表題作は,著者の SF 作品にはやや珍しく,既知の科学法則の中で実現可能な話なのが良いです.「主人公」の思索にもほとんど飛躍がありません.その意味で,ある種のリアリズムが作品にはあります.今まさにこの宇宙のどこかでこんな探査球が旅をしている,なんてことが,理論上は完全に可能なので,そんな可能性に思いを馳せてしまいます.
やや内輪ネタめいたところもありますが,個人的に偏愛を覚えるのは「捧ぐ緑」です.(ごく狭い)一部界隈の研究者にとっては半ば以上あるあるネタみたいなところがあるので,読みながらにやにやしてしまいました.「ゾウリムシは信仰を持つか」という研究テーマについても,確かに実験に落とそうと思うとそんな感じになるなあと,ふむふむ言いながら読み進めました.
ところが解説へ飛ぶと,「独特の『わからなさ』が立ち上がる」と書かれてしまっています.ややひねくれた見方にはなりますが,「研究の話を正確にしたところで専門外のひとには真面目に受け取ってもらえず,茶飲み話のレベルでおもしろがってもらうのがせいぜいだ」という,短編冒頭の愚痴が回収されてしまっているわけです.そんなところも含めてにやにやしました.
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バナナ剥きには最適の日々 Kindle版
円城塔の作品世界は難解ではない――格好の入り口となる全10篇を収録する第3作品集!/掲出の書影は底本のものです
- 言語日本語
- 出版社早川書房
- 発売日2014/3/15
- ファイルサイズ11518 KB
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商品の説明
著者について
円城塔【えんじょう・とう】
1972年、北海道生まれ。 2007年、「オブ・ザ・ベースボール」で第104回文學界新人賞受賞。
同年、『Self-Reference ENGINE』(ハヤカワ文庫JA)で長篇デビュー。
2010年『烏有此譚』で野間文芸新人賞受賞。
2011年、第3回早稲田大学坪内逍遙大賞奨励賞受賞。
2012年、「道化師の蝶」で第146回芥川賞受賞。
他の作品に『Boy's Surface』『後藤さんのこと』(ともにハヤカワ文庫JA)、『これはペンです』など。
1972年、北海道生まれ。 2007年、「オブ・ザ・ベースボール」で第104回文學界新人賞受賞。
同年、『Self-Reference ENGINE』(ハヤカワ文庫JA)で長篇デビュー。
2010年『烏有此譚』で野間文芸新人賞受賞。
2011年、第3回早稲田大学坪内逍遙大賞奨励賞受賞。
2012年、「道化師の蝶」で第146回芥川賞受賞。
他の作品に『Boy's Surface』『後藤さんのこと』(ともにハヤカワ文庫JA)、『これはペンです』など。
登録情報
- ASIN : B00KID932A
- 出版社 : 早川書房 (2014/3/15)
- 発売日 : 2014/3/15
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 11518 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効
- Word Wise : 有効にされていません
- 付箋メモ : Kindle Scribeで
- 本の長さ : 178ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 157,519位Kindleストア (Kindleストアの売れ筋ランキングを見る)
- - 16,201位日本の小説・文芸
- カスタマーレビュー:
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4 星
やっぱり、わからないけどおもしろい。
10作収録。変わらず「わからないけどおもしろい」作品。初めて円城塔を読むならば、これから手にしてもよかったかもしれない。個人的には怪奇幻想色のある「Jail Over」がお勧め。
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2021年4月21日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
なんとなく理解できるような、
でもなんだか頭がぐるぐるしてくるような、
不思議な感覚になれる本です。
文章の内容に引き込まれるから面白いというのではなくて、今までに感じたことのない頭のぐるぐる感覚を与えてくれた本ということで、面白い本だなと手元に置いています。
こんな本もあるのだな、と感慨深く思います。
でもなんだか頭がぐるぐるしてくるような、
不思議な感覚になれる本です。
文章の内容に引き込まれるから面白いというのではなくて、今までに感じたことのない頭のぐるぐる感覚を与えてくれた本ということで、面白い本だなと手元に置いています。
こんな本もあるのだな、と感慨深く思います。
2021年11月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
表紙のデザインが可愛くてジャケ買いしましたが、状態が良くなかったです。上の部分には折り目がついていて、擦れ傷も沢山あります。個人的にかなりショックでした。中身は黒い汚れが少しついていました。

表紙のデザインが可愛くてジャケ買いしましたが、状態が良くなかったです。上の部分には折り目がついていて、擦れ傷も沢山あります。個人的にかなりショックでした。中身は黒い汚れが少しついていました。
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2020年6月30日に日本でレビュー済み
『どちらかというと分かり易い最新作品集』との評が物語るように、氏の中でも分かり易い気がする本作。
ですが安心して下さい、気のせいです。相変わらず分からないのに面白い不思議さは、仕組みが分からなくても利用出来る便利な家電と似ているかもしれません。
ですが安心して下さい、気のせいです。相変わらず分からないのに面白い不思議さは、仕組みが分からなくても利用出来る便利な家電と似ているかもしれません。
2020年7月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
10作収録。
変わらず「わからないけどおもしろい」作品。初めて円城塔を読むならば、これから手にしてもよかったかもしれない。
個人的には怪奇幻想色のある「Jail Over」がお勧め。
変わらず「わからないけどおもしろい」作品。初めて円城塔を読むならば、これから手にしてもよかったかもしれない。
個人的には怪奇幻想色のある「Jail Over」がお勧め。

10作収録。
変わらず「わからないけどおもしろい」作品。初めて円城塔を読むならば、これから手にしてもよかったかもしれない。
個人的には怪奇幻想色のある「Jail Over」がお勧め。
変わらず「わからないけどおもしろい」作品。初めて円城塔を読むならば、これから手にしてもよかったかもしれない。
個人的には怪奇幻想色のある「Jail Over」がお勧め。
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2014年11月9日に日本でレビュー済み
解説に「なぜ『わからないけどおもしろい』と感じるのかがちょっとわかる(かもしれない)作品集」とありますけど、そう思います。円城さんの本を読むのは2冊目ですが、わからないけどおもしろい、でも前に読んだ時より少し近づけたかも、という感じ。
カルビーノやボルヘスを読んでいるように感じる時もある。軽さ/重さ、明るさ/暗さ、陽気さ/切なさ、そういったものがぺったりくっついていたり、メビウスの輪のようにつながっていたり。非とか無とか全とか、そんな文字が頭に浮かんだり。
おもしろいんだから、わかる/わからないなんて、どうでもいいんじゃない? そう、そのほうがすんなり読める。読み終わってから、なんでおもしろかったんだろう、どこを気に入ったんだろう、と考えたほうが作品全体と素直に向き合える。
でも、それだと作者と読者の対話であるところの小説というものの存在が少し薄れてしまうような気もする。これまでよりさらにおもしろく読もうとするならば、わかろうとする努力も必要だよな。わからなくたっていいじゃないかと開き直って読むとしても。
うーむ、面白い作品集であるが、いろいろと考えさせられる作品集でもあるな。
カルビーノやボルヘスを読んでいるように感じる時もある。軽さ/重さ、明るさ/暗さ、陽気さ/切なさ、そういったものがぺったりくっついていたり、メビウスの輪のようにつながっていたり。非とか無とか全とか、そんな文字が頭に浮かんだり。
おもしろいんだから、わかる/わからないなんて、どうでもいいんじゃない? そう、そのほうがすんなり読める。読み終わってから、なんでおもしろかったんだろう、どこを気に入ったんだろう、と考えたほうが作品全体と素直に向き合える。
でも、それだと作者と読者の対話であるところの小説というものの存在が少し薄れてしまうような気もする。これまでよりさらにおもしろく読もうとするならば、わかろうとする努力も必要だよな。わからなくたっていいじゃないかと開き直って読むとしても。
うーむ、面白い作品集であるが、いろいろと考えさせられる作品集でもあるな。
2023年6月4日に日本でレビュー済み
自分の覚え書きも含めてレビューさせていただきます。
ネタバレは、なしになります。
※評価は、私個人のものになります。
パラダイス行 ×佳作
バナナ剥き ×佳作
祖母の記憶 ×佳作
AUTOMATICA 〇超短編だが良作
equal △力作だが佳作
捧ぐ緑 〇良作
jail over △佳作(佳作の中では良作に近い)
墓石に ×佳作
エデン逆行 ◎名作寄りの良作
佳作が多いのは、海外のヒューゴー賞とかを獲っているSFの短編作品群と同時期に読んだ影響もあります。
作家業として書いているかガチで力作を書こうとしている時なのかで、意気込みや力の入れようが違うとは思うので仕方ない面もある。
『パラダイス行』『祖母の記憶』に関しては、何故、短編集の序盤にさして面白くない話を持ってきたのかが不明。
『バナナ剥き~~』に関しては、何故表題作なのに佳作なのかが不明です。
佳作群に関しては、読んでるというよりも作者個人の感覚のものを読まされてるというだるさがある。
『AUTOMATICA』超短編ですが、短編集の序章として読むのにも、単発作品として読むのにも良い。
『equal』1ページの作品が18篇あるような作品。その内の3篇~4篇程度は、文学や詩として十分に価値のある作品がある。
まとめて小説とせずに、たとえば優れた数編だけ短編集のインタルードとして現代詩として掲載したら、とても良かったのかもしれない。
まとめる事で、佳作になってしまっている。
『捧ぐ緑』これは良作。このレベルの作品をコンスタントに書ける作家だったら全作品を追いたいと思わされる。
『jail over』佳作だけど趣があります。佳作の特徴も多いけど、良かった趣向も少しあると思います。
『エデン逆行』これは名作。もし1篇だけしか再読できないのなら迷わずこの作品を選ぶ。
最後の辞書の比喩が、本編と論理的にどれほど関係があるのか。雰囲気だけで論理的に関係があるとは言えないのか。
分かるようになってから読むとまた評価も変わるのかもしれない。
ネタバレは、なしになります。
※評価は、私個人のものになります。
パラダイス行 ×佳作
バナナ剥き ×佳作
祖母の記憶 ×佳作
AUTOMATICA 〇超短編だが良作
equal △力作だが佳作
捧ぐ緑 〇良作
jail over △佳作(佳作の中では良作に近い)
墓石に ×佳作
エデン逆行 ◎名作寄りの良作
佳作が多いのは、海外のヒューゴー賞とかを獲っているSFの短編作品群と同時期に読んだ影響もあります。
作家業として書いているかガチで力作を書こうとしている時なのかで、意気込みや力の入れようが違うとは思うので仕方ない面もある。
『パラダイス行』『祖母の記憶』に関しては、何故、短編集の序盤にさして面白くない話を持ってきたのかが不明。
『バナナ剥き~~』に関しては、何故表題作なのに佳作なのかが不明です。
佳作群に関しては、読んでるというよりも作者個人の感覚のものを読まされてるというだるさがある。
『AUTOMATICA』超短編ですが、短編集の序章として読むのにも、単発作品として読むのにも良い。
『equal』1ページの作品が18篇あるような作品。その内の3篇~4篇程度は、文学や詩として十分に価値のある作品がある。
まとめて小説とせずに、たとえば優れた数編だけ短編集のインタルードとして現代詩として掲載したら、とても良かったのかもしれない。
まとめる事で、佳作になってしまっている。
『捧ぐ緑』これは良作。このレベルの作品をコンスタントに書ける作家だったら全作品を追いたいと思わされる。
『jail over』佳作だけど趣があります。佳作の特徴も多いけど、良かった趣向も少しあると思います。
『エデン逆行』これは名作。もし1篇だけしか再読できないのなら迷わずこの作品を選ぶ。
最後の辞書の比喩が、本編と論理的にどれほど関係があるのか。雰囲気だけで論理的に関係があるとは言えないのか。
分かるようになってから読むとまた評価も変わるのかもしれない。
2014年5月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
表題作の他、「パラダイス行」、「祖母の記録」、「『AUTOMATICA』『円城塔』」、「equal」、「捧ぐ緑」、「Jail Over」、「墓石に、と彼女は言う」、「エデン逆行」、「コルタサス・パス」(文庫化に当たってのボーナス版の由)の全10編の作品から構成される短篇集。本作のキャッチ・コピーは、「分らないけれども面白い円城作品をチョット分る(かもしれない)作品集」の由。言い得て妙である。
冒頭作の「パラダイス行」で、のっけから「ないはないはない」との哲学(禅?)問答が提示される等、円城氏の世界にドップリと浸れる。特に、<文章の自動生成>を扱った「『AUTOMATICA』『円城塔』」(『円城塔』も表題です!)が作者自身による円城作品の自己解説となっていて、円城ファンには見逃せない短編。私も、金子邦彦氏「カオスの紡ぐ夢の中で」で知ったのだが、円城氏は院生時代、金子教授の研究室に在籍し、複雑系(あるいはカオス)の研究をしていた由。その時、今で言う<遺伝的アルゴリズム>等の人工知能技術を用いて、計算機シミュレーションを行なっていた様だ。円城氏が計算(機)理論にも詳しい理由が頷けた。更に驚くべき事は、金子氏の作品(構成は鵺の様)中の"小説もどき"中に、円城氏が<小説自動生成プログラム>として登場するのである。<小説自動生成プログラム>としての円城氏と人間(!)の作家としての円城氏との関係が、本短編において、書き手と読み手との間の相互作用に基づいて簡潔(無碍?)に説明されている。
表題作は、宇宙物理学を突き詰めると、哲学や詩の世界へ彷徨ってしまうのかと思わせる印象的な短編。「捧ぐ緑」はゾウリムシの進化実験を扱ったものだが、茶飲み話→講演→着想外の結末へと至る展開が奇抜。「Jail Over」は珍しくホラー味が漂う短編だが、結局は"わたし"と"わたし"が繰り出す妄想との関係を主に、幾つもの表象に対する位相(例えば、脳=牢獄)を埋め込んだ最も円城氏らしい良く分からない作品。「墓石に、と彼女は言う」、「エデン逆行」、「コルタサス・パス」の三編も多次元宇宙、鏡像、創世記、一瞬の邂逅等を扱って神秘的雰囲気(良く分からない感)を漂わせている。「コルタサス・パス」には「よくわからないということがよくわかった」という自虐ネタとも取れる台詞まで出て来る。本当に良くは分らないが、魅力溢れる作家だと改めて思った。
冒頭作の「パラダイス行」で、のっけから「ないはないはない」との哲学(禅?)問答が提示される等、円城氏の世界にドップリと浸れる。特に、<文章の自動生成>を扱った「『AUTOMATICA』『円城塔』」(『円城塔』も表題です!)が作者自身による円城作品の自己解説となっていて、円城ファンには見逃せない短編。私も、金子邦彦氏「カオスの紡ぐ夢の中で」で知ったのだが、円城氏は院生時代、金子教授の研究室に在籍し、複雑系(あるいはカオス)の研究をしていた由。その時、今で言う<遺伝的アルゴリズム>等の人工知能技術を用いて、計算機シミュレーションを行なっていた様だ。円城氏が計算(機)理論にも詳しい理由が頷けた。更に驚くべき事は、金子氏の作品(構成は鵺の様)中の"小説もどき"中に、円城氏が<小説自動生成プログラム>として登場するのである。<小説自動生成プログラム>としての円城氏と人間(!)の作家としての円城氏との関係が、本短編において、書き手と読み手との間の相互作用に基づいて簡潔(無碍?)に説明されている。
表題作は、宇宙物理学を突き詰めると、哲学や詩の世界へ彷徨ってしまうのかと思わせる印象的な短編。「捧ぐ緑」はゾウリムシの進化実験を扱ったものだが、茶飲み話→講演→着想外の結末へと至る展開が奇抜。「Jail Over」は珍しくホラー味が漂う短編だが、結局は"わたし"と"わたし"が繰り出す妄想との関係を主に、幾つもの表象に対する位相(例えば、脳=牢獄)を埋め込んだ最も円城氏らしい良く分からない作品。「墓石に、と彼女は言う」、「エデン逆行」、「コルタサス・パス」の三編も多次元宇宙、鏡像、創世記、一瞬の邂逅等を扱って神秘的雰囲気(良く分からない感)を漂わせている。「コルタサス・パス」には「よくわからないということがよくわかった」という自虐ネタとも取れる台詞まで出て来る。本当に良くは分らないが、魅力溢れる作家だと改めて思った。