内容としては割と王道のボーイミーツガールもので、ひねくれた少年が妖精と過ごしていく中で心を開いて成長して父子家庭の苦悩と向き合う、という話。
ただし設定は歪。繊細な絵柄と表現で美しく見えるが、病的なほど歪。
主人公の少年は典型的な母親の愛情が一切存在しなかったゆえの極端に極端を重ねた性格で、心を開かなければ邪悪といえるほど態度が悪く、心を一度ふと開けば中身は幼児のまま止まったような純粋で無垢過ぎる中身。その豹変ぶりは妖精も「気持ち悪い」と怯えるほど極端で、愛情ある父子家庭だからこそ育まれた二面性は本当に歪です。
対する妖精は「首が花の種になる恋の妖精」といえばメルヘンチックなものですが、実際に出てきたのは人間と何ら変わらない大きさの生首。感情も感覚も人間と同じの生首でもちろん普通に喋るし常識もあるし一般的な大人の女性と何ら変わりません。その上で「花の種になるために植えられることは恋の役に立てることで何ら嫌ではない」という部分はブレない異常性。これまた歪です。
そして息子や亡くした奥さんへの愛情も深くそれでも新しい恋をして母親として迎え入れようとする優しい父親。息子にメルヘンなありえないだろうというおとぎ話のおまじないを聞いて、即日実行して生首を笑顔で持って帰ってきて、息子が風邪を引けばデートを取りやめるほど繊細で、でも首が種になっていくのは何ら疑問に思ってない父親。ある意味一番歪です。
じゃあその生首妖精は大人なら皆知ってるし動じないようなものなのか?というと作中でそれを見かけた人が気絶しました。
まるで悪い幻覚でも見てるかのような歪な光景なのにそれぞれキャラは見目麗しく雰囲気も花をモチーフにしただけあって美しさにあふれてます。そして物語は本当にその流れだけ見ればとてもピュアなお話です。
だからこそ不気味で異常で、だからこそかえってそれぞれのキャラの純粋さが余計に際立ちます。それがぐっと染み入る。純粋さを表現するために用意された狂気というか。
毒のある綺麗な花を眺めるような気持ちに浸りたい人にはもってこいではないでしょうか。
ただ、首が出てくるまでの展開はとってつけたようなほどあっさりで雑で、それぞれの設定の異常さや経緯などはろくすっぽ語られません。だからお伽話を聞いて次のページで首持ってきたよ!って父親がマジで怖いです。表現したい部分を追っかけるあまり他がかなり急き気味で唐突な内容になってしまってます。
そこはもう少しもうちょっと描写が欲しかった。流石に唐突過ぎてえっそこスルーなの?いいの?ってなる部分が多く、戸惑いで内容に入りきれないのが惜しいです。
ただ、最後についてきた本編とは関係のない読み切りの内容のえげつなさ過ぎる狂気と理由の分からない恐怖を一切の設定説明なく表現してるあたり、元々あまり裏側をはっきりさせないタイプの作家さんなのかもしれません。ちなみにこの読み切りは怪現象を題材にした少女の思春期特有の性への恐怖心を内容にしたもの……だと思いますが生々しさと理不尽さが際立ちすぎてほぼ悪夢かホラーの類です。絵はすごく可愛いのに。
個人的にはそういう狂気と絵の優しさのギャップは最高に好みなのでものすごく気に入りましたが、やっぱり急き気味な流れとあからさまにこれは人を選ぶだろうなという内容から☆4とします。
でも個人的には大好きです。2巻で完結するようなので、合うも合わないも八卦というくらいの心持ちでお手にとって見てはいかがでしょうか。
おすすめです。色んな意味で。

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首花は咲きゆく 1巻 (ビームコミックス) コミック – 2016/5/14
高江洲 弥
(著)
僕が“首"と暮らした30日間
僕が“首"と暮らした30日間母親を亡くし、
心を閉ざす少年・リラは、ふと吐いた嘘がきっかけで
“首"だけになった妖精・ベルタと暮らすことに。
ベルタの世話をする生活が、孤独な少年を徐々に変えて行く。
えんため大賞出身の気鋭・高江洲弥の初コミックス。
僕が“首"と暮らした30日間母親を亡くし、
心を閉ざす少年・リラは、ふと吐いた嘘がきっかけで
“首"だけになった妖精・ベルタと暮らすことに。
ベルタの世話をする生活が、孤独な少年を徐々に変えて行く。
えんため大賞出身の気鋭・高江洲弥の初コミックス。
- 本の長さ176ページ
- 言語日本語
- 出版社KADOKAWA/エンターブレイン
- 発売日2016/5/14
- ISBN-104047341320
- ISBN-13978-4047341326
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登録情報
- 出版社 : KADOKAWA/エンターブレイン (2016/5/14)
- 発売日 : 2016/5/14
- 言語 : 日本語
- コミック : 176ページ
- ISBN-10 : 4047341320
- ISBN-13 : 978-4047341326
- Amazon 売れ筋ランキング: - 463,956位コミック
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2016年7月10日に日本でレビュー済み
ある国作のアレな育成ゲーム、トマックの再来かよと思いながら、
まぁ物珍しさに購入。表紙絵の通り、味のある絵柄で雰囲気はありました。
少年の首花に対する態度が、ある点で変化し、
最後はまぁ別れを惜しむようになるという・・・
少年が何かと一時の特別な時間を過ごし成長する物語です。
ただ、少年の心の変化が急すぎるし、触れ幅が大きすぎるので
全く理解できなかった。虐待レベルから急に大好きってなんで!?
慕われるようになった首花も、最初以上につっけんどんな対応だし。
感情移入ができない&別れと成長の展開部分もとりたてて
斬新さもないので、★2で。
まぁ物珍しさに購入。表紙絵の通り、味のある絵柄で雰囲気はありました。
少年の首花に対する態度が、ある点で変化し、
最後はまぁ別れを惜しむようになるという・・・
少年が何かと一時の特別な時間を過ごし成長する物語です。
ただ、少年の心の変化が急すぎるし、触れ幅が大きすぎるので
全く理解できなかった。虐待レベルから急に大好きってなんで!?
慕われるようになった首花も、最初以上につっけんどんな対応だし。
感情移入ができない&別れと成長の展開部分もとりたてて
斬新さもないので、★2で。