電子版で購入。kindleアプリで表示される表紙が、申し訳ないのですがあまり魅力的には感じられず、あまり面白くないのだろうと、後回しにしていました。読んでみるととても面白く、本を表紙で判断するものではないなと後悔。
「情動」に限らず、人類の認識や文化の構造について、ある程度科学的な裏付けに基づきつつ、適度に筆者の考えを交えて、論じられています。自分には両者のバランスが適切で、納得しつつ読み進めることができました。意識・認識に関連した書籍は系統的に読んできていますが、奇抜な部分もなく、自分の考えを整理する上でも有益でした。
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情動はこうしてつくられる――脳の隠れた働きと構成主義的情動理論 Kindle版
従来の理論を刷新し、人間の本性の見方に新たなパラダイムをもたらす!
幸福、悲しみ、怖れ、驚き、怒り、嫌悪――「脳は反応するのではなく、予測する」
心理学のみならず多くの学問分野を揺さぶる、自身の《構成主義的情動理論》を解説するとともに、情動の仕組みを知ることで得られる心身の健康の向上から法制度の見直しまで、実践的なアイデアを提案する。
英語圏で14万部、13か国で刊行の話題の書。
情動は〈理性のコントロールが及ばず自動的に引き起こされる反応〉ではない。
〈幸福の神経回路〉などないし、〈怒りのニューロン〉も特定の部位もない。
情動を経験したり知覚したりするためには〈情動概念〉が必要である。
「怖れ」の概念がなければ、怖れを経験することはできない。
「悲しみ」の概念がなければ、他者の悲しみを知覚することはできない。
なぜ情動は自動的に生じていると感じるのか。
理性はどれだけ情動をコントロールできるか。
イヌは情動を経験しているのか。
情動は病気にどのように影響を及ぼすか。
子どもの「心の知能」はどのように高められるのか。
* * *
各界から絶賛!
「感情とその背後にある脳科学を見渡すフィールドガイドの決定版」
――アンジェラ・ダックワース(『やり抜く力 GRIT』著者)
「研究の最前線にきわめて革命的な理論を描き出した」
――ロバート・M. サポルスキー(『サルなりに思い出す事など』著者)
「私の理解を180度ひっくり返した」
――マルコム・グラッドウェル(『天才!』著者)
その他、ポール・ブルーム(『反共感論』著者)、ジョゼフ・ルドゥー(『シナプスが人格をつくる』著者)、ダニエル・L. シャクター(『なぜ、「あれ」が思い出せなくなるのか』著者)ら大御所たちが賛辞を寄せる注目の著者。
* * *
【目次】
序 2000年来の前提
第1章 情動の指標の探求
第2章 情動は構築される
第3章 普遍的な情動という神話
第4章 感情の源泉
第5章 概念、目的、言葉
第6章 脳はどのように情動を作るのか
第7章 社会的現実としての情動
第8章 人間の本性についての新たな見方
第9章 自己の情動を手なずける
第10章 情動と疾病
第11章 情動と法
第12章 うなるイヌは怒っているのか?
第13章 脳から心へ――新たなフロンティア
幸福、悲しみ、怖れ、驚き、怒り、嫌悪――「脳は反応するのではなく、予測する」
心理学のみならず多くの学問分野を揺さぶる、自身の《構成主義的情動理論》を解説するとともに、情動の仕組みを知ることで得られる心身の健康の向上から法制度の見直しまで、実践的なアイデアを提案する。
英語圏で14万部、13か国で刊行の話題の書。
情動は〈理性のコントロールが及ばず自動的に引き起こされる反応〉ではない。
〈幸福の神経回路〉などないし、〈怒りのニューロン〉も特定の部位もない。
情動を経験したり知覚したりするためには〈情動概念〉が必要である。
「怖れ」の概念がなければ、怖れを経験することはできない。
「悲しみ」の概念がなければ、他者の悲しみを知覚することはできない。
なぜ情動は自動的に生じていると感じるのか。
理性はどれだけ情動をコントロールできるか。
イヌは情動を経験しているのか。
情動は病気にどのように影響を及ぼすか。
子どもの「心の知能」はどのように高められるのか。
* * *
各界から絶賛!
「感情とその背後にある脳科学を見渡すフィールドガイドの決定版」
――アンジェラ・ダックワース(『やり抜く力 GRIT』著者)
「研究の最前線にきわめて革命的な理論を描き出した」
――ロバート・M. サポルスキー(『サルなりに思い出す事など』著者)
「私の理解を180度ひっくり返した」
――マルコム・グラッドウェル(『天才!』著者)
その他、ポール・ブルーム(『反共感論』著者)、ジョゼフ・ルドゥー(『シナプスが人格をつくる』著者)、ダニエル・L. シャクター(『なぜ、「あれ」が思い出せなくなるのか』著者)ら大御所たちが賛辞を寄せる注目の著者。
* * *
【目次】
序 2000年来の前提
第1章 情動の指標の探求
第2章 情動は構築される
第3章 普遍的な情動という神話
第4章 感情の源泉
第5章 概念、目的、言葉
第6章 脳はどのように情動を作るのか
第7章 社会的現実としての情動
第8章 人間の本性についての新たな見方
第9章 自己の情動を手なずける
第10章 情動と疾病
第11章 情動と法
第12章 うなるイヌは怒っているのか?
第13章 脳から心へ――新たなフロンティア
- 言語日本語
- 出版社紀伊國屋書店
- 発売日2019/11/22
- ファイルサイズ8833 KB
- 販売: Amazon Services International LLC
- Kindle 電子書籍リーダーFire タブレットKindle 無料読書アプリ
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商品の説明
著者について
【著者】リサ・フェルドマン・バレット(Lisa Feldman Barrett)
米・ノースイースタン大学心理学部特別教授、ハーバード大学医学部マサチューセッツ総合病院研究員。心理学と神経科学の両面から情動を研究しており、その成果は米国議会やFBI、米国立がん研究所などでも活用されている。2007年に米国立衛生研究所の所長パイオニア・アワード、2018年に米国芸術科学アカデミー選出、2019年には神経科学部門のグッゲンハイム・フェローなど、受賞歴多数。
【訳者】高橋 洋(たかはし・ひろし)
翻訳家。訳書にメイヤー『腸と脳』、ドイジ『脳はいかに治癒をもたらすか』、ハイト『社会はなぜ左と右にわかれるのか』(以上、紀伊國屋書店)、カンデル『なぜ脳はアートがわかるのか』(青土社)、ダマシオ『進化の意外な順序』、ブルーム『反共感論』(以上、白揚社)ほか多数。
米・ノースイースタン大学心理学部特別教授、ハーバード大学医学部マサチューセッツ総合病院研究員。心理学と神経科学の両面から情動を研究しており、その成果は米国議会やFBI、米国立がん研究所などでも活用されている。2007年に米国立衛生研究所の所長パイオニア・アワード、2018年に米国芸術科学アカデミー選出、2019年には神経科学部門のグッゲンハイム・フェローなど、受賞歴多数。
【訳者】高橋 洋(たかはし・ひろし)
翻訳家。訳書にメイヤー『腸と脳』、ドイジ『脳はいかに治癒をもたらすか』、ハイト『社会はなぜ左と右にわかれるのか』(以上、紀伊國屋書店)、カンデル『なぜ脳はアートがわかるのか』(青土社)、ダマシオ『進化の意外な順序』、ブルーム『反共感論』(以上、白揚社)ほか多数。
登録情報
- ASIN : B0818XKSQ7
- 出版社 : 紀伊國屋書店 (2019/11/22)
- 発売日 : 2019/11/22
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 8833 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効にされていません
- Word Wise : 有効にされていません
- 付箋メモ : Kindle Scribeで
- 本の長さ : 697ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 142,391位Kindleストア (Kindleストアの売れ筋ランキングを見る)
- - 3,271位心理学 (Kindleストア)
- - 3,693位心理学入門
- - 3,881位心理学の読みもの
- カスタマーレビュー:
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上位レビュー、対象国: 日本
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2022年5月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
仮説である。
ただし、本質主義も仮説のひとつにすぎない可能性があるという視点を提供してくれている。
ただし、本質主義も仮説のひとつにすぎない可能性があるという視点を提供してくれている。
2020年2月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ですが、くどいです。読者を納得させようと必死です。
もう分かったから先に進んで欲しい、と何度も思いました。
同じ内容が表現を変えて何度も出てきます。
無駄が多い気がして、読み進めるのに苦労しました。
もう分かったから先に進んで欲しい、と何度も思いました。
同じ内容が表現を変えて何度も出てきます。
無駄が多い気がして、読み進めるのに苦労しました。
2019年11月20日に日本でレビュー済み
「情動を経験したり知覚したりするには、情動概念が必要とされる。」、これが著者バレット自身がいうところの、本書のもっとも斬新な主張である(p.236)。確かに斬新であるばかりか、脳を媒介として、情動ばかりでなく、人間の本性を解明する革新的な理論の登場である。本書は情動理論として読むべきではなく、脳科学が解き明かした人間の本性論として読むべきである。
1.古典的理論の否定
何が革新的なのか。
・「刺激と反応」理論を否定する(p.185)。私たちは外界の出来事に反応するべく配線された動物ではない(p.254)。
・「いかなる情動概念も普遍的ではない」のだ(p.242)。情動を経験したり知覚したりするには、情動概念が必要とされるとしても、情動のイデアがあったり、情動に限らず概念を持って生まれてくることはない(p.161)。「ずぶ濡れになることに対する恐れは、クマに対する恐れと同じものではない。」というウィリアム・ジェイムズの言葉にあるように、本質的な「恐れ」はどこにもない(p.268)。
・「表情に情動の指標」を見い出すことはできないし、心臓の鼓動や手の震え、涙などの生理的反応を情動の指標とすることもできない(p.161)。
・「理性が情動を抑制している。」これは神話である(p.208)。
バレットの理論以前に似た理論はあったはずだ。ジェームズ=ランゲ説とソマティック・マーカー仮説はバレット理論に似ている。ただ、バレット自身はこれらの理論を評価してはいない(p.268)。脳科学が今ほど発展していなかった時のものなので無理もないかもしれないが、バレットは最近の脳科学の業績を大いに活用している。
また、バレットは決して観念論をいっているのではない。「脳は遺伝子によって、物理環境や社会環境に応じて配線する能力を与えられている。p.187」、「外界から入ってくる感覚刺激は、乳児が持つ世界のモデルの内部で概念になる。外部のものが内部のものになるのだ。p.193」、「情動は頭のなかにだけ存在すると言いたいわけでもない。p.234」などとあるように、常に外の世界が想定されている。
2.理論の要約
要約的説明は随所にあるのだが、それだけで理論の全容を理解することは難しい。そのなかでも、p.595の注12は比較的分かりやすかった。「一つの概念は、物理的には異なりうるが、特定の目的に照らして類似するものとして扱われる複数のインスタンスから構成される。社会的リアリティにおいては、その目的とは、インスタンスの物理的な本性を超えて、人々が(インスタンスに)課す一連の機能を意味する。(つまり人々はインスタンスを、物理的な差異に関わりなく、心的に類似したものとして扱う。)」とあり、類似したインスタンスによって概念が構成されていること、インスタンスは目的に合った機能を提供することが分かる。
「目下の状況にもっとも近似するシミュレーションが勝ち、それが経験になる。また、勝利したシミュレーションが情動概念のインスタンスであった場合、この経験は情動経験になる。p.251」も重要である。シミュレーションとは概念のインスタンスのことである。
概念を獲得する説明には「統計的学習」が援用され、勝者の選択には「コントロールネットワーク」が持ち出される。これらの説明は省略するが、広く他の有力な理論を引用することで、バレットの構成主義的情動理論は強化されている。
3.心的事象の一般原理
「人は概念を用いて分類し、内受容刺激や五感から意味を作り出している.....本書の目的は、分類することで私たちが経験する知覚、思考、記憶などのあらゆる心的事象が構築されるという点を示すことにある。p.149」とあり、「概念として組織化された過去の経験を用いて自己の行動を導き、感覚刺激に意味を与えているのだ。私は、この手法を分類と呼んできた。だがそれは科学では、経験、知覚、概念化、パターン完成、知覚的推論、記憶、シミュレーション、注意、道徳性、心的推論など、さまざまな名称で呼ばれている。....この種の用語は、....異なる現象として研究することが多い。しかし実際には、すべて同一の神経プロセスを介して生じるのだ。p.211」とある。ようするに、心的出来事のほとんどは情動と同じ推論のプロセスだということだ。
勝手ながらバレットの構成主義的情動理論を構成主義的推論理論と言い換えられると考える。だとすれば、下記の①②③もバレットの理論の守備範囲に入ろう。
①倫理の情動主義
倫理学の分野で情緒主義(emotivism、情動主義とも訳される)と呼ばれる立場がある。情緒主義はA・J・エイヤーやC・L・スティーヴンソンらの立場をいう。道徳判断は信念ではなく一種の感情の表現であり、あるいはそうした表現を通して相手の感情に訴えかけるための道具であるとする。倫理学にもバレット理論(構成主義的推論理論)が適用できそうだ。
②ゴッフマンのフレーム分析
社会学者のアーヴィング・ゴッフマンのフレーム・アナリシスは構成主義的推論理論で説明できそうだ。脳科学者ジョージ・ブザキ教授の研究によると、脳内の海馬は空間情報を処理する自動車のナビゲーションのようなもので、いま頭はどちらを向いているのかを示す頭方位細胞(head-direction cell)、周囲の環境を格子に区切って対象がどの格子にあるのかを判断する格子細胞(grid cell)、特定のどの場所にいるのかを教える場所細胞(place cell)があるそうだ。このように空間の探索に海馬が利用されている。自然環境のフレームワークの一つといえよう。
このフレームワークが社会環境に応用されて、いろいろな社会的場面のフレームがつくられていくとするのがフレーム・アナリシスの発想である。そう推測させるのは、海馬がこの機能を記憶の探索にも使っているからだ。社会的場面は記憶によって構成される。構成された社会的フレーム(バレットなら概念)を切り替えて、グレゴリー・ベイトソンのイルカが「新しい演技の訓練」というフレームから、「新しい演技の披露という遊び」のフレームに移行し、その場のトレーナーとのやり取りの不整合から新しい視点(バレットならインスタンス)を獲得することができるようになる。
こう想定すると、ジャン・ピアジェの「同化」と「調節」を思い出す。物事の認知のためのシェム(あるいはフレームor概念)を物事に当てはめることが「同化」で、うまく当てはまらないときにシェムを変更することが「調節」だ。バレットの理論なら、ピアジェの「同化」と「調節」は、概念やインスタンスの選択に相当する。ピアジェとベイトソンとゴッフマン、そしてバレットは同じことをいっているように思える。ピアジェは子どもの発達過程で、ベイトソンはダブルバインド状況でのメタ・コミュニケーションで、ゴッフマンは日常会話で、バレットは脳の神経プロセスで。
③ヴィゴツキーの発達の最近接領域
ロシアの心理学者レフ・セミョノヴィチ・ヴィゴツキーの「発達の最近接領域」とは、子どもたちの能力発揮の場であり、いままで子どもだけでは示し得なかった能力が大人や仲間の助けを借りて現実のものとなることである。また「発達の最近接領域」では、経験を踏まえた豊かではあるがときどき間違っている知識を、教育者によって系統的で科学的なそれに導く評価の場であり、教育の場である。そして、「今日二人でできることは、明日は一人でできる。」という言葉を残している。
バレットの場合、「乳児の概念の形成は言葉によって促されるが、それは、おとなが〈みて、あれは花だよ〉などと、伝達の意図を示しながら話す場合に限られる」という仮説を提唱する論文(Waxman & Markow 1995)を紹介している(p.166)。これは「発達の最近接領域」の乳児版といえる。
以上、本書は脳科学の成果を利用した自由の宣言とも思える。私たちは感覚入力を予測し、概念やインスタンスを構築し、行動を選択する。その意味で人は自由である。自由がなければ、この不確実な世界を生き抜くことはできないだろう。私たちは脳に操られるロボットではないのだ。
1.古典的理論の否定
何が革新的なのか。
・「刺激と反応」理論を否定する(p.185)。私たちは外界の出来事に反応するべく配線された動物ではない(p.254)。
・「いかなる情動概念も普遍的ではない」のだ(p.242)。情動を経験したり知覚したりするには、情動概念が必要とされるとしても、情動のイデアがあったり、情動に限らず概念を持って生まれてくることはない(p.161)。「ずぶ濡れになることに対する恐れは、クマに対する恐れと同じものではない。」というウィリアム・ジェイムズの言葉にあるように、本質的な「恐れ」はどこにもない(p.268)。
・「表情に情動の指標」を見い出すことはできないし、心臓の鼓動や手の震え、涙などの生理的反応を情動の指標とすることもできない(p.161)。
・「理性が情動を抑制している。」これは神話である(p.208)。
バレットの理論以前に似た理論はあったはずだ。ジェームズ=ランゲ説とソマティック・マーカー仮説はバレット理論に似ている。ただ、バレット自身はこれらの理論を評価してはいない(p.268)。脳科学が今ほど発展していなかった時のものなので無理もないかもしれないが、バレットは最近の脳科学の業績を大いに活用している。
また、バレットは決して観念論をいっているのではない。「脳は遺伝子によって、物理環境や社会環境に応じて配線する能力を与えられている。p.187」、「外界から入ってくる感覚刺激は、乳児が持つ世界のモデルの内部で概念になる。外部のものが内部のものになるのだ。p.193」、「情動は頭のなかにだけ存在すると言いたいわけでもない。p.234」などとあるように、常に外の世界が想定されている。
2.理論の要約
要約的説明は随所にあるのだが、それだけで理論の全容を理解することは難しい。そのなかでも、p.595の注12は比較的分かりやすかった。「一つの概念は、物理的には異なりうるが、特定の目的に照らして類似するものとして扱われる複数のインスタンスから構成される。社会的リアリティにおいては、その目的とは、インスタンスの物理的な本性を超えて、人々が(インスタンスに)課す一連の機能を意味する。(つまり人々はインスタンスを、物理的な差異に関わりなく、心的に類似したものとして扱う。)」とあり、類似したインスタンスによって概念が構成されていること、インスタンスは目的に合った機能を提供することが分かる。
「目下の状況にもっとも近似するシミュレーションが勝ち、それが経験になる。また、勝利したシミュレーションが情動概念のインスタンスであった場合、この経験は情動経験になる。p.251」も重要である。シミュレーションとは概念のインスタンスのことである。
概念を獲得する説明には「統計的学習」が援用され、勝者の選択には「コントロールネットワーク」が持ち出される。これらの説明は省略するが、広く他の有力な理論を引用することで、バレットの構成主義的情動理論は強化されている。
3.心的事象の一般原理
「人は概念を用いて分類し、内受容刺激や五感から意味を作り出している.....本書の目的は、分類することで私たちが経験する知覚、思考、記憶などのあらゆる心的事象が構築されるという点を示すことにある。p.149」とあり、「概念として組織化された過去の経験を用いて自己の行動を導き、感覚刺激に意味を与えているのだ。私は、この手法を分類と呼んできた。だがそれは科学では、経験、知覚、概念化、パターン完成、知覚的推論、記憶、シミュレーション、注意、道徳性、心的推論など、さまざまな名称で呼ばれている。....この種の用語は、....異なる現象として研究することが多い。しかし実際には、すべて同一の神経プロセスを介して生じるのだ。p.211」とある。ようするに、心的出来事のほとんどは情動と同じ推論のプロセスだということだ。
勝手ながらバレットの構成主義的情動理論を構成主義的推論理論と言い換えられると考える。だとすれば、下記の①②③もバレットの理論の守備範囲に入ろう。
①倫理の情動主義
倫理学の分野で情緒主義(emotivism、情動主義とも訳される)と呼ばれる立場がある。情緒主義はA・J・エイヤーやC・L・スティーヴンソンらの立場をいう。道徳判断は信念ではなく一種の感情の表現であり、あるいはそうした表現を通して相手の感情に訴えかけるための道具であるとする。倫理学にもバレット理論(構成主義的推論理論)が適用できそうだ。
②ゴッフマンのフレーム分析
社会学者のアーヴィング・ゴッフマンのフレーム・アナリシスは構成主義的推論理論で説明できそうだ。脳科学者ジョージ・ブザキ教授の研究によると、脳内の海馬は空間情報を処理する自動車のナビゲーションのようなもので、いま頭はどちらを向いているのかを示す頭方位細胞(head-direction cell)、周囲の環境を格子に区切って対象がどの格子にあるのかを判断する格子細胞(grid cell)、特定のどの場所にいるのかを教える場所細胞(place cell)があるそうだ。このように空間の探索に海馬が利用されている。自然環境のフレームワークの一つといえよう。
このフレームワークが社会環境に応用されて、いろいろな社会的場面のフレームがつくられていくとするのがフレーム・アナリシスの発想である。そう推測させるのは、海馬がこの機能を記憶の探索にも使っているからだ。社会的場面は記憶によって構成される。構成された社会的フレーム(バレットなら概念)を切り替えて、グレゴリー・ベイトソンのイルカが「新しい演技の訓練」というフレームから、「新しい演技の披露という遊び」のフレームに移行し、その場のトレーナーとのやり取りの不整合から新しい視点(バレットならインスタンス)を獲得することができるようになる。
こう想定すると、ジャン・ピアジェの「同化」と「調節」を思い出す。物事の認知のためのシェム(あるいはフレームor概念)を物事に当てはめることが「同化」で、うまく当てはまらないときにシェムを変更することが「調節」だ。バレットの理論なら、ピアジェの「同化」と「調節」は、概念やインスタンスの選択に相当する。ピアジェとベイトソンとゴッフマン、そしてバレットは同じことをいっているように思える。ピアジェは子どもの発達過程で、ベイトソンはダブルバインド状況でのメタ・コミュニケーションで、ゴッフマンは日常会話で、バレットは脳の神経プロセスで。
③ヴィゴツキーの発達の最近接領域
ロシアの心理学者レフ・セミョノヴィチ・ヴィゴツキーの「発達の最近接領域」とは、子どもたちの能力発揮の場であり、いままで子どもだけでは示し得なかった能力が大人や仲間の助けを借りて現実のものとなることである。また「発達の最近接領域」では、経験を踏まえた豊かではあるがときどき間違っている知識を、教育者によって系統的で科学的なそれに導く評価の場であり、教育の場である。そして、「今日二人でできることは、明日は一人でできる。」という言葉を残している。
バレットの場合、「乳児の概念の形成は言葉によって促されるが、それは、おとなが〈みて、あれは花だよ〉などと、伝達の意図を示しながら話す場合に限られる」という仮説を提唱する論文(Waxman & Markow 1995)を紹介している(p.166)。これは「発達の最近接領域」の乳児版といえる。
以上、本書は脳科学の成果を利用した自由の宣言とも思える。私たちは感覚入力を予測し、概念やインスタンスを構築し、行動を選択する。その意味で人は自由である。自由がなければ、この不確実な世界を生き抜くことはできないだろう。私たちは脳に操られるロボットではないのだ。
2020年1月4日に日本でレビュー済み
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でもiOSではダウンロードできません。
=
修正(2020年1月17日)
ダウンロード出来ました。
=
修正(2020年1月17日)
ダウンロード出来ました。
2019年12月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
内容は良いのに残念すぎる → GJ!
2020年4月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
繰り返しが多く時間の無駄に感じた。要点をまとめれば10分の1の容量になる。
1万分の1にまとめると、情動は脳の予測から生じる。脳のある特定の場所から生じるのでは無い。
予測が外れるから人生は退屈では無い。
以上
1万分の1にまとめると、情動は脳の予測から生じる。脳のある特定の場所から生じるのでは無い。
予測が外れるから人生は退屈では無い。
以上
2023年6月8日に日本でレビュー済み
なぜか「アイドル」の歌詞を思い出してしまった。
私が考えるから私が存在する。
目に見えているもの、感じているものは全て己の妄想(予測)すぎない
この構成主義情動理論を用いれば古典的情動理論がなぜ流行っていたのかすら解釈できる。そう思い込ませているから嘘がいつか本当になってしまう。
しかしバレットはそうさせなかった。
まるでニュートンの力学を拡張したアインシュタインの相対論のように美しかった。
くどいと言う人もいるが、神経科学、認知科学、AIを研究する人(学生)にとっては全くくどくなく面白かったと思う。
例えば「概念はどうやって形成するのか」は一見簡単なことかもしれないが、これらの学問では諸説あり、はっきりした答えのない質問です。
私が考えるから私が存在する。
目に見えているもの、感じているものは全て己の妄想(予測)すぎない
この構成主義情動理論を用いれば古典的情動理論がなぜ流行っていたのかすら解釈できる。そう思い込ませているから嘘がいつか本当になってしまう。
しかしバレットはそうさせなかった。
まるでニュートンの力学を拡張したアインシュタインの相対論のように美しかった。
くどいと言う人もいるが、神経科学、認知科学、AIを研究する人(学生)にとっては全くくどくなく面白かったと思う。
例えば「概念はどうやって形成するのか」は一見簡単なことかもしれないが、これらの学問では諸説あり、はっきりした答えのない質問です。