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みかづき (集英社文庫) Kindle版
- 言語日本語
- 出版社集英社
- 発売日2018/11/25
- ファイルサイズ3299 KB
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商品の説明
メディア掲載レビューほか
熱い教育論が飛び交う、戦後史にして大河ロマン
日本における学習塾の変遷、その塾の経営者三代の奮闘、女系家族の確執、理想の教育……本書は実に重奏的なテーマを含んでいるが、全ての主音が合わさり見事なメロディとなって奏でられる。スケールの大きな小説だ。
昭和三十六年。教員免許はないが、抜群の教える「才」を持つ大島吾郎は、小学校の用務員室で生徒の補習を行っていた。ある日生徒の蕗子の母・赤坂千明から自分の立ち上げる学習塾へ来て欲しい、と頼まれる。
千葉の一軒家を借りて始めた塾経営は、半年ほどで波に乗り始める。一方、新聞では「塾は受験競争を煽る受験屋だ」「塾は実のない教育界の徒花だ」というコラムが掲載されていた。
千明が公教育を嫌う理由は、国民学校で国への忠誠心を植え付けられた六年間を忘れられずにいたからである。教育とは、国の根幹であり、人を作ることに直結する。戦後その教えが一変したことで、千明は学校教育以外の教育を模索し、塾の経営に海路を見いだす。
こうして吾郎と千明は学習塾という小さな舟で教育界という大海にこぎ出したが、吾郎はあくまで補習、千明は進学と目的地がはっきりとしている。ならば二人のどちらかが舟を降りなければならない。
結婚した二人の元、育った長女蕗子、吾郎と千明の間に生まれた次女蘭、三女菜々美は両親の影響を受け、自分なりの教育論を築いていた。母への反発から家を出た蕗子は「理想の教育」について母に問う。
「理想理想ってお母さんは言うけど、本当にそんなものがあるんですか。あるとしたら、どこに?」
理想の教育は母の幻想だと蕗子は切り捨てる。時代と共に補習塾から進学塾へと舵を切っていくが、これは公教育に従った結果だ。受験戦争が過熱する中、公教育を否定しながら、塾はその跡を追うしかなくなっていく。理想の教育を見失ったまま――。
団塊のジュニア世代で小中学校と公教育を受け、塾には行ったことがないわたしが本書を読んで羨ましい、と思う場面がいくつかあった。それは学校の授業について行けない生徒が、学ぶことで理解する喜びを表わすところだ。この喜びを知るか知らないかによって、この先の学ぶ力は随分変わっていくだろう。
教育とは、教え育てることでその人に内在する資質や能力を発展させ、もっと学びたい欲求を生み出していく。そんな無限ループによって結果的に自分を高めていくことだと思う。
学ぶ喜び、そして導く喜びが本書の中でキラキラと光っていた。
評者:中江 有里
(週刊文春 2016.11.07掲載)登録情報
- ASIN : B07KR2R8J9
- 出版社 : 集英社 (2018/11/25)
- 発売日 : 2018/11/25
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 3299 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効
- Word Wise : 有効にされていません
- 付箋メモ : Kindle Scribeで
- 本の長さ : 555ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 49,209位Kindleストア (Kindleストアの売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について

1968年東京都生まれ。早稲田大学卒。91年『リズム』で講談社児童文学新人賞を受賞しデビュー。同作品で椋鳩十児童文学賞を受賞。『宇宙のみなしご』 で野間児童文芸新人賞、産経児童出版文化賞ニッポン放送賞を、『アーモンド入りチョコレートのワルツ』で路傍の石文学賞を、『カラフル』で産経児童出版文 化賞を、『つきのふね』で野間児童文芸賞を、『DIVE!!』で小学館児童出版文化賞を受賞。2006年『風に舞いあがるビニールシート』で第135回直 木賞を受賞した(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 宇宙のみなしご (ISBN-13: 978-4043941087 )』が刊行された当時に掲載されていたものです)
イメージ付きのレビュー

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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
塾の月謝も含め、高校生はコンピュータを用意するようになってきたり保護者の負担も増えている様子。学級あたりの子供の数も多いことも改善する必要があるように思いました。
子どもたちの学びのために行うことが、時代によって変わっていきます。
決してゴールがない『みかづき』の精神は、あらゆる仕事を照らしていると思いました。
本書の主人公は夫婦教師である。子供らにいかに誠実に接し、子供たちの両親の信頼を勝ち得、そして塾を大きく育てていくのか、これがほとばしるような熱血で著述されているので、長ったるいといった退屈感は微塵も感じることはなく、『ああ、読んでよかった!教師のミッション、万歳\(^^)/』、という所感につきた、そんな一書であった。
レビューワーも教師の端くれである。よって、正直に言おう:これから教師を志望する若人、現在気持ちが萎えている/あるいは燃えつきてない現役教師、さらには教育という大業にすこぶる興味がある方々には、COVID-19が予期せずしてIcT(デジタル)教育のドライビングフォースになりつつある今だからこそ、ぜひ本書をひもといてほしい。『これぞ、魂のふれあいことが教育だあ!』、と思わず叫ばれるに違いない。
子供たちの輝ける未来のために!
それだけでもユニークです。
「国力」を考えるうえで何が一番大事かと問われると、やはりそれは子供に対する「教育」なのではないでしょうか。
子供時代の教育によって、その国の民意の高さや道徳心の高さが養われ、かえってはそれが国際的信頼度の高さに影響すると考えます。
例えば、大地震といったクライシスが発生した際、海外では容易に暴動、略奪に発展する姿がみられますが、日本では、東北大地震の際には、人々が先を争い物資を奪い合うような姿は見られず、列を作って順番を待つ姿が世界の称賛をあびたということがありました。この世界に誇るべき国民性の高さも、日本人が幼少期から受けた教育の賜物なのではないでしょうか。
もちろんそれは広い意味での「教育」であり、主に「知力」に重点が置かれた学習塾における教育だけで養われるものでもありませんが、本書における「教育」に対する考え方は、日本の国力を向上させる広い意味での教育についても考えさせるきっかけになります。
「教育は、子どもをコントロールするためにあるんじゃない。不条理に抗う力、たやすくコントロールされないための力を授けるためにあるんだ」
との一郎の考えからもその思いが伝わります。
強引なまでに力強い意志を持つ女性の千明は
「十分な知識さえ与えておけば、いつかまた物騒な時代が訪れたときも、何が義で何が不義なのか、子供たちは自分の頭で判断することができる」
との信念で、当時の学校教育に不足するものを自ら立ち上げる塾にて実現しようとする。
昭和36年における千明のこの発言からはじまる塾を舞台に教育というものを考えさせる本書は、半世紀にわたる大島家という家族のクロニクルでもあります。
ああ、あのころはこういうことがあったなあと思いながらも、ノスタルジックになるでもなく前へ進んでいこうとするバイタリティを大島家に感じます。
それだけに本書ラストでの吾郎のセリフには胸がギュッとなり思わず涙。
大島家のクロニクルを締めくくる実に見事なエンディングでした。
私は著者さんの大ファン。
イジワルで難しい言い回し無しの美しくて的確な表現は著者さん特有で、国語力のない私にも読みやすく、充分に読み応えを感じることができました。
昭和から平成まで、その時代時代に生きるひと達の機微がものすごく鮮やかに描かれていると思います。
印象的なシーンごとに情景が文体の美しさとともに味わえました。みかづきの意味を知るたび、登場人物の深慮を知るたびにしびれるほどの感銘を受けました。
ハッと気づかされてうならされたり、鳥肌のたつほど感動させられたり、最後の最後まで心震える展開で傑作だと思いました。大切にしたい作品となりました。
文章自体が読みづらいということはなかったのですが、ページ数が電子書籍版だと555ページと非常に多かったこと、そしてストーリーに引き込まれる要素が薄かったことが原因に感じています。
というのも、私個人が人間ドラマを期待して読んでいたため、いまいち作品にのめり込めない状況に陥っていたのだと思われます。
人物の成長過程を追体験するのが好き、という人向けの本ではないのかもしれません。
教育という仕事は、何年やっても「完成」はありません。(ほかの仕事もそうだと思います。)
授業が好き、教えるのが好き、そういう人が教師になってほしいと切に思います。