ギター、ボーカルのジャコ・ジャクジクが中心となっての音楽の様子だけど非常にキング・クリムゾンである。
ジャコのボーカルは時に大昔のクリムゾン、つまり、宮殿からレッドあたりまでのクリムゾンの中の抒情的な部分にぴったりのボーカルであり、ずっとブリューのボーカルを聴いてきた者にとってはびっくりである。もっとすごいのはメルのサックスで、もう、まさにあの頃のキング・クリムゾンそのもの。非常に孤独なメロディーの連続でなんだかフリップのギターフレーズのようなものまで飛び出す。というか、なんだかどこかで聞いたことのあるようなフレーズまで出てくる。ベースもドラムスもやたらとブルフォードその他していたりする。バックで響き渡るサウンド・スケープでやたらとアジるフリップは、もう魔術師そのもの。
そう、フリップも言うとおり、ここで聞かれる音楽には、間違いなくあのキング・クリムゾンが刻印されている。いにしえのクリムゾンの遺伝子のXやYが複雑に絡んでいる。地味で静かだけど、非常に説得力のある音楽である。
何でこんなことになったのか、フリップは、奇跡とか魔術だあ!みたいなことを相変わらず言っているが、実際のところは、ジャコ・ジャクジクさんが大のクリムゾンファンであり(それも、ディシプリンより前の)、自分のアルバムを作るに当たり、一度クリムゾン的な音楽を作ってみたいなあと思って、ジャムっていたところ、フリップがたまたまスタジオに来てこれは!と思い、参加したところ、とうとうここまでのキング・クリムゾン大会になってしまったのではないか、と思う(まあ、これが奇跡と言えば奇跡だけど)。
それにしても ここまで素晴らしい音楽を出してもフリップは未だ「キング・クリムゾンン」の名を復活させない。私なら「キング・クリムゾン復活!!!」として大いに金儲けしようと思うが、フリップにはそんないやしい考えはないようだ。まだまだクリムゾンにかけているようだ。
このアルバムだけでも、十分に素晴らしいが、ファンとしては、いやがうえにもフリップの、クリムゾンの次なる音楽を期待せずにはいられない。このアルバムの音楽を手がかりにして、次のクリムゾンのアルバム、楽曲がさらにすごいものになると思わざるを得ない今日この頃である。