カスタマーレビュー

2021年8月29日に日本でレビュー済み
資本主義が当たり前の世の中で生まれ育ったので,そもそも資本主義と共産主義の違いについてよく知らなかったが,この本はその点がわかりやすく,ユーモアも含めて説明されていて,経済学を知らなくても面白く読める良書。

市場や貨幣の機能の利点,比較優位の原則などについてもわかりやすい例を取り上げて説明されていて,経済学の教科書を読むより,この本を読んだ方が勉強になる。

共産主義より資本主義のほうが優れているのは当然だとは思っていたが,この本を読んで改めて納得した。経済成長すれば,経済のパイが大きくなるのだからゼロサムゲームでなくなるし,競争のある市場経済のほうがイノベーションが促進され,ワクチンもいち早く開発されて,世界の平均寿命も延びる。

確かに昨今のコロナ問題をみても,グローバル化が進んだから,コロナが外国から入ってきてしまうけど,グローバル化が進んだから自国開発できなくても日本はワクチンを輸入できたわけだ。ワクチンの質をとってもみても,資本主義国のワクチンと共産圏のワクチンを比較すれば,資本主義国のワクチンのほうが明らかに上だ。

温暖化などの環境問題についても,「人新世」では経済成長をやめて1970年代の生活に戻れとノスタルジックで非現実的な提案がされているが,この本では,ピグー税,あるいは炭素税や排出権取引,海面上昇には「屈強な堤防建設」でよいと現実的な提案がされている。よく考えれば当たり前だ。

資本主義経済の中で豊かさを十分に享受しているのに,「人新世」もそうだが,一時期大騒ぎしたピケティの「21世紀の資本」も含めて,ノスタルジックに共産主義を夢想する論が近年増えているこの世の中で,この本は,我々の足元の豊かさを改めてに思い出させてくれた。
36人のお客様がこれが役に立ったと考えています
レポート 常設リンク