爆発を切り口に、宇宙の進化とそこで起きている様々なドラマを紹介するとても面白い解説書である。超新星爆発やガンマ線バースト(GRB)などに代表される「謎の爆発現象」の発生源とそのメカニズムを解明しようとする研究の歴史とドラマが鮮やかに描かれている。
これらの謎の天体現象の解明に、従来の可視光線、電波、X線、ガンマ線などの「電磁波」に加え、「ニュートリノ」と「重力波」などの新たな観測方法が利用されていることが分かり、その有用性・有効性を実感できることが素晴らしいと思う。本書で叙述されている観測例から、特に印象的なものを三つ挙げたい。
・SN 1987A: 16万光年離れた大マゼラン星雲で起きた超新星爆発であり、カミオカンデが捉えたニュートリノの検出から、「重力崩壊による中性子星誕生」の瞬間を人類が初めて見た記念碑である、と述べられている。遅れて到達したガンマ線の観測記録から、「超新星爆発がニッケル56の放射性崩壊で輝いている」ことの確たる証拠となった事例でもある。
・GRB 980425/SN 1998bw: 「ロングガンマ線バースト」と超新星爆発が同時に発生することを観測した最初の例である。近距離(約1億光年)で、爆発の規模も小さかったが、ロングガンマ線バーストがⅠc型の超新星爆発と関係し、中心にできるブラックホールから光速に近いジェットを放出する爆発であることが観測・実証された意義はとても大きいと思う。
・GW170817: 連星中性子星合体による重力波を観測し、付随するガンマ線のシグナルから「ショートガンマ線バースト」を検出し、その電磁波観測から「重元素(r-過程元素)の放出が確認された」重要な事例である。ショートガンマ線バーストの一つの起源として中性子星合体が予想されていたが、重力波により中性子星合体が捉えられ、重力波検出の後に(継続時間1秒ほどの)ショートガンマ線バーストが検出された素晴らしい観測記録である(重力波を放った天体を特定し、写真撮影に成功した最初の例でもあるという)。
本書ではこれらの話題だけでなく、電波で光る謎の天体現象「高速電波バースト」(FRB)についても言及されている。一部の高速電波バーストはマグネターを起源としていることが判明しているが、著者は連星中性子星合体による可能性を提唱されている。より広視野で電波サーベイが出来るようになり、「連星中性子星合体による重力波と高速電波バーストの同時検出」が実現することを心待ちにしていると述べられている。ぜひその日が来ることを期待したい。
本書は宇宙の進化とその過程における「爆発」の意味を説く非常に優れた解説書である。2021年12月に刊行された田中雅臣『マルチメッセンジャー天文学が捉えた新しい宇宙の姿』とあわせ読まれると更に理解が深まり、トップモードの物理学である現代天文学、宇宙物理学の面白さ・素晴らしさを実感できるのではなかろうか。どちらの書もお薦めしたい素敵な良書である。
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爆発する宇宙 138億年の宇宙進化 (ブルーバックス) 新書 – 2021/6/17
戸谷 友則
(著)
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宇宙にとって「爆発」とはなにか?
インフレーション、ビッグバン、超新星爆発、ガンマ線バースト……宇宙に起こるさまざまな爆発現象。
これらは、けっして自明な現象ではありません。超新星爆発は、なぜ起こるのか? 実は、その過程にはまだまだ解明されていない謎が多く存在するのです。
本書では、この宇宙の始まりでもある「インフレーション」「ビッグバン」、さらにハッブルによって発見された「宇宙膨張」、「超新星爆発」や宇宙最大の爆発現象「ガンマ線バースト」などの爆発現象を取り上げながら、最新の天文学で考えられているそのメカニズムを起点に、赤色巨星、白色矮星、ブラックホール、中性子星、さらにはダークマターについてなど、さまざまな天体・物質についても詳細に解説していきます。
このなかで特筆すべきは、まだ観測されたばかりの謎の爆発現象「高速電波バースト:FRB」を、その観測実例をもとにさまざまな仮説・研究を紹介してる点です!
そのそも、この宇宙もインフレーション、ビッグバンという爆発から始まりました。
私たちがふだん日常の中で使っているさまざまな元素も、宇宙の爆発現象によって作られたものです。
そして我々、生命もまた爆発によって作られたものだと考えられています。
さまざまな爆発を理解しながら、宇宙とはなにか? 重元素が作られるには? そして、生命とは? という根源的な問いへと向かっていく、知的興奮を体感する科学書です。
インフレーション、ビッグバン、超新星爆発、ガンマ線バースト……宇宙に起こるさまざまな爆発現象。
これらは、けっして自明な現象ではありません。超新星爆発は、なぜ起こるのか? 実は、その過程にはまだまだ解明されていない謎が多く存在するのです。
本書では、この宇宙の始まりでもある「インフレーション」「ビッグバン」、さらにハッブルによって発見された「宇宙膨張」、「超新星爆発」や宇宙最大の爆発現象「ガンマ線バースト」などの爆発現象を取り上げながら、最新の天文学で考えられているそのメカニズムを起点に、赤色巨星、白色矮星、ブラックホール、中性子星、さらにはダークマターについてなど、さまざまな天体・物質についても詳細に解説していきます。
このなかで特筆すべきは、まだ観測されたばかりの謎の爆発現象「高速電波バースト:FRB」を、その観測実例をもとにさまざまな仮説・研究を紹介してる点です!
そのそも、この宇宙もインフレーション、ビッグバンという爆発から始まりました。
私たちがふだん日常の中で使っているさまざまな元素も、宇宙の爆発現象によって作られたものです。
そして我々、生命もまた爆発によって作られたものだと考えられています。
さまざまな爆発を理解しながら、宇宙とはなにか? 重元素が作られるには? そして、生命とは? という根源的な問いへと向かっていく、知的興奮を体感する科学書です。
- 本の長さ280ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2021/6/17
- 寸法11.5 x 1.4 x 17.3 cm
- ISBN-104065240840
- ISBN-13978-4065240847
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商品の説明
著者について
戸谷 友則
1971年、愛知県生まれ。1998年、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。国立天文台助手、プリンストン大学客員研究員、京都大学准教授などを経て、現在は東京大学大学院理学系研究科天文学専攻教授。専門は天文学、宇宙物理学(特に、宇宙論、銀河形成や高エネルギー天体物理学)。観測を意識した理論的な研究が主体。著書に『新・天文学事典』(共著、講談社ブルーバックス)『宇宙の「果て」になにがあるのか』(講談社ブルーバックス)など。
1971年、愛知県生まれ。1998年、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。国立天文台助手、プリンストン大学客員研究員、京都大学准教授などを経て、現在は東京大学大学院理学系研究科天文学専攻教授。専門は天文学、宇宙物理学(特に、宇宙論、銀河形成や高エネルギー天体物理学)。観測を意識した理論的な研究が主体。著書に『新・天文学事典』(共著、講談社ブルーバックス)『宇宙の「果て」になにがあるのか』(講談社ブルーバックス)など。
登録情報
- 出版社 : 講談社 (2021/6/17)
- 発売日 : 2021/6/17
- 言語 : 日本語
- 新書 : 280ページ
- ISBN-10 : 4065240840
- ISBN-13 : 978-4065240847
- 寸法 : 11.5 x 1.4 x 17.3 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 153,860位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 130位理論天文学
- - 266位宇宙学・天文学(一般)関連書籍
- - 608位ブルーバックス
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2022年1月29日に日本でレビュー済み
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2021年6月23日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
爆発をキーワードに、宇宙に関して研究上で明らかになっていることを手堅く解説した書。
全体は10章構成で、まず第一章は爆発とは何かという基礎的な内容。続く第二章は宇宙における爆発に関する総論的な解説。そして、次の章から本論的な内容となり、第三章で扱われるのがビックバン。さらに第四章はビッグバンから星や銀河の誕生までを解き明かす。ここまでが宇宙のマクロな事象に注目した章。
以降は、宇宙のもう少しミクロな事象に焦点を当てた章。第五章で星の輝きについて解説した後に、第六章・第七章は超新星を扱う。さらに、第八章はガンマ線バースト、第九章は高速電波バーストと進んでいく。このあたりは、2000年代に入ってから観測や研究が進んだテーマであり、直近の天文学の進展を知ることが出来るような内容である。そして、最後の第十章は星の爆発を扱う。
宇宙の成り立ちから星の最後まで、爆発という観点からその詳細が専門的に解説されており、宇宙や天文学の入門書のような装いである。ただし、専門家が律儀に専門的に丁寧に解説してくれているがゆえに、必ずしも理解が容易ではない部分がないわけではない。この点をもってして、一般読者向けであるブルーバックスの一冊としては相応しくないという評価をされてしまう可能性もあるが、専門家として妥協せず、専門的な事柄も正確性を旨として説明を尽くそうとする姿勢は評価されてしかるべきであると思う。
全体は10章構成で、まず第一章は爆発とは何かという基礎的な内容。続く第二章は宇宙における爆発に関する総論的な解説。そして、次の章から本論的な内容となり、第三章で扱われるのがビックバン。さらに第四章はビッグバンから星や銀河の誕生までを解き明かす。ここまでが宇宙のマクロな事象に注目した章。
以降は、宇宙のもう少しミクロな事象に焦点を当てた章。第五章で星の輝きについて解説した後に、第六章・第七章は超新星を扱う。さらに、第八章はガンマ線バースト、第九章は高速電波バーストと進んでいく。このあたりは、2000年代に入ってから観測や研究が進んだテーマであり、直近の天文学の進展を知ることが出来るような内容である。そして、最後の第十章は星の爆発を扱う。
宇宙の成り立ちから星の最後まで、爆発という観点からその詳細が専門的に解説されており、宇宙や天文学の入門書のような装いである。ただし、専門家が律儀に専門的に丁寧に解説してくれているがゆえに、必ずしも理解が容易ではない部分がないわけではない。この点をもってして、一般読者向けであるブルーバックスの一冊としては相応しくないという評価をされてしまう可能性もあるが、専門家として妥協せず、専門的な事柄も正確性を旨として説明を尽くそうとする姿勢は評価されてしかるべきであると思う。
2021年6月28日に日本でレビュー済み
爆発視点から宇宙の話。ガンマ線バーストの威力の凄まじさ、さらにそれを超えたものがあるなど、淡々と壮大なスケールの話。