題名は「きらり」と読みます。ただただ表紙の美しさに惹かれて購入しました。
「天地一転」
三河吉田城下の元「遊女」が、男を上げようと奮闘する息子を陰ながら手助けするのですが、
①後をつけてきた賭場の胴元の手下を「待ってたよう」と抱きつき接吻口撃で撃退する
とか、
②最後の最後に花火を成功させた息子がそのまま立ちながら気絶する。
など???な箇所もあるのですが、おおむね簡潔な書きぶりが、陰ながら息子を思う母の思いを印象づけています。
「椀の底」
江戸に店を持ちたい甲斐の売り紙商いの四代目。将来を誓う紙漉きの娘と、目の当たりにした江戸の姿の間で思い悩みます。その頭上に娘の弟が上げた花火から、武田家伝統の「百足」の絵の紙吹雪が舞い落ちる。「決して後へ引かぬ」百足に込められた意味は…。ラストで娘が示した百足の解釈が小気味良い秀作です。
「山の灯」
長崎のオランダ人と酒飲みの父に売られた遊女の交情。異国の地から故郷の母を思う男とその思いに打たれ抜け荷の片棒を自ら担ぐ女。安易なハッピーエンドでないラストが逆に余韻があります。
「闇に咲く」
簪職人の娘がケガで失明し嫁入りも破談に。目の見えないまま両親とともに簪作りに打ち込むうちに闇の中から見えてきたものは…。ラストはやはり読み手のためにもいま少しの描写が必要だったのではないでしょうか。
「雪の花道」
未来のない遊女が、江戸で未来を失った男のために知恵を授ける話。新潟県の新潟市と長岡市は今ではともに花火で有名な街。その街の遊女同士が歌や躍りを競う「遊女合戦」という設定が面白い。主人公の遊女の最後の台詞が良いオチとなっています。
「文」
百五十年の時を経て、吉田城下の旅籠「椿屋」に舞台が戻ります。時の主源兵衛は、江戸で医業をする長年の友を震災で失う。亡き友が手紙に書き残した「故郷でやりたかったこと」とは…。どの作品にも花火を打ち上げる場面があるのですが、本作のそれが一番美しい。まさに掉尾を飾る佳品です。
はじめて読む作家ですが、文章は簡潔で、その作品世界はご都合主義的展開(遊女が救われるとか目が見えなくても結婚できるとか)のない地に足のついたものです。他の作品も読みたくなりました。
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煌 (文芸書) 単行本 – 2017/7/7
志川節子
(著)
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「祝言は挙げられない」簪職人のおりよは、突然許婚の新之助にそう告げられた。理由はなんとなく思い当たる。新之助は形がよく、おりよは目が見えないから。二人で歩いていると耳の後ろが熱くなる。女たちの視線が痛い。どうして私だけこんなことに――。悔しさを押し殺し、手に残る感覚を頼りに仕事に没頭するおりよだったが……(「闇に咲く」)。遊女、船問屋、紙問屋、簪職人、花火師、旅籠屋……市井の人情を掬い取る、珠玉の時代小説。
- 本の長さ332ページ
- 言語日本語
- 出版社徳間書店
- 発売日2017/7/7
- ISBN-104198644357
- ISBN-13978-4198644352
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商品の説明
著者について
1971年島根県生まれ。早稲田大学卒業後、2003年「七転び」でオール讀物新人賞を受賞。江戸の商店街の人間模様を描いた『春はそこまで 風待ち小路の人々』が直木賞候補に。花魁を取り巻く人々の『手のひら、ひらひら 江戸吉原七色彩』。上野不忍池を舞台にした『花鳥茶屋せせらぎ』。ご縁を取り持つ三十路の女“おえん”『芽吹長屋仕合せ帖 ご縁の糸』がある。
登録情報
- 出版社 : 徳間書店 (2017/7/7)
- 発売日 : 2017/7/7
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 332ページ
- ISBN-10 : 4198644357
- ISBN-13 : 978-4198644352
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,065,689位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2023年2月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
前編にそれぞれ登場するのは各地域の花火。
年代、地域が違うそれぞれに生きる人々の心情を綴った短編集。立場身分は違っても一生懸命自分らしく生きる人々の炎が見えてくる。
前編にわたり詩情豊かに人生が語られる素敵な一冊。
年代、地域が違うそれぞれに生きる人々の心情を綴った短編集。立場身分は違っても一生懸命自分らしく生きる人々の炎が見えてくる。
前編にわたり詩情豊かに人生が語られる素敵な一冊。
2017年11月5日に日本でレビュー済み
実は最初Kindle版を買って、読み始めたのですが。
その後、紙の本を手にすると、なんと綺麗な本なのかと。
Kindleって便利ですが、紙の本の情緒とは違いますね。
ということで、紙の本になると、一気に読んでしまった。
さて、今回は、花火をテーマにした連作。
それぞれ時代が違うので、登場人物のリレーはなし。
舞台も、吉田(豊橋)、市川大門(山梨県甲府盆地近辺)、長崎、江戸、長岡、そして最後にまた、吉田に戻ってくる。
飯盛り女とその息子、紙商人と職人そしてその姉、丸山遊女と蘭人、盲人になった細工職人の娘と父親、長岡遊女と新潟遊女、旅籠家と医者。
彼らの愛・恋・友情などの人間関係、想いが、あるときは淡々と。
そしてあるときは、切々と描かれていく。
そして、今回の作品の感想ですが。
特に、行間に込められた余韻を重視している気がしました。
人によっては、そっけないと感じないかと思うほど。
でも、読んでいくと、じんわり伝わる感じで心地よい。
個人的には、おりよちゃんの話がすきですね。
うん。
いろんな絶望的な中でも、心に残る光がある。
それが、煌というタイトルに「きらり」と打たせた理由なのかな。
いや、私の勝手な考えですけれど。
是非、この美本を手にとってみて欲しいなと思います。
その後、紙の本を手にすると、なんと綺麗な本なのかと。
Kindleって便利ですが、紙の本の情緒とは違いますね。
ということで、紙の本になると、一気に読んでしまった。
さて、今回は、花火をテーマにした連作。
それぞれ時代が違うので、登場人物のリレーはなし。
舞台も、吉田(豊橋)、市川大門(山梨県甲府盆地近辺)、長崎、江戸、長岡、そして最後にまた、吉田に戻ってくる。
飯盛り女とその息子、紙商人と職人そしてその姉、丸山遊女と蘭人、盲人になった細工職人の娘と父親、長岡遊女と新潟遊女、旅籠家と医者。
彼らの愛・恋・友情などの人間関係、想いが、あるときは淡々と。
そしてあるときは、切々と描かれていく。
そして、今回の作品の感想ですが。
特に、行間に込められた余韻を重視している気がしました。
人によっては、そっけないと感じないかと思うほど。
でも、読んでいくと、じんわり伝わる感じで心地よい。
個人的には、おりよちゃんの話がすきですね。
うん。
いろんな絶望的な中でも、心に残る光がある。
それが、煌というタイトルに「きらり」と打たせた理由なのかな。
いや、私の勝手な考えですけれど。
是非、この美本を手にとってみて欲しいなと思います。