カスタマーレビュー

2013年10月10日に日本でレビュー済み
他のレビューに重ねて書かれているが、読む順序が大切である。大切なので何度でも書いておこう。(私も先行レビュアーに感謝)
この本「2」を読む前に最初に「[映]アムリタ」を、その後「舞面真面とお面の女」「死なない生徒殺人事件」「小説家の作り方」を読み、「パーフェクトフレンド」を楽しんでおくことは必須である。
そこで今巻を読むと、過去作の登場人物がわんさか出てきて個性豊かに振舞う中でダイレクトに「[映]アムリタ」に繋がり、映画創作に始まり映画創作で閉じる全6冊の円環構造が完成する。それは自らの尾を飲むウロボロスではなく、円形になった蛇が自らより進化した子蛇を口から生み出す形だ。この子蛇も円を重ねるように成長し、同じように孫蛇を吐き出すだろう。ぐるぐる螺旋を描きながら進化し続ける創作者たちの物語と言えよう。
しかし残念ながら次の輪は著述されないだろう。何故なら次の輪は我ら現代の人間の理解を超える高度な創作をめぐる話になるからで、いかに野崎まどとはいえ、今は書けない。
そんな創作の限界を探求した超天才映画監督 最原最早の物語である。
純粋なミステリーではないものの、説明抜きの直感的人間の行動を論理的に解明していこうと試みるので、読後感は推理小説のそれに似ている。いつもの重層的どんでん返しもあり、著者は読者の期待を裏切らないし、これまでの巻と諸々が完璧に整合しているし、見事である。ただ、そのために理が勝ちすぎていて、感動より納得が先に来てしまうのがちょっと残念。最原最早が持つ人の枠を越えた魅力、例えば艶やかさや可愛らしさをもうちょっと確認できると、最後の衝撃がもっと大きくなっただろう。この衝撃度だけでいえば「[映]アムリタ」の方が上だと思う。(まあ、最初に読んだからかもしれないが)
ところで、前5作には全て最後にあれはどうなったのかなと悩む「解明されないもの」が説明するまでも無いとして残されていたが、今巻ではそれらのオープンマターを相当拾ってくれているのがすごい。ひょっとしたら第1作の時から、遅くとも「パーフェクトフレンド」を書く前に、「2」の構想は出来上がっていたに違いない。逆に言えば、今巻を読まないと実は前5巻を読み切ったことにならないということである。だから読むしかないのですよ、あなた。但し、順序を守って最後にね。
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