※旧名「紅茶好きのサバトラ」です。再掲載です。
既に読んでいたが、三島賞ノミネートを知り、改めて本を手にした。
とにかくそのボリュームに圧倒されるが、思ったより楽に読み通す事が出来る。これは、学者離れした叙述の才を持つ著者に負うところが大きいだろう。また、構成も非常に緻密で、あたかも美しいタペストリーを目にしたような気持ちになる。
もっとも、その内容は、単に『読みやすい』、『美しい』で終わらせられるほど単純ではない。グローバリゼーション、宗教、父性の喪失と母性の台頭等。これら重厚な題材が、日本にとってのエポックメイキングである1995年を舞台に語られる。
これらの題材で個人的に目を見張ったのが、殺される対象たる『父親』の影の薄さと、それと対比するように顕在化してくる『母親』の存在である。
確かに本作の登場人物は、各々、自分の『父』と葛藤してはいる。しかしその『父親』は存在感が薄い者、父性よりは母性を感じる者、つまりそもそも『父殺し』に値すべき父親なのか疑問が残る。
では母親はどうか。ここで、ある登場人物に関わる二人の『母』(うち一人は実母である)について注目したい。一方はまさに聖母ともいえる深い慈愛を持ち、誰からも愛される存在。これに対し他方は登場人物の意思や人生を直接的、または間接的に支配している。
私はその姿に生命を育み慈しむ一方で、全てを飲み込んでしまうグレートマザーを重ねずにはいられない。
父性との均衡が破れ、台頭する母性は世界に、人の心にどんな影響を与えるのか。この小説が投げかけた問いは、本作に含まれる他の題材同様重く、難解である。
さて、本家『カラマーゾフの兄弟』は『父殺し』を主題としている。しかし、父を殺す過程は描かれていても、その後までは描かれてはいない。そういう意味では時代も舞台も違えども、父が殺された―――父が消えゆく世界を描いた本作は、まごうかたなきafter『カラマーゾフの兄弟』、つまり正当なる続編といえるだろう。
プライム無料体験をお試しいただけます
プライム無料体験で、この注文から無料配送特典をご利用いただけます。
非会員 | プライム会員 | |
---|---|---|
通常配送 | ¥410 - ¥450* | 無料 |
お急ぎ便 | ¥510 - ¥550 | |
お届け日時指定便 | ¥510 - ¥650 |
*Amazon.co.jp発送商品の注文額 ¥3,500以上は非会員も無料
無料体験はいつでもキャンセルできます。30日のプライム無料体験をぜひお試しください。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
新カラマーゾフの兄弟 下(上・下2巻) 単行本 – 2015/11/19
亀山郁夫
(著)
{"desktop_buybox_group_1":[{"displayPrice":"¥2,310","priceAmount":2310.00,"currencySymbol":"¥","integerValue":"2,310","decimalSeparator":null,"fractionalValue":null,"symbolPosition":"left","hasSpace":false,"showFractionalPartIfEmpty":true,"offerListingId":"zKL4Z5WhXIRxPMNZm1JXqjXSjJremmKYHK%2Fwy4yiqwTZfO%2FuvHgh6KFIJBE8rLk7fEOePXNkzUplsxgie5JbzBylrbbPZZksHWNtedIDc5K%2F3SweNauHNWl%2FVYzBQMdgjrq61XXApf0%3D","locale":"ja-JP","buyingOptionType":"NEW","aapiBuyingOptionIndex":0}, {"displayPrice":"¥1,112","priceAmount":1112.00,"currencySymbol":"¥","integerValue":"1,112","decimalSeparator":null,"fractionalValue":null,"symbolPosition":"left","hasSpace":false,"showFractionalPartIfEmpty":true,"offerListingId":"zKL4Z5WhXIRxPMNZm1JXqjXSjJremmKYh7TIJlhxLDDwBvt8i9gB83x4V0mO1CsqF3ofz9AuuUPwNaUNYICEZeVeq%2FHwNCzMV5qQyj3OYgLALwSMWofrstGF0OXMKPLgtaUan6HxRjRZFhk9ovl2RV%2BikRJnx5N7LcEy8RPb3ObHwG2EJAjaLQ%3D%3D","locale":"ja-JP","buyingOptionType":"USED","aapiBuyingOptionIndex":1}]}
購入オプションとあわせ買い
「カラマーゾフの兄弟」は未完だった……。
ミリオンセラーの翻訳者が、「世界文学最高作」と言われる傑作を
19世紀ロシアから現代日本に舞台を移し完結させた、桁はずれの著者初小説。
ドストエフスキーとの驚愕のコラボレーションから生まれた、
ノンストップ・ミステリー巨篇。
朝日(1/17、12/17) 日経(1/3、10/7)
東京・中日(12/6)毎日(11/29)読売(11/10)等で話題
めざましテレビ(フジTV11/20)で紹介
【絶賛の声】
見事に造形された人物群像、濃密で精気あふるる描写、巧みなストーリーテリング。
亀山郁夫にはドストエフスキーが憑依している。とてつもない大仕事。
——辻原登
ドストエフスキーの読解がそのまま人生である著者だからこそ書けた、
壮大なメタ批評にしてメタ私小説。これは文学的事件だ。
——東浩紀
常人の業ではない。亀山郁夫によるドストエフスキー殺しだ。
あまりに優雅で、見事で、面白く、恐ろしい。
——沼野充義
人間が生きていることの意味を根源から問い、
長編小説の面白さを満喫させてくれる傑作。すべての読書人に勧める。
——佐藤優
【編集者からも感動の声】
亀山さんは高すぎる知性と獰猛なる精神を併せ持っている。
世界と切り結ぶ凄い文学が生まれた。
——大川繁樹(文藝春秋)
現代の黙示録。読み始めたら止まらないジェットコースター哲学小説!
ラストは圧倒的。
——長谷川浩(集英社)
これは作者にとっての劫罰か? ここまでやるの、亀山さん!
——松井 純(平凡社)
父殺し、野方、パラレルワールド……
『海辺のカフカ』への「不遜な」挑戦を歓迎したい。
——今泉眞一(新潮社)
『新カラ兄』から『カラ兄』へと遡る、これもまた新しいドストエフスキー発見の道。
——駒井 稔(光文社)
現代日本に教養小説が生まれた。この世界を味わい尽くすには、
何よりも深い心の経験が必要だ。
——守田省吾(みすず書房)
これは現代の古典だ。君は『新カラマーゾフ』を読んだのか、
と必ずや尋ねられるだろう。
——坂 達也(小学館)
一瞬も目を離せないスリリングな12日間。ミステリーと自伝のみごとな融合。
——加藤 剛(NHK出版)
「1995年」がついに小説になった。現代史の真実を浮彫にした「最後の社会派ミステリー」!
——中川和夫(ぷねうま舎)
タイトルは世界文学の頂点。そして中身は、「現代のオイディプス」か!
——川端 博(名古屋外国語大学出版会)
ミリオンセラーの翻訳者が、「世界文学最高作」と言われる傑作を
19世紀ロシアから現代日本に舞台を移し完結させた、桁はずれの著者初小説。
ドストエフスキーとの驚愕のコラボレーションから生まれた、
ノンストップ・ミステリー巨篇。
朝日(1/17、12/17) 日経(1/3、10/7)
東京・中日(12/6)毎日(11/29)読売(11/10)等で話題
めざましテレビ(フジTV11/20)で紹介
【絶賛の声】
見事に造形された人物群像、濃密で精気あふるる描写、巧みなストーリーテリング。
亀山郁夫にはドストエフスキーが憑依している。とてつもない大仕事。
——辻原登
ドストエフスキーの読解がそのまま人生である著者だからこそ書けた、
壮大なメタ批評にしてメタ私小説。これは文学的事件だ。
——東浩紀
常人の業ではない。亀山郁夫によるドストエフスキー殺しだ。
あまりに優雅で、見事で、面白く、恐ろしい。
——沼野充義
人間が生きていることの意味を根源から問い、
長編小説の面白さを満喫させてくれる傑作。すべての読書人に勧める。
——佐藤優
【編集者からも感動の声】
亀山さんは高すぎる知性と獰猛なる精神を併せ持っている。
世界と切り結ぶ凄い文学が生まれた。
——大川繁樹(文藝春秋)
現代の黙示録。読み始めたら止まらないジェットコースター哲学小説!
ラストは圧倒的。
——長谷川浩(集英社)
これは作者にとっての劫罰か? ここまでやるの、亀山さん!
——松井 純(平凡社)
父殺し、野方、パラレルワールド……
『海辺のカフカ』への「不遜な」挑戦を歓迎したい。
——今泉眞一(新潮社)
『新カラ兄』から『カラ兄』へと遡る、これもまた新しいドストエフスキー発見の道。
——駒井 稔(光文社)
現代日本に教養小説が生まれた。この世界を味わい尽くすには、
何よりも深い心の経験が必要だ。
——守田省吾(みすず書房)
これは現代の古典だ。君は『新カラマーゾフ』を読んだのか、
と必ずや尋ねられるだろう。
——坂 達也(小学館)
一瞬も目を離せないスリリングな12日間。ミステリーと自伝のみごとな融合。
——加藤 剛(NHK出版)
「1995年」がついに小説になった。現代史の真実を浮彫にした「最後の社会派ミステリー」!
——中川和夫(ぷねうま舎)
タイトルは世界文学の頂点。そして中身は、「現代のオイディプス」か!
——川端 博(名古屋外国語大学出版会)
- 本の長さ776ページ
- 言語日本語
- 出版社河出書房新社
- 発売日2015/11/19
- 寸法14 x 4.5 x 19.8 cm
- ISBN-104309024238
- ISBN-13978-4309024233
よく一緒に購入されている商品
対象商品: 新カラマーゾフの兄弟 下(上・下2巻)
¥2,310¥2,310
最短で6月13日 木曜日のお届け予定です
残り1点(入荷予定あり)
¥2,090¥2,090
最短で6月13日 木曜日のお届け予定です
残り1点(入荷予定あり)
総額:
当社の価格を見るには、これら商品をカートに追加してください。
ポイントの合計:
pt
もう一度お試しください
追加されました
一緒に購入する商品を選択してください。
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
商品の説明
著者について
1949年栃木県生まれ。社会現象ともなったミリオンセラー「カラマーゾフの兄弟」の名訳で知られ、本国ロシアでプーシキン賞を贈られた。著訳書多数。『白痴』の新訳(光文社文庫)も刊行開始。
登録情報
- 出版社 : 河出書房新社 (2015/11/19)
- 発売日 : 2015/11/19
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 776ページ
- ISBN-10 : 4309024238
- ISBN-13 : 978-4309024233
- 寸法 : 14 x 4.5 x 19.8 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 37,986位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 978位日本文学
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
カスタマーレビュー
星5つ中3.7つ
5つのうち3.7つ
全体的な星の数と星別のパーセンテージの内訳を計算するにあたり、単純平均は使用されていません。当システムでは、レビューがどの程度新しいか、レビュー担当者がAmazonで購入したかどうかなど、特定の要素をより重視しています。 詳細はこちら
23グローバルレーティング
虚偽のレビューは一切容認しません
私たちの目標は、すべてのレビューを信頼性の高い、有益なものにすることです。だからこそ、私たちはテクノロジーと人間の調査員の両方を活用して、お客様が偽のレビューを見る前にブロックしています。 詳細はこちら
コミュニティガイドラインに違反するAmazonアカウントはブロックされます。また、レビューを購入した出品者をブロックし、そのようなレビューを投稿した当事者に対して法的措置を取ります。 報告方法について学ぶ
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2016年3月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
これは基本的に母殺しの物語だと思います。
これは、講演会でも強調されていたことでした。
母殺しの罪を背負って生きる黒木家の兄弟たち。園子さんの圧倒的な影で生きまどう4兄弟。
母に憑かれたという意味で悲劇的なのは、幸司ではないでしょうか。
そして、瑠佳と香奈の二人もその影響下にある。
とくに瑠佳は、実母との問題を抱え、園子さんとの間に同性愛に近い憧れを感じています。
そしてラスト。湖から出てきた青年の胸に光るもの。思えば、それは、かつては母親のペンダントが掛けられていた場所なのですね。
父の死のあとにせり出した母の圧倒的な存在は、概ね否定的に扱われがちですが、ここでは、驚くほど肯定的に描かれている。
著者の徹底したマザコンぶりがうかがえます。
いずれにしても、問題は、エピローグです。
黒木リョウは、なぜ、家出をして姿をくらまし、湖に入っていったのか。
理沙との関係にどういう問題が生じたのか?
それがはっきりすれば、黒木リョウの復活はさらに感動が深まったかもしれません。
その動機がはっきりしない点にこの小説の「明暗」があると言い方も可能でしょうが、そこはもっと書き込んでほしかった。
いずれにせよ、構成は舌を巻くほどの精緻さです。
全体をとおして気が抜けませんでした。
最後に思うことは、この小説のリズムに乗り、深みに入るには、やはり「カラマーゾフの兄弟」を熟知している必要があるということです。
これは、講演会でも強調されていたことでした。
母殺しの罪を背負って生きる黒木家の兄弟たち。園子さんの圧倒的な影で生きまどう4兄弟。
母に憑かれたという意味で悲劇的なのは、幸司ではないでしょうか。
そして、瑠佳と香奈の二人もその影響下にある。
とくに瑠佳は、実母との問題を抱え、園子さんとの間に同性愛に近い憧れを感じています。
そしてラスト。湖から出てきた青年の胸に光るもの。思えば、それは、かつては母親のペンダントが掛けられていた場所なのですね。
父の死のあとにせり出した母の圧倒的な存在は、概ね否定的に扱われがちですが、ここでは、驚くほど肯定的に描かれている。
著者の徹底したマザコンぶりがうかがえます。
いずれにしても、問題は、エピローグです。
黒木リョウは、なぜ、家出をして姿をくらまし、湖に入っていったのか。
理沙との関係にどういう問題が生じたのか?
それがはっきりすれば、黒木リョウの復活はさらに感動が深まったかもしれません。
その動機がはっきりしない点にこの小説の「明暗」があると言い方も可能でしょうが、そこはもっと書き込んでほしかった。
いずれにせよ、構成は舌を巻くほどの精緻さです。
全体をとおして気が抜けませんでした。
最後に思うことは、この小説のリズムに乗り、深みに入るには、やはり「カラマーゾフの兄弟」を熟知している必要があるということです。
2016年2月6日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
上下巻を2か月間掛けて読みました。
下巻など電車の中で2度落としました。
居眠りで。
海辺のカフカ+1Q84+死霊+カラマーゾフの兄弟÷4=新カラマーゾフの兄弟
ちょっと評価し過ぎか。嘘が多い。つまり小説になっていない。
校正が入っていないのではないかと思われます。
貸切なのにそれほど混んでいないラウンジ。
ゴンドラから降りて筏に戻ったり。
環八に上り下りがあったり、他は忘れたが、つじつまが合わない流れがいくつもありました。
結局はカラマーゾフの看板を借りて持論発表をしているだけなのではないでしょうか。
大体翻訳では登場人物の名前を整理したのに、ここではわざわざ カタカナにしている。
出版人が絶賛していますが、裸の王様です。
最後まで読み通した引力は亀山郁人への関心と期待からでした。
それといきなり上下二巻を揃えて買ってしまったので。
なにしろ亀山郁夫翻訳のドストエフスキーは全部読んでいるのですから。
しかし、期待は見事に裏切られましたが。
ただカラマーゾフの兄弟は悪霊の「チーホンのもとで」が当時発表されなかったことで生まれたのだなーと気が付きました。
あーやっと違う本にとりかかれる。
下巻など電車の中で2度落としました。
居眠りで。
海辺のカフカ+1Q84+死霊+カラマーゾフの兄弟÷4=新カラマーゾフの兄弟
ちょっと評価し過ぎか。嘘が多い。つまり小説になっていない。
校正が入っていないのではないかと思われます。
貸切なのにそれほど混んでいないラウンジ。
ゴンドラから降りて筏に戻ったり。
環八に上り下りがあったり、他は忘れたが、つじつまが合わない流れがいくつもありました。
結局はカラマーゾフの看板を借りて持論発表をしているだけなのではないでしょうか。
大体翻訳では登場人物の名前を整理したのに、ここではわざわざ カタカナにしている。
出版人が絶賛していますが、裸の王様です。
最後まで読み通した引力は亀山郁人への関心と期待からでした。
それといきなり上下二巻を揃えて買ってしまったので。
なにしろ亀山郁夫翻訳のドストエフスキーは全部読んでいるのですから。
しかし、期待は見事に裏切られましたが。
ただカラマーゾフの兄弟は悪霊の「チーホンのもとで」が当時発表されなかったことで生まれたのだなーと気が付きました。
あーやっと違う本にとりかかれる。
2016年4月19日に日本でレビュー済み
『新カラマーゾフの兄弟』を読み上げてからほぼ三月になるが、日が経つにつれ、その印象は急速に失われつつある。黒木家の確執もそうだが、Kの手記もそうだ。『新…』を読んだ後で、原作を(亀山氏の翻訳でですが)読み直したのがいけなかったのか。
何人かのレヴューワーも仰しゃっているように、黒木家の物語はほぼ原作の焼き直しなので――亀山氏におかれましては失礼をお赦しください――、原作を再読した後では、尚更印象が薄まるし、Kの手記は、大学に勤務する先生の日常や心理が描かれていて、それなりに興味深いものの、所謂文学的感興を引き起こしてくれるものではない。(人物にドフトエフスキー的破綻がないと云おうか、スケールが小さいと云おうか、要は感情移入がしづらいのだ。)
やはり亀山氏は『新…』ではなく、『続…』に挑戦すべきだったのではあるまいか。
水村美苗氏の『続明暗』は、その文体と云い、内容と云い、漱石を咀嚼し尽くした者にしか書けない、或る意味で「傑作」だった。また、『本格小説』は、『嵐が丘』に想を得たと水村氏は謙遜しているが、それはおそらく「語り方」を模倣したと云うことであって、語られる内容は『嵐が丘』とは大きく異なっており、原作の焼き直しと云う印象は全く感じられない、これも傑作だった。
亀山氏も、これまでの著作を拝見する限り、あれだけドフトエフスキーを読み込んでこられたのだから、やってやれないはずはない。有難いことに、漱石の続編を書くのと違って、「文体」の心配をする必要はなかろう。「独特で魅力的な文体」とまでは云わないが、亀山氏の翻訳の文体に対しては誰も文句は付けないであろうから、あの文体で、ドフトエフスキーの「語り方」を大いに模倣して、『続…』を是非書いていただきたい。ミーチャ、イワン、アリョーシャがその後どんな人生を送ることになるのか、私を含め、多くの人が知りたいと思っているはずだ。ドフトエフスキーが憑依した亀山氏にしか書けない『続カラマーゾフの兄弟』を期待する。
何人かのレヴューワーも仰しゃっているように、黒木家の物語はほぼ原作の焼き直しなので――亀山氏におかれましては失礼をお赦しください――、原作を再読した後では、尚更印象が薄まるし、Kの手記は、大学に勤務する先生の日常や心理が描かれていて、それなりに興味深いものの、所謂文学的感興を引き起こしてくれるものではない。(人物にドフトエフスキー的破綻がないと云おうか、スケールが小さいと云おうか、要は感情移入がしづらいのだ。)
やはり亀山氏は『新…』ではなく、『続…』に挑戦すべきだったのではあるまいか。
水村美苗氏の『続明暗』は、その文体と云い、内容と云い、漱石を咀嚼し尽くした者にしか書けない、或る意味で「傑作」だった。また、『本格小説』は、『嵐が丘』に想を得たと水村氏は謙遜しているが、それはおそらく「語り方」を模倣したと云うことであって、語られる内容は『嵐が丘』とは大きく異なっており、原作の焼き直しと云う印象は全く感じられない、これも傑作だった。
亀山氏も、これまでの著作を拝見する限り、あれだけドフトエフスキーを読み込んでこられたのだから、やってやれないはずはない。有難いことに、漱石の続編を書くのと違って、「文体」の心配をする必要はなかろう。「独特で魅力的な文体」とまでは云わないが、亀山氏の翻訳の文体に対しては誰も文句は付けないであろうから、あの文体で、ドフトエフスキーの「語り方」を大いに模倣して、『続…』を是非書いていただきたい。ミーチャ、イワン、アリョーシャがその後どんな人生を送ることになるのか、私を含め、多くの人が知りたいと思っているはずだ。ドフトエフスキーが憑依した亀山氏にしか書けない『続カラマーゾフの兄弟』を期待する。
2017年5月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
家族のリクエストによる注文ですが、アマゾンプライムでないマーケットプレイスの古書はお安くても同一店でも、一冊ごとに257円送料がかかるようですね。
最初、やむなく別々に選んだのですが、2冊セット販売のお店があったので、結果的にトータルでは安く購入できました。
公立図書館で借りるよりは格段に美本だったと思います。
最初、やむなく別々に選んだのですが、2冊セット販売のお店があったので、結果的にトータルでは安く購入できました。
公立図書館で借りるよりは格段に美本だったと思います。
2016年6月5日に日本でレビュー済み
深遠なテーマを本家から借りてくるのも結構。
小説風に自論を展開するのも結構。
でもね、亀山さん。ドストエフスキーのカラマーゾフの兄弟は深遠なテーマが全てじゃないんですよ。
父殺し、大審問官、神はいるのかいないのか、それだけじゃ100年、200年たっても愛される文学にはならないんですよ。
何が必要か分かりますか?
小説家が何に苦心しているかお分かりですか?
読者を魅了する面白さが無いと駄目なんですよ。
だから、はっきり言います。
あなたの小説はすぐに忘れ去られます。
なぜなら面白くないから。
以上
小説風に自論を展開するのも結構。
でもね、亀山さん。ドストエフスキーのカラマーゾフの兄弟は深遠なテーマが全てじゃないんですよ。
父殺し、大審問官、神はいるのかいないのか、それだけじゃ100年、200年たっても愛される文学にはならないんですよ。
何が必要か分かりますか?
小説家が何に苦心しているかお分かりですか?
読者を魅了する面白さが無いと駄目なんですよ。
だから、はっきり言います。
あなたの小説はすぐに忘れ去られます。
なぜなら面白くないから。
以上
2016年3月22日に日本でレビュー済み
ドストエフスキーのカラマーゾフの兄弟が好きだっただけにこの作品は非常に残念。最後まで、”いつ面白くなるんだろう?”と思いながら終わってしまった。帯にこの本をものすごく絶賛しているようなことが沢山書かれていて、それが買うきっかけにもなったのだがこれは何なのだろう?(あ、よく見たら誰も面白いなんて書いてなかった、、)(曰く、挑戦、圧倒的、凄い文学、哲学小説、新しいドスト、教養小説、現代の古典、社会はミステリー、一瞬も目を離せない、ミステリーと自伝の見事な融合、タイトルは世界文学の頂点、中身は現代のオイディプス、等々…)
他に面白い本はたくさんある。4000円以上かけてあえてこれを読む必要は全くないと感じた。
他に面白い本はたくさんある。4000円以上かけてあえてこれを読む必要は全くないと感じた。