![ナショナル ジオグラフィック日本版 2018年5月号 [雑誌]](https://m.media-amazon.com/images/I/51qVOlNSvZL._SY445_SX342_.jpg)
絵画をはじめとした活動領域での近年まで存命した芸術家として、ピカソはダリとともに、いやそれ以上の知名度を誇る人物だろう。彼の天才は、まずその早熟ぶりで明らかだ。画家である父はピカソ16歳での作品を見て、絶望したというエピソードがあり、その端整な絵はバルセロナのピカソ美術館で見ることができる。評者の個人的経験では、複製で知るピカソの絵にはそれほど魅了されたことはなかったのだが、青の時代とバラ色の時代を含む彼の絵（そしてベラスケスのラス・メニーナスの解体的な再構築過程を知ることができる幾多の習作）をバルセロナのピカソ美術館で直接見る機会があり、その作品に魅了された。どうも彼の作品は、直接見ることでその素晴らしさをより感じるのかもしれない。何より、彼の作品には大きなものが多いこともその一因かもしれない。彼の創作意欲はとてつもないもので、作品数は３万点近くありそれゆえ彼の作品は日本を含む世界各国で見ることができる。そして、彼の恋愛・結婚歴も華麗かつ数多い相手がいる、そのため彼の子や孫も当然数多く。彼らの人生も取材されていて、その発言が興味深かった、天才の子や孫に生まれた幸運と悲運について示唆的だった。彼の女性に対する態度は激しく時として暴力的で、芸術家の創造の源泉に潜む闇をうかがわせる。
アメリカに住むムスリム特集も色々考えせさせられるもので、ここに登場する多様な背景を持ったムスリムの姿をみると、最近評判を落としているアメリカの自由な社会の底力的なものを感じた。個々人は当然ながら、イスラム教徒だからといって特有の性質を持っているわけではない、親の国籍や入信の経緯やその主張、あるいは信仰に関する真面目さもそれぞれちがう。しかし、昔から寛容な社会は非寛容的な主張に対してどうするかという問題があるわけで、例えばドイツでは我が闘争は禁書であるし、共産党が非合法である民主主義国もある。イスラム教はその主張に祭政一致を含んでいて、それが具現化するとサウジやイランになる。ただし、アメリカではムスリムが多数派にはおそらくならないので（なぜかというとイスラム以外にも激しく多様な勢力がひしめいているから）、アメリカの価値観はムスリムの多様な主張を許容しつつ輝き続けるだろうと思わせる内容だった。
鳥の化石は見て楽しい、ここに掲載されているのは相当保存度の高い化石でこれを現場で見つけたら興奮するだろうなと思う。鳥は恐竜の直接の子孫であるが、小惑星衝突で恐竜が絶滅する以前にすでに現生鳥類につながる系統が現れていたというのは新知識だった。
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