一部のSNSでちょっと話題になっていた本です。最近は映画で卒論を書く学生も多いので、卒論を指導するのに役立つのではないかと考えて読んでみました。なかなかいい本です。数ある論文執筆のマニュアル本の中でも出色のできではないでしょうか。
まず驚いたのは文章の読みやすさ。翻訳書なのに初めから日本語で書かれていたかのように、すらすら読めます。です・ます調で口語体の文章は、大学生にもすぐに読めそうです。
第1部では映画を分析的に見て、アイデアを見つける方法が紹介されています。ジェンダーやレース・エスニシティの視点からの映画の見方も解説。第2部では、アイデアを論文やレボートへと展開していく方法が説明されています。明晰でわかりやすい文章の組み立て方は、すごく参考になります。特に第9章は、わたしも知らなかった文章テクニックが満載です。第3部は映画用語のグロッサリーですが、スチル写真を眺めてるだけでも楽しい。
映画だけでなく、ポップカルチャー（音楽・ファッション・漫画・お笑い・テレビ番組・ネット文化）で卒論を書こうという大学生には、非常に参考になりそうです。ひとつだけ残念だったのは、卒論の書式（マージンの取り方、フォントとそのサイズ、注のつけ方、参考文献一覧の作り方）についてあまり説明がなく、ただ『MLAハンドブック』を見よ、としか書いてなかったこと。学生たちからの質問は、ほとんど書式のことなんですけどね。改訂の際には簡単でいいから解説してほしいです。それを差し引いてもおすすめできる本です。
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