で、「心底好きだから続けられる」のも、また真実だったりする。
本当に不思議なメディアだ。
「なぜラジオだと、リスナーにこんなにも深く刺さるのだろうか?」
色々な考察は過去になされている。
「身近に感じるからだ」とか、「自分だけに話しかけてくれているみたいだから」とか。
「秘密を共有しているみたい」というのも聞いたことがある。
おそらく、そのどれもが正解であるのは間違いない。
そんな理由よりも何よりも、「届けたいからラジオなんだ」という堂々巡りみたいな話の方が、逆に腹にストンと落ちたりする。
この名プロデューサーとパーソナリティの情熱が電波に乗って、リスナーに伝播していく。
なんだか理屈じゃなく、それだけで良いような気がする。
いくら説明したって、ラジオを聞かない人は聞かないし、面白さを伝えても絶対に理解はしてもらえない。
ラジオを聞いてなければ、その面白さを理解しようがないからだ。
色々な制約があるメディアにも関わらず、熱量が1度も2度も高いのがラジオなのか。
最近の殺伐とした社会だからこそ余計に感じてしまう。
結局、我々は温かいところを求めているのではないだろうか。
冷たい部屋に帰りたくないし、冷たい布団で寝たくはない。
冷たい空気の会社で働きたくはないし、冷たい人とは付き合いたくない。
理屈抜きに、ラジオは温かいのだ。
本当になぜか温度を感じるのだ。
ラジオ放送が世の中に誕生して、すでに100年を超えている。
温度を発し続けている限り、このオールドメディアはしぶといし、なかなか廃れないと思う。
この名プロデューサーの情熱の炎は、そんな簡単に消える訳がない。
本書を読んで、単純に仕事への向き合い方についても考えさせられる。
熱量が無いと、自分も働けないし、周囲を巻き込んで協力してもらうことも適わない。
もちろん送り手であるはずのプロデューサーも、周囲の様々な人から熱量を受け取って自分の燃料の一部にしている。
やっぱりラジオって面白い。
ラジオじゃないと届かない理由は、心の中でちゃんと分かっている。
温かかくて心地よいことは、本能が求めているということなのだ。
(2023/4/8)
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ラジオじゃないと届かない (一般書) 単行本(ソフトカバー) – 2023/3/22
宮嵜 守史
(原著)
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【内容紹介】
日常の中に無限にある「楽しみ」の中で、ラジオにしかできないことってなんだろう? TBSラジオ「JUNK」統括プロデューサーのラジオに捧げた25年が詰まった初の書き下ろしエッセイ。ラジオとの出会いから、プロデューサーになるまでのエピソード、人気パーソナリティたちの魅力まで。極楽とんぼ、おぎやはぎ、バナナマン、ハライチ、アルコ&ピース、パンサー向井慧、ヒコロヒーとの読み応え抜群のロング対談も収録。
【本文より抜粋】
世の中から見たらこぢんまりとした業界だけど、聴く人の心をしっかり掴むメディアだ。他ジャンルとの優劣を比較するのではなく、ラジオ独自の個性がどこかにある。ラジオだったからできたこと、ラジオじゃなければ伝わらなかったことが、きっとあるはずだ。
この『ラジオじゃないと届かない』では、エッセイと対談を通してラジオやパーソナリティ自身の魅力を伝えたい。僕がラジオの仕事をしてきた中で得た経験から、ラジオの良さを少しでも伝えられたらと思っています。(「ラジオってなんなんだ?」より)
【目次抜粋】
第1章 ラジオってなんなんだ?
■ラジオを仕事にするしかなかった
■ラジオは素のメディア
第2章 パーソナリティが教えてくれた
■お笑いを仕事に
■雨上がり決死隊べしゃりブリンッ!
対談:極楽とんぼ 加藤浩次・山本圭壱×宮嵜守史
第3章 パーソナリティが育ててくれた
■手本なのに誰もマネできないパーソナリティ 伊集院光さん
■爆笑問題との出会い
■ほっとけない人 山里亮太さん
対談:おぎやはぎ 小木博明・矢作兼×宮嵜守史
対談:バナナマン 設楽統・日村勇紀×宮嵜守史
第4章 パーソナリティが応えてくれた
■2人の放送作家 鈴木工務店とオークラ
■「JUNKってメンバー入れ替えないんですか?」
対談:アルコ&ピース 平子祐希・酒井健太×宮嵜守史
対談:ハライチ 岩井勇気・澤部佑×宮嵜守史
第5章 これまでのラジオ、これからのラジオ
■この20年でラジオが変わらなかったこと
■もしも将来ラジオを作りたいという人がいたら
対談:ヒコロヒー×宮嵜守史
対談:パンサー向井慧×宮嵜守史
■アフタートーク
対談 chelmico鈴木真海子×宮嵜守史
日常の中に無限にある「楽しみ」の中で、ラジオにしかできないことってなんだろう? TBSラジオ「JUNK」統括プロデューサーのラジオに捧げた25年が詰まった初の書き下ろしエッセイ。ラジオとの出会いから、プロデューサーになるまでのエピソード、人気パーソナリティたちの魅力まで。極楽とんぼ、おぎやはぎ、バナナマン、ハライチ、アルコ&ピース、パンサー向井慧、ヒコロヒーとの読み応え抜群のロング対談も収録。
【本文より抜粋】
世の中から見たらこぢんまりとした業界だけど、聴く人の心をしっかり掴むメディアだ。他ジャンルとの優劣を比較するのではなく、ラジオ独自の個性がどこかにある。ラジオだったからできたこと、ラジオじゃなければ伝わらなかったことが、きっとあるはずだ。
この『ラジオじゃないと届かない』では、エッセイと対談を通してラジオやパーソナリティ自身の魅力を伝えたい。僕がラジオの仕事をしてきた中で得た経験から、ラジオの良さを少しでも伝えられたらと思っています。(「ラジオってなんなんだ?」より)
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第1章 ラジオってなんなんだ?
■ラジオを仕事にするしかなかった
■ラジオは素のメディア
第2章 パーソナリティが教えてくれた
■お笑いを仕事に
■雨上がり決死隊べしゃりブリンッ!
対談:極楽とんぼ 加藤浩次・山本圭壱×宮嵜守史
第3章 パーソナリティが育ててくれた
■手本なのに誰もマネできないパーソナリティ 伊集院光さん
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対談:バナナマン 設楽統・日村勇紀×宮嵜守史
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対談:ハライチ 岩井勇気・澤部佑×宮嵜守史
第5章 これまでのラジオ、これからのラジオ
■この20年でラジオが変わらなかったこと
■もしも将来ラジオを作りたいという人がいたら
対談:ヒコロヒー×宮嵜守史
対談:パンサー向井慧×宮嵜守史
■アフタートーク
対談 chelmico鈴木真海子×宮嵜守史
- 本の長さ384ページ
- 言語日本語
- 出版社ポプラ社
- 発売日2023/3/22
- 寸法18.8 x 12.8 x 2.1 cm
- ISBN-104591174832
- ISBN-13978-4591174838
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登録情報
- 出版社 : ポプラ社 (2023/3/22)
- 発売日 : 2023/3/22
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 384ページ
- ISBN-10 : 4591174832
- ISBN-13 : 978-4591174838
- 寸法 : 18.8 x 12.8 x 2.1 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 243,602位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2023年5月29日に日本でレビュー済み
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JUNKは毎曜日聴いているのでとても興味深く読ませていただきました。ラジオ好きは必読です!
2023年5月24日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ラジオが好きな方には全員読んでほしい一冊です。テンション上がります!
2023年4月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
radikoの普及で聴きやすくなった、ラジオ。
タイムフリーでも聴ける。エリアフリーで遠くの場所の放送も聴ける。今までのラジオ、これからのラジオのはなしがいっぱいです。中でも個人的にアルコ&ピースの章が好きでした。
「聴けば、見えてくる」。
タイムフリーでも聴ける。エリアフリーで遠くの場所の放送も聴ける。今までのラジオ、これからのラジオのはなしがいっぱいです。中でも個人的にアルコ&ピースの章が好きでした。
「聴けば、見えてくる」。
2023年12月16日に日本でレビュー済み
テレビやSNSとの関係性、radikoによる効果など、肯定的かつ共存する目線で語られていて、好感が持てます。
パーソナリティとの談話も、一緒にやっていたときに感じたことから、まだ一緒にはやってないけど、パーソナリティと話をしたときに印象に残ったことなど、とても興味深いです。
深夜放送のこれからの聴き方など、とても面白いです。
パーソナリティとの談話も、一緒にやっていたときに感じたことから、まだ一緒にはやってないけど、パーソナリティと話をしたときに印象に残ったことなど、とても興味深いです。
深夜放送のこれからの聴き方など、とても面白いです。
2023年7月5日に日本でレビュー済み
TBSラジオで長年ディレクターとプロデューサーをつとめる宮嵜さんによる自伝的エッセイ。
ラジオとともにあった著者の人生を振り返りつつも、主軸となっているのは「なぜ今でもラジオは聞かれ続けているのか?」という問いだろう。これを自問自答しながら、対談相手の芸人たちにもぶつけ続ける。
著者が仕事の中で経験した話もおもしろい。だが、最も興味深いのがラジオのレギュラーを持っている芸人たちの「なぜラジオ」という問いに対する見解だ。みんな切り口の違う見解を残しており、僕も含めたラジオ好きは思わずうなってしまう。
加えると「なぜラジオ」の「ラジオ」を自分の好きなものに置き換えても、芸人たちの見解はとても参考になる。みなさんは「なぜあなたの好きなものが選ばれ続けていて、あなた自身は選んでいるのだろうか?」と問われて答えられるだろうか。
対談メンバーが非常に豪華だ。極楽とんぼ、おぎやはぎ、バナナマン、アルコ&ピース、ハライチ、ヒコロヒー、向井慧(パンサー)、鈴木真海子(chelmico)。著者が仕事やプライベートの付き合いのある人たちである。
例えば、パンサーの向井さんは「強烈な原体験がある」ことを「なぜラジオ」の理由に挙げていた。「元カノのことは悪く言えないじゃないですか」という独特の表現とともに。この話は、僕がカルチョがずっと好きな理由とまったく同じだと感じた。僕も幼いころから見たセリエAが強烈な原体験だからこそ、浮き沈みがあってもカルチョを愛し続けている。
バナナマンの設楽さんは「ハードが変わっても、ソフトは普遍的。だからラジオはなくならない」というより俯瞰した視点でラジオが生き残る理由を考えていた。「ラジオとは」ではなく「そもそも芸事ってさ」という視座からの語りはものの見方の技術としても勉強になる。
アルコ&ピースの2人は「大人がおちんちんを言える最後の媒体」、「自由すぎる場で自由に振る舞っても品性がない。ラジオという品格のある場でのおちんちんだから価値がある」というこちらも斜め上の切り口で見解を示している。YouTubeなどの比較的自由に配信しやすいメディアでタブーや忖度なしのパフォーマンスが「本当のことを言ってる」を賞賛される現在で、制約がある中ではみ出ようとすることに品と価値を見出す発想はとても素敵だ。
このように著者と芸人たちの対談の中身の濃さはこの本の大きな魅力だ。
他にも著者が仕事で出会った芸能人たちのエピソードも非常にいい。きっと登場する芸能人たちが好きになる。
AD時代、お弁当の発注や飲み会のお酌でミスをした自分に対してフォローだとあからさまに思わせない形でフォローした女優の秋野暢子さんや香坂みゆきさんの話を読むと、そのスマートさと優しさについ僕も2人を好きになってします。
爆笑問題の太田さんの仕事や自らの発言に対する真摯かつ誠実な姿勢は、ますます太田さんが好きになり、尊敬すること間違いない。
このようなエピソードや対談を読むと、きっと登場する誰かのラジオを聴いてみたくなる。僕は向井さんと爆笑問題のラジオを聴き始めた。
ラジオ好きは、登場する人物の番組を聴いたことなくても間違く楽しめる。好きじゃなくても、ずっと「衰退産業」扱いされているラジオが選ばれる理由をこの本で探ることは別の分野でも応用できるはずだ。
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加えると「なぜラジオ」の「ラジオ」を自分の好きなものに置き換えても、芸人たちの見解はとても参考になる。みなさんは「なぜあなたの好きなものが選ばれ続けていて、あなた自身は選んでいるのだろうか?」と問われて答えられるだろうか。
対談メンバーが非常に豪華だ。極楽とんぼ、おぎやはぎ、バナナマン、アルコ&ピース、ハライチ、ヒコロヒー、向井慧(パンサー)、鈴木真海子(chelmico)。著者が仕事やプライベートの付き合いのある人たちである。
例えば、パンサーの向井さんは「強烈な原体験がある」ことを「なぜラジオ」の理由に挙げていた。「元カノのことは悪く言えないじゃないですか」という独特の表現とともに。この話は、僕がカルチョがずっと好きな理由とまったく同じだと感じた。僕も幼いころから見たセリエAが強烈な原体験だからこそ、浮き沈みがあってもカルチョを愛し続けている。
バナナマンの設楽さんは「ハードが変わっても、ソフトは普遍的。だからラジオはなくならない」というより俯瞰した視点でラジオが生き残る理由を考えていた。「ラジオとは」ではなく「そもそも芸事ってさ」という視座からの語りはものの見方の技術としても勉強になる。
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このように著者と芸人たちの対談の中身の濃さはこの本の大きな魅力だ。
他にも著者が仕事で出会った芸能人たちのエピソードも非常にいい。きっと登場する芸能人たちが好きになる。
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このようなエピソードや対談を読むと、きっと登場する誰かのラジオを聴いてみたくなる。僕は向井さんと爆笑問題のラジオを聴き始めた。
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