<内容に触れています>
ある夜のオペラ帰り、仲間のひとりのブルジョワの豪邸に招かれた10名ほどの間に起きたこと。。
opからいきなり、お邸勤めのコックさん、女中さんら使用人がお暇をもらう。何か不服な訳でもなく、申し訳なさそうに出てゆく人もいる中、残った執事さんと客たちはなぜかここを出られなくなってしまう・・・
● 何度か見ていると・・・
客たちの性格や身分、このあとどう乱れるか?あるいはグッと踏ん張る人か、といったことがもう分かっている余裕で、(ディナー・シーンなど)新たに気づくことがあって本当に面白い。初めはどうしても全体の筋を追うので細かい所を見落としてしまう(さほどに隙のない映画なのだと思う)。
● けど、そういう見落としがあっても・・・
「なぜだかわからないが、お邸から出られず・・」外の人が中に入って事情を訊くのも不可と約束事のようにして、双方にっちもさっちも行かない状況に固めてしまった中で、お邸のサロンに「遭難」するハメになったらヒトはいったい何をしでかすものなのか?といったことについて、エゴが絡みあったりあるいは全く他と絡まずふたりの世界にこもり、ついにはブラックな脱出をしてしまうカップルもある。「そういうあれこれをハタから眺める面白さ」は、初見で手応えを感じられると思います。
● でもやっぱり、再見すると改めて感心することがあって、例えば・・・
サロンのピアノの音が、ダイニングにひとり残ったレティシアの耳に届くと、突如彼女は窓に灰皿を投げつける。理由は説明されないが、何かの始まりを告げるガチャ〜ン!(シルヴィア・ピナル演じるレティシア。他と毛色の違う彼女のニックネームは「ワルキューレ」。)
ダイニングから再びサロンに移ったフィゲロワのカメラは・・・「犯人はワルキューレ!」と見破るラウルと、レハンドロのやり取りを捉えたあと、次々と登場する人物の関係を紹介するように見せてゆく(人々は振り付けのように動く)。
時計が午前4:00を示す頃になっても誰も帰らず・・・「帰れない」ことに気づき始めた彼ら。(この「不思議空間サロン」の外にいて)芝居か何かのように怪訝な顔でこれを眺めていた執事さんは「仕方ない」という感じに灯りを消し、中の人は床で眠り、やがて疲れ果てテーブルに突っ伏す執事さん・・・といったあたりまでの流麗にして絶妙な描写(カメラワーク)。初めのこの1/3ほど、すごく綺麗で大好きです。
● が、このあと・・・
冷静を保ちリーダー・シップを取り頑張るお医者さんに対して、「ホームズ気取り」と性格の悪いタレルはツッコム(まあ確かにそういう所はある)。この状況下気分の悪くなる人もあり、鎮痛剤もない・・・すると、おお!その代わりとなるものが、なんとこの大邸宅の中にはあった!という展開もチラリ。
この家の主人ノビリも(お医者さんと同じように)なんとかしようと真剣だからか、ヒドく茶化されてはいないような気がします(が、「ツッコミ」のラウロや女性たちが終盤になってこの人を「生け贄」とすることで、彼らががそのまま支配者となりそうなのを食い止めているように見えるのおもしろい)。
アメリカ在住のレハンドロと旧知の仲で秘密結社の絡むクリスティアンと、(すでに何人かお子さんのある)身重の妻リタ。彼女は、自宅にいる子供たちの世話は家庭教師の神父様に任せているから安心と言うが。「神父様の話は・・・」と渋い顔をするのはリタの夫・クリスティアンだけでなく、若い妻を持つ老コンダクターも。けど(この人はこの人で・・・)どんどんディープになるサロン、そのドン底「夜這いの項」の火蓋を切ったのはこの人(コンダクター)だと思います(が、とにかくリタと夫と神父様と子供たちの話は、この「出られない物語」のウラの幹のような)。
ペットの羊も食料にというサバイバル方向に進み、小集団の「群集心理」が頂点に達し、あわや!のところで、危機的状況の中、急成長を遂げたレティシアが「じゃじゃ馬力」を「カリスマ性」に変え(一旦は)皆を無事脱出させ、お邸の外ではいつの間にか戻ってきた使用人たちが顔を揃えて彼ら迎える・・・という所まで、邸の中のクレッシェンドと邸の外の中に入れない(こちらも)クレッシェンドを描く中に、ちゃんと筋もあり伏線のようなものも回収される。
初めのサロンの「あるとき」が、あとでレティシアのひらめきの「ポイントのとき」となりますが・・・
カメラがぐるりと客を写してゆく中に、バッグに鶏の足(爪のある)を忍ばせた女性がいて何かそういうヘンテコ映画か?と思っているとこれが思わぬ伏線。この人は「カバラ占い」(「バカラ」は賭博なのでお間違えなく)に凝っていてその小道具だったとわかる。もっと「奇妙なもの」出現シーンは幻想的な悪夢で(宙に浮いた不可思議シーンではなく)、ヘンだけど「日常の範囲」。が、なぜ出られないのか?とか、レティシアのひらめきで出られた、それがなぜ出られる「key」なのかは説明されない(と私は思いますが、そこをいろいろ考えても考えなくても本作はとにかく面白い)。
<ラストに触れています>
「無事に出られたらミサを・・」と話していたとおり、出られた人たち全員ズラリとミサに並ぶラスト。今度は「彼ら&神父様、教会にやってきた他の皆さん」全員出られな〜い!(その寸前には教会の鐘の中の生々しい?映像がなんとも恐ろしく、外では兵士が銃を撃ちまくり、人々は逃げ惑い、何匹もの羊さんが教会の中へと・・・)
皆殺しの天使 ルイス・ブニュエル HDマスター [DVD]
フォーマット | ブラック&ホワイト |
コントリビュータ | シルヴィア・ピナル, エンリケ・ランバル, エンリケ・G・アルバレス, ルイス・ブニュエル, ルシー・カジャルド, ルイス・アルコリサ |
言語 | スペイン語 |
稼働時間 | 1 時間 34 分 |
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登録情報
- アスペクト比 : 1.33:1
- 言語 : スペイン語
- 梱包サイズ : 19.2 x 13.8 x 1 cm; 100 g
- EAN : 4933672252476
- 監督 : ルイス・ブニュエル
- メディア形式 : ブラック&ホワイト
- 時間 : 1 時間 34 分
- 発売日 : 2018/10/26
- 出演 : シルヴィア・ピナル, エンリケ・ランバル, ルシー・カジャルド, エンリケ・G・アルバレス
- 字幕: : 日本語
- 販売元 : アイ・ヴィ・シー
- ASIN : B07G2CTJLM
- ディスク枚数 : 1
- Amazon 売れ筋ランキング: - 58,173位DVD (DVDの売れ筋ランキングを見る)
- - 5,314位外国のドラマ映画
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2021年4月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2023年10月1日に日本でレビュー済み
確かに、理由も分からずに部屋から出られない、という設定は、1960年代にはインパクトがあったのかもしれないが、「世にも奇妙な物語」でもありそうな話だな、と思ってしまった。
ルイス・ブニュエル、という名前に期待しすぎてしまった。何度も観たくなる、という意味では、やはり、アンダルシアの犬、に軍杯が上がる。すごく心に残る作品ではなかった。
ルイス・ブニュエル、という名前に期待しすぎてしまった。何度も観たくなる、という意味では、やはり、アンダルシアの犬、に軍杯が上がる。すごく心に残る作品ではなかった。
2020年3月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ルイスブニュエル監督の映画のファンです
全作品揃えたいと思います
全作品揃えたいと思います
2018年1月29日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
豪邸のパーティに集まったブルジョアたちが、物理的にではなく、何らかの精神的な理由で、部屋から出られなくなり、閉じ込められてしまう。飲食物もなくなり、紳士や淑女たちが激しい葛藤の中で憎み合う。自殺者もでる。しかしある時、一人の女性が、皆が立っている位置が最初の晩と同じことに気づき、そのとき各人が語った言葉を、全員が想起しつつ語り直したら、不思議なことに、魔法が解けたように、皆が邸の外に出られた。これは、精神分析において、転移や逆転移を経ながら抑圧が解け、自我が解放される過程とよく似ている。部屋から出られなくなった紳士淑女たちに共通するのは、同じ行動、同じ科白を繰り返し、時間が線的に進まずに循環するかのごとく感じられることである。もう一つは、外に出られなくなるまさにその瞬間は、各人のさまざまな語りが交錯することである。誰かが何かを言い、別の誰かが問い、それに別の誰かが答えつつ、「それじゃ、出るのをやめて戻ろう」と身体の向きを変える。物理的に外出が妨害されるのではなく、意識のさまざまなレベルが対話しつつ、重層的決定として、外出しないという行動が決まる。つまり、自発的に閉じ込められるのである。この映画は、我々に実際に起こっていることの、実に巧みな暗喩である。終幕、邸を解放されたブルジョアたちが全員、教会のミサに参加していると、今度は、神父を含めて、全員が教会から出られなくなる。教会の外では、警官がデモの民衆を弾圧している。つまり、精神の自縄自縛もまたそれ自体が政治的なものなのだ。『皆殺しの天使』は、集合的無意識の暗喩をかくも見事に映像化した。
2020年2月16日に日本でレビュー済み
理由のない恐れというのも確かにあるが・・・。結局最後の羊の群れが比喩しているような。自分の頭で考えなさいよ、自分の頭で決断しなさいよと。
2017年11月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
あっらためて見て解ったのはキューバ危機の影響があること。屋敷は核シェルターの暗喩だ。メキシコは何度も行ったが撮影場所は不明。あの時私はこの世の終わりだと思ったよ。
2016年11月18日に日本でレビュー済み
1962年。 監督はルイス・ブニュエル。
ブルジョワジーたちが晩餐会の後に、ある屋敷から出られなくなるお話。
屋敷から出られないのはいいのだが、この映画の不思議なところは理由が
ないのに出られないというところ。 これが不条理劇ってやつなんでしょうか。
閉じ込められてケンカしたり死んじゃう人もいたり、食糧なくて困ったり。そして
羊がなんかいて殺して焼いて食べたりとかもうカオス。
この作品に予算がついて製作された事に驚きます。 これヒットしたのか?
ラストのブラックユーモアみたいのも良かったです。
今まで観た中でも、かなり奇妙な作品でした。
ブルジョワジーたちが晩餐会の後に、ある屋敷から出られなくなるお話。
屋敷から出られないのはいいのだが、この映画の不思議なところは理由が
ないのに出られないというところ。 これが不条理劇ってやつなんでしょうか。
閉じ込められてケンカしたり死んじゃう人もいたり、食糧なくて困ったり。そして
羊がなんかいて殺して焼いて食べたりとかもうカオス。
この作品に予算がついて製作された事に驚きます。 これヒットしたのか?
ラストのブラックユーモアみたいのも良かったです。
今まで観た中でも、かなり奇妙な作品でした。