ランシエールの難しい本を訳したことのあるものとして・・・
この本はずっとずっと分かりやすく、しかも、万人に読んでもらいたい、重要なテーマを取り上げた、すばらしい本です。。
訳もとっても良いと思います。
教育の目的は、自ら学ぶ人間へと教え導くこと。
子供を持つことは、親から自由に思考する人間を育て上げること。
啓蒙とは、一個の自由な人格を作り上げること。
すべてこれらの行為には、本質的にパラドックスが含まれていますが、あまたの教育論はこんなパラドックスは無視して、あたかも確定した目的と手段で正しい教育ができるかのように議論を進めています。
「親は無くとも子は育つ」という俗言の方が、はるかに多くの「真理」を含んでいますが、同時にここには多くの「神秘」も含まれています。
ランシエールのこの小著は、ジャコトという特異な人物に仮託した語りのスタイルによって、あえてこの神秘そのものの解明に正面から取り組んではいません。しかし、現に「無知な教師による教育」を社会的な実践として取り組んだ壮大な実験の記録は、教育とは何か(同様に、子育てとは、啓蒙とは何か)を原理的に考え直そうとする際に、この上ない手掛かりとなることは間違いありません。
ここに示された歴史的事実、「実験データ」に、たとえば、やはり原理的なドゥルーズによる「学ぶこと」の理論、また、プラトン、アリストテレス以来の学習理論を、どのように接続していくことができるか、興味が尽きません。
ランシエールの意図とは別に、政治的文脈以外にも、あらゆる場面で読まれるべき基本文献ではないかと思われます。

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無知な教師 (叢書・ウニベルシタス) 単行本 – 2011/7/28
人間の平等という原則に目を閉ざし、知性の優劣という虚構によって人びとを序列化してきた近代教育。他者への侮蔑にもとづく「愚鈍化」の体制から身を引き剥がし、現実の不平等に立ち向かう知性の主体となるために必要な学びの原理とはどのようなものか? 十九世紀の「無知な教師」ジョゼフ・ジャコトがめざした革命的教育の教えをモデルに、今日の「侮蔑社会」の泥沼から解放された人間を待望する。
- 本の長さ240ページ
- 言語日本語
- 出版社法政大学出版局
- 発売日2011/7/28
- ISBN-104588009591
- ISBN-13978-4588009594
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商品の説明
著者について
1940年、アルジェに生まれる。パリ第8大学哲学科名誉教授。1965年、師のL.アルチュセールによる編著『資本論を読む』に参加するが、やがて決別。1975年から85年まで、J.ボレイユ、A.ファルジュ、G.フレスらとともに、雑誌『論理的叛乱』を牽引。現在に至るまで、労働者の解放や知性の平等を主題に、政治と芸術をめぐる独自の哲学を展開している。著書に、『プロレタリアたちの夜』『無言の言葉』『文学の政治』『解放された観客』ほか多数。邦訳に、『不和あるいは了解なき了解』『民主主義への憎悪』(インスクリプト)、『感性的なもののパルタージュ』(法政大学出版局)、『イメージの運命』(平凡社)ほか。
1978年生まれ。早稲田大学大学院文学研究科フランス文学専攻博士課程単位取得満期退学。専門はフランス現代詩および哲学。訳書にデリダ『シニェポンジュ』、ランシエール『感性的なもののパルタージュ』(法政大学出版局)がある。
1974年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科欧米系文化研究専攻博士課程単位取得満期退学。専門は現代フランス小説。共訳にル・クレジオ「探求の文学」(『現代詩手帖特集版 ル・クレジオ 地上の夢』思潮社)がある。
1978年生まれ。早稲田大学大学院文学研究科フランス文学専攻博士課程単位取得満期退学。専門はフランス現代詩および哲学。訳書にデリダ『シニェポンジュ』、ランシエール『感性的なもののパルタージュ』(法政大学出版局)がある。
1974年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科欧米系文化研究専攻博士課程単位取得満期退学。専門は現代フランス小説。共訳にル・クレジオ「探求の文学」(『現代詩手帖特集版 ル・クレジオ 地上の夢』思潮社)がある。
登録情報
- 出版社 : 法政大学出版局 (2011/7/28)
- 発売日 : 2011/7/28
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 240ページ
- ISBN-10 : 4588009591
- ISBN-13 : 978-4588009594
- Amazon 売れ筋ランキング: - 593,198位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2014年4月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2017年9月25日に日本でレビュー済み
畑違いの人間ですが。
偉大な指揮者に学ぶ無知のリーダーシップ(イタイ・タルガム)の参考文献からこの本に流れてきました。引用部分はごく限られたものでした。「無知なるものは別の無知なるものに、自分でも知らないことを教えられる。」そこそこ年齢と経験を重ねるとどんな人のどんな話にも感じたり、学んだりすることがあるということを逆説的に捉えると、「私は全く知らない誰かの話から、今必要としていることの知恵を得ることができる。」のような裏づけを、本当に真面目に論証されています。ついていくのは大変ですが。それでもやはり得るものは大きいと思います。
この本の主題である、教育や思考についての論証の先を考えることがこれからの我々に課されることということになりますが、例えば、現在AIがさかんに研究されておりますが、究極の学習者AIは誰からも教わることなく出来事の相関性とつながりを理解していきます。我々とは違う形で純粋に真理を探究していきます。教育という名の下に作られた我々は、そのAIの知性(又は出した答え)の真偽すら全うに判断できない現実を見ると、事実の関連性の探求から生まれた究極の知性を信じるかどうかとか、そこから何を学ぶのかを問われる時代になったかもしれないと感じます。
たまたまここにすれ違ったという人は読んでみてください。
偉大な指揮者に学ぶ無知のリーダーシップ(イタイ・タルガム)の参考文献からこの本に流れてきました。引用部分はごく限られたものでした。「無知なるものは別の無知なるものに、自分でも知らないことを教えられる。」そこそこ年齢と経験を重ねるとどんな人のどんな話にも感じたり、学んだりすることがあるということを逆説的に捉えると、「私は全く知らない誰かの話から、今必要としていることの知恵を得ることができる。」のような裏づけを、本当に真面目に論証されています。ついていくのは大変ですが。それでもやはり得るものは大きいと思います。
この本の主題である、教育や思考についての論証の先を考えることがこれからの我々に課されることということになりますが、例えば、現在AIがさかんに研究されておりますが、究極の学習者AIは誰からも教わることなく出来事の相関性とつながりを理解していきます。我々とは違う形で純粋に真理を探究していきます。教育という名の下に作られた我々は、そのAIの知性(又は出した答え)の真偽すら全うに判断できない現実を見ると、事実の関連性の探求から生まれた究極の知性を信じるかどうかとか、そこから何を学ぶのかを問われる時代になったかもしれないと感じます。
たまたまここにすれ違ったという人は読んでみてください。