この短編集では大半が、作者の側で(おそらく意図的に)登場人物についての詳細を説明しないまま物語が進行してゆく類いのもので、そのため人物相関図を頭の中で組み立てるという作業が必要になり、正直疲れてしまい、楽しめなかった。
ただ後半収録の「狼藉者」は一人称の「ぼく」の話であり、シンプルに読みやすい。しかもこの短編は白眉である。「魔法」の世界も、ル グィンの筆にかかれば現実の体験を書き記すものとなる。まさに「ゲド戦記」のル グィン、ここにありという感じだ。うっとりと夢の世界の追体験をしたい方は、この短編だけても、ぜひご一読あれ。
また作者が最後に発表した「水甕」も素晴らしい。訳者はこれを翻訳するにあたって中東に赴いたと言うが、米国に在住していた高齢の作者が自らの体験なしに、はたして想像力だけでこのような作品を書けるのかと思えるほど、砂漠の民の話がよく描かれている。
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現想と幻実: ル=グウィン短篇選集 単行本 – 2020/8/25
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ル=グウィンの知られざる魅力が詰まった、珠玉の未邦訳短篇集 とある海辺の町を舞台に、複数の語りを通して一人の女性の姿を描きだす「夢に遊ぶ者たち」、架空の未来史〈ハイニッシュ・サイクル〉の1ピースをなす「背き続けて」、勤勉な使用人に主人が与えた意外な試練の顛末「水甕」――。SF・ファンタジーのみならず現代アメリカ文学全体に大きな足跡を残した作家ル=グウィンによる、現実と非現実の境界を揺さぶる魅惑の11篇。
- 本の長さ336ページ
- 言語日本語
- 出版社青土社
- 発売日2020/8/25
- 寸法13.8 x 2.9 x 19.6 cm
- ISBN-104791773020
- ISBN-13978-4791773022
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商品の説明
著者について
[著者]アーシュラ・K・ル=グウィン (Ursula K. Le Guin)
1929年カリフォルニア州バークレー生まれ。オレゴン州ポートランドに長く暮らし、SF・ファンタジー小説を中心に詩や評論、エッセイに至るまで、生涯にわたり多様で旺盛な創作活動を続けた。代表作としてはヒューゴー賞とネビュラ賞の二冠に輝いた『闇の左手』(早川書房)のほか、「ゲド戦記」シリーズ(岩波書店)、「空飛び猫」シリーズ(講談社)、「西のはての年代記」三部作(河出書房新社)などがある。2018年没。
[訳者]大久保ゆう(おおくぼ・ゆう)
翻訳家・翻訳研究者。主な訳書にE・ホーク『騎士の掟』(パンローリング)ほか。
[訳者]小磯洋光(こいそ・ひろみつ)
翻訳家。主な訳書にT・コール『オープン・シティ』(新潮社)ほか。
[訳者]中村仁美(なかむら・ひとみ)
立命館大学文学部国際文化学域准教授。主に二〇世紀以降のアイルランド文学を研究。
1929年カリフォルニア州バークレー生まれ。オレゴン州ポートランドに長く暮らし、SF・ファンタジー小説を中心に詩や評論、エッセイに至るまで、生涯にわたり多様で旺盛な創作活動を続けた。代表作としてはヒューゴー賞とネビュラ賞の二冠に輝いた『闇の左手』(早川書房)のほか、「ゲド戦記」シリーズ(岩波書店)、「空飛び猫」シリーズ(講談社)、「西のはての年代記」三部作(河出書房新社)などがある。2018年没。
[訳者]大久保ゆう(おおくぼ・ゆう)
翻訳家・翻訳研究者。主な訳書にE・ホーク『騎士の掟』(パンローリング)ほか。
[訳者]小磯洋光(こいそ・ひろみつ)
翻訳家。主な訳書にT・コール『オープン・シティ』(新潮社)ほか。
[訳者]中村仁美(なかむら・ひとみ)
立命館大学文学部国際文化学域准教授。主に二〇世紀以降のアイルランド文学を研究。
登録情報
- 出版社 : 青土社 (2020/8/25)
- 発売日 : 2020/8/25
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 336ページ
- ISBN-10 : 4791773020
- ISBN-13 : 978-4791773022
- 寸法 : 13.8 x 2.9 x 19.6 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 204,933位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 1,091位SF・ホラー・ファンタジー (本)
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2023年8月22日に日本でレビュー済み
ル=グインの自選短編集から未訳の作品を選んだもので、生前最後に発表された「水甕」まで収録されている。SFばかりではない。地上のどこかでの話(現想)と他の宇宙・内なる世界(幻実)の2つのパートに分かれていて、ハイニッシュユニバースの短編も含め、ル=グインの多様な作品が読める。
ル=グインの書いていることって、「みんなはこんなふうに思っているのかもしれないけれども、実際のところ、こんなことなんじゃないのかな」ということなんじゃないかな、と思う。というのがよくわかるのは、本作品中でもっともよみやすい「狼藉者」。「いばら姫」を題材にしたこの作品、別の視点からの語り直しではあるのだけれども、まあ誰もが王女にキスしたいわけじゃないよね、と。あるいは最初の作品「ホースキャンプ」は、「馬ですけど何か?」という感じ。
そう思うと、ル=グインにとってのフェミニズムも、「ジェンダーとかセックスとかみんなこんなふうに思っているのかもしれないけれど、本質的にはこうなんじゃないかな」ということなんじゃないか。でも、「こうなんじゃないかな?」と言われて困る人は、「竜が怖い」人でもあるんだろうな。
ル=グインは長編の方がはるかに読みやすいと思う。まあ、そうじゃないのもあるけど。でも、改めて短編を読むと、ル=グインがどれほど技巧的な作家なのか、ということがよくわかる。その技巧が、最初に言ったことをシンプルに伝えてくれる。「水甕」に示されているのは、ル=グイン自身が自分の小説を「ある所から別の場所に行く、場合によっては元の場所に戻る話」だとしていたし、構造はとてもシンプルなものが、最後まで続いていること。というか、作家としても元の場所に戻っているのかもしれない。
ル=グインの書いていることって、「みんなはこんなふうに思っているのかもしれないけれども、実際のところ、こんなことなんじゃないのかな」ということなんじゃないかな、と思う。というのがよくわかるのは、本作品中でもっともよみやすい「狼藉者」。「いばら姫」を題材にしたこの作品、別の視点からの語り直しではあるのだけれども、まあ誰もが王女にキスしたいわけじゃないよね、と。あるいは最初の作品「ホースキャンプ」は、「馬ですけど何か?」という感じ。
そう思うと、ル=グインにとってのフェミニズムも、「ジェンダーとかセックスとかみんなこんなふうに思っているのかもしれないけれど、本質的にはこうなんじゃないかな」ということなんじゃないか。でも、「こうなんじゃないかな?」と言われて困る人は、「竜が怖い」人でもあるんだろうな。
ル=グインは長編の方がはるかに読みやすいと思う。まあ、そうじゃないのもあるけど。でも、改めて短編を読むと、ル=グインがどれほど技巧的な作家なのか、ということがよくわかる。その技巧が、最初に言ったことをシンプルに伝えてくれる。「水甕」に示されているのは、ル=グイン自身が自分の小説を「ある所から別の場所に行く、場合によっては元の場所に戻る話」だとしていたし、構造はとてもシンプルなものが、最後まで続いていること。というか、作家としても元の場所に戻っているのかもしれない。
2020年10月21日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
帯には「著者自らが深く愛した、珠玉の未邦訳短編集」とあるように、極上のお話がぎゅっと詰め込まれた本でした。
現想編と幻実編に分かれており、前半は地球の(というよりアメリカ?)のどこかの誰かに住んでいる人々の話で、後半は異世界の話がメインとなっています。
私個人はSFと幻想譚が好きなので、特に「背き続けて」と「水甕」がよかったです。
「背き続けて」は、ウェレルから独立した惑星イェイオーウェイでの話。
ハヤカワ文庫「世界の誕生日」におさめられている「古い音楽と女奴隷たち」に連なるお話で、
あの二つの星がどうなっているのかずっと気になっていた私にとって、とても興味深い短編でした。
「水甕」は読むと教訓を得られたような、そんな気持ちになるお話。
今年になって著者の翻訳本が出されて読めるとは、とても幸せです。
中でも大久保氏の翻訳はとても読みやすく、自分の頭と心にすっとしみこんでいくような翻訳をされているので、今後の活躍を期待しております。
現想編と幻実編に分かれており、前半は地球の(というよりアメリカ?)のどこかの誰かに住んでいる人々の話で、後半は異世界の話がメインとなっています。
私個人はSFと幻想譚が好きなので、特に「背き続けて」と「水甕」がよかったです。
「背き続けて」は、ウェレルから独立した惑星イェイオーウェイでの話。
ハヤカワ文庫「世界の誕生日」におさめられている「古い音楽と女奴隷たち」に連なるお話で、
あの二つの星がどうなっているのかずっと気になっていた私にとって、とても興味深い短編でした。
「水甕」は読むと教訓を得られたような、そんな気持ちになるお話。
今年になって著者の翻訳本が出されて読めるとは、とても幸せです。
中でも大久保氏の翻訳はとても読みやすく、自分の頭と心にすっとしみこんでいくような翻訳をされているので、今後の活躍を期待しております。
2020年8月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
いろんな短編がはいっていて、よめごたえがある。特に背き続けてがよかった。