p.21に、「外界の状況を的確に認識し行動するためには、まず、外界の情報を感覚系で処理する前に外界を予測し、意識なしに働く直感モデル(予測のモデル)が脳内で働く。この直感モデルにもとづく行動によって、外界に働きかけをし、その外界からの応答を感覚系でとらえることによって、変化する外界を推論し、次の行動を決定する。その行動が外界に適合しなければ、脳内のモデルを再び修正するというダイナミックな情報処理を繰り返す。人間は環境からの刺激をもとに学習と記憶を用いて、脳内に外界の脳内モデル(再現的世界)を構築していく。」とあり、
p.134から「遠近法と脳の記憶」として、例1:「モナリザ」を読み解く、例2:モネの絵を読み解く、という具体例があげられています。
面白かったです。本書の内容要約が、カバーの記述になされていて、
「ダイナミックな脳内世界
芸術脳は生まれつきではなく、シナプスの可塑性にもとづく学習と記憶によって後天的につくり出されるという。
環境に適応するために脳内に形成される外界の世界(再現的世界)と脳内に情報を創発させる情報創成の世界が干渉し合うことで、人それぞれの新しい世界=創造性が生み出される。芸術とは自分の存在を証明するために脳の外と内が相互作用した結果に他ならない。」
とあります。ここでの定義は、創作者としての芸術家および芸術創作のありようを脳科学的に表現していることになります。
では、芸術における「深み」のベクトルは?
換言すると、芸術認識にかかるア・プリオリの前後にある、再現-再認、先在ー先験のうち「先験」には、精神的悟達の「再帰性」が関与します。これが、本作第3章「情報創成の役者たち―学習と記憶」のなかの記載により、いかなる安定な構造(アトラクタ)を形成していると説明できるか、です。
学問史のうえでは、ピアジェの提唱したシェマ(スキーマ)の定義が、脳科学により補強されたか否かは、かつての心理学対生理学の議論の改善のゆくえを知ることとなります。心理学、生理学ともに学問的不備があって、相補的に前進しなくてはならないものでした。脳科学は、その相補の必要というみじめな環境を脱却するものとなったか否かです。
ちなみに、第5章「筆者の絵画と音楽とダンス」の2「脳と音楽」は、個人的には、もう少し補説を求めたいところです。音の追究に援用できるだけの量と質とが欲しいところです。
Kindle 価格: | ¥1,012 (税込) |
獲得ポイント: | 508ポイント (50%) |
を購読しました。 続刊の配信が可能になってから24時間以内に予約注文します。最新刊がリリースされると、予約注文期間中に利用可能な最低価格がデフォルトで設定している支払い方法に請求されます。
「メンバーシップおよび購読」で、支払い方法や端末の更新、続刊のスキップやキャンセルができます。
エラーが発生しました。 エラーのため、お客様の定期購読を処理できませんでした。更新してもう一度やり直してください。

無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
芸術脳の科学 脳の可塑性と創造性のダイナミズム (ブルーバックス) Kindle版
科学者であり芸術家でもある著者が最新の脳研究から新たな境地に挑む! 芸術脳は生まれつきではなく、シナプスの可塑性にもとづく学習と記憶によって後天的につくり出されるという。脳内に形成される外界の世界(再現的世界)と脳内に情報を創発させる情報創成の世界が干渉し合うことで、新たな創造の世界が生み出されるという。内と外の世界のつなぎ方次第であなたも芸術家になれる!? (ブルーバックス・2015年11月刊)
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2015/11/20
- ファイルサイズ38951 KB
この本はファイルサイズが大きいため、ダウンロードに時間がかかる場合があります。Kindle端末では、この本を3G接続でダウンロードすることができませんので、Wi-Fiネットワークをご利用ください。
この本を読んだ購入者はこれも読んでいます
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
登録情報
- ASIN : B018G3NWJS
- 出版社 : 講談社 (2015/11/20)
- 発売日 : 2015/11/20
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 38951 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効にされていません
- Word Wise : 有効にされていません
- 付箋メモ : Kindle Scribeで
- 本の長さ : 198ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 137,856位Kindleストア (Kindleストアの売れ筋ランキングを見る)
- - 887位ブルーバックス
- - 11,152位科学・テクノロジー (Kindleストア)
- カスタマーレビュー:
イメージ付きのレビュー

5 星
まだ読みかけですが
自分の知りたかったことが わかりやすく 論文化されている。こういうScience番組とかを いつも観ているのもあり 読み慣れてる世界なのかもしれないが、興味深いです。
フィードバックをお寄せいただきありがとうございます
申し訳ありませんが、エラーが発生しました
申し訳ありませんが、レビューを読み込めませんでした
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2021年2月20日に日本でレビュー済み
レポート
Amazonで購入
4人のお客様がこれが役に立ったと考えています
役に立った
2017年4月2日に日本でレビュー済み
石膏像を倒立させた状態でデッサンをすると、より詳細な画像が描けるのはなぜか、
p99あたりにその図解がしてあるが、どうやら人はものを観察するに際して、
通常は案外概念的に把握しており、しかし倒立像のデッサンがよりデッサンらしくなるのは、
意味の解析などトップダウン情報の入力抑制によるものだといい、
さらにはp101にシェマチックな説明があるように、感覚情報などボトムアップ入力促進などから、
へブ学習則(入出力の呼応による神経強化、フェヒナー則にも近い)としての出力に至るまで、
θ波とγ波とをキャリアーとして、セロトニンやノルエピネフリンなど神経伝達物質をモジュレータ(神経発火の制御系)として、
よりニュアンスにとんだ創成活動をこなすこともできる、といった説明はとても分かりやすく思えます。
また、本書は人脳の発達を本源的な個性化の過程とみなす仮説に立ってもいるようで、
それはすでに前座的な形成過程において、適当な外界モデルを内面化してゆく際にも顕現し、
いわば認知の内在化は観察の外在化に先行しうる、というプロトコルであるようにも感ぜられるわけで、
外部にあるものを可及的忠実にカンバスに再現してみる場合でさえ、本源的に入り込んで機能している、
認識のフィルターを経た形象や色彩の再構成なのではないでしょうか、本書からはそんな気概も伝わります。
ヘッケルの系統発生学を待つまでもなく、形成物は形成過程を短日時で再現するともいいますから、
いわば「三つ子の魂」のように、個性的な表現を人はつづける、ということにもなるのでしょうか。
本書第1章では、人は神経系、とくにシナプス結合の強さを自在に変えうるシナプス可塑性によって、
学習と記憶の情報処理を遂行しているといいます。ヘブ則はその強化パターンを示しているようです。
そこで、同類の強化方法をとっている点では、人類共通の課題に対応していますが、
強化パターンの多様性においては、まさに個別的な反応となっている点が興味深くあります。
つづく第2章では、著者が携わっている絵画世界におけるニューロンの役割分業、反応形態について、
脳科学の視点から述べられています。次の第3章がいわば真骨頂なのですが、
ニューロンのダイナミック構造が時空間の情報をどう処理し、シナプス可塑性とその学習則がどう記憶を表現するか、
結果どう創造性が生まれてくるかについて、著者の研究経験から考察されています。
即ち、半ば万能的な記憶システムは、脳内に形成された外界モデルをアトラクタという安定構造をなして表現しているといい、
逆向性にせよ前向性にせよ、過去現在未来に関する情報が変換して記憶されているがために、
瞬時にして、ピアジェ的な操作を加えることができるともいいます。
ここまで記述したところで、著者は未知の世界を求めて脳科学の探究をつづける旅人としての自己に帰り、
「いったい脳は情報をどう表現しているか」という基本的スタンスから、
第4章と第5章を割と一気に書き進むのであり、そこでは絵画に加え、音楽と舞踊も脳とのかかわりで登場します。
以て本書のもうひとつのテーマである芸術脳が再びクローズアップされます。
即ち、脳内の再現的世界と外界との相互作用の結果、各様の新しい世界(創造性)が生み出され、
日々芸術などをつうじて自己を存在証明してゆく、という結論へと導くわけです。
近年の傾向として、隆盛極まりない脳科学の世界への、予備知識の見取り図としても本書は便利で、
その点一種の神経入門としてもおすすめかと思います。いわば著者の研究者および画家としての、
脳神経系へのアプローチの経験と知識とがよきブレンドをなしており、平明な記述スタイルとなって現れてもいるので、
沿って読んでも、また一見興味深い個所から読み進めても理解可能だと思います。
著者の言うとおり、本書を読了後、何かそれまでとは変わった点も出てくることが予想されるので、
ひとつ楽しみながら読み進まれるとよいことを付言しておきます。
p99あたりにその図解がしてあるが、どうやら人はものを観察するに際して、
通常は案外概念的に把握しており、しかし倒立像のデッサンがよりデッサンらしくなるのは、
意味の解析などトップダウン情報の入力抑制によるものだといい、
さらにはp101にシェマチックな説明があるように、感覚情報などボトムアップ入力促進などから、
へブ学習則(入出力の呼応による神経強化、フェヒナー則にも近い)としての出力に至るまで、
θ波とγ波とをキャリアーとして、セロトニンやノルエピネフリンなど神経伝達物質をモジュレータ(神経発火の制御系)として、
よりニュアンスにとんだ創成活動をこなすこともできる、といった説明はとても分かりやすく思えます。
また、本書は人脳の発達を本源的な個性化の過程とみなす仮説に立ってもいるようで、
それはすでに前座的な形成過程において、適当な外界モデルを内面化してゆく際にも顕現し、
いわば認知の内在化は観察の外在化に先行しうる、というプロトコルであるようにも感ぜられるわけで、
外部にあるものを可及的忠実にカンバスに再現してみる場合でさえ、本源的に入り込んで機能している、
認識のフィルターを経た形象や色彩の再構成なのではないでしょうか、本書からはそんな気概も伝わります。
ヘッケルの系統発生学を待つまでもなく、形成物は形成過程を短日時で再現するともいいますから、
いわば「三つ子の魂」のように、個性的な表現を人はつづける、ということにもなるのでしょうか。
本書第1章では、人は神経系、とくにシナプス結合の強さを自在に変えうるシナプス可塑性によって、
学習と記憶の情報処理を遂行しているといいます。ヘブ則はその強化パターンを示しているようです。
そこで、同類の強化方法をとっている点では、人類共通の課題に対応していますが、
強化パターンの多様性においては、まさに個別的な反応となっている点が興味深くあります。
つづく第2章では、著者が携わっている絵画世界におけるニューロンの役割分業、反応形態について、
脳科学の視点から述べられています。次の第3章がいわば真骨頂なのですが、
ニューロンのダイナミック構造が時空間の情報をどう処理し、シナプス可塑性とその学習則がどう記憶を表現するか、
結果どう創造性が生まれてくるかについて、著者の研究経験から考察されています。
即ち、半ば万能的な記憶システムは、脳内に形成された外界モデルをアトラクタという安定構造をなして表現しているといい、
逆向性にせよ前向性にせよ、過去現在未来に関する情報が変換して記憶されているがために、
瞬時にして、ピアジェ的な操作を加えることができるともいいます。
ここまで記述したところで、著者は未知の世界を求めて脳科学の探究をつづける旅人としての自己に帰り、
「いったい脳は情報をどう表現しているか」という基本的スタンスから、
第4章と第5章を割と一気に書き進むのであり、そこでは絵画に加え、音楽と舞踊も脳とのかかわりで登場します。
以て本書のもうひとつのテーマである芸術脳が再びクローズアップされます。
即ち、脳内の再現的世界と外界との相互作用の結果、各様の新しい世界(創造性)が生み出され、
日々芸術などをつうじて自己を存在証明してゆく、という結論へと導くわけです。
近年の傾向として、隆盛極まりない脳科学の世界への、予備知識の見取り図としても本書は便利で、
その点一種の神経入門としてもおすすめかと思います。いわば著者の研究者および画家としての、
脳神経系へのアプローチの経験と知識とがよきブレンドをなしており、平明な記述スタイルとなって現れてもいるので、
沿って読んでも、また一見興味深い個所から読み進めても理解可能だと思います。
著者の言うとおり、本書を読了後、何かそれまでとは変わった点も出てくることが予想されるので、
ひとつ楽しみながら読み進まれるとよいことを付言しておきます。
2021年9月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
自分の知りたかったことが わかりやすく 論文化されている。こういうScience番組とかを いつも観ているのもあり 読み慣れてる世界なのかもしれないが、興味深いです。

自分の知りたかったことが わかりやすく 論文化されている。こういうScience番組とかを いつも観ているのもあり 読み慣れてる世界なのかもしれないが、興味深いです。
このレビューの画像

2016年1月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
著者の塚田稔氏は、「脳の世紀」など日本の脳科学研究を長年主導してきた工学系の脳科学者として名高いが、実は洋画家としても数多くの受賞作品があり、画壇の理事や審査員を務める芸術家として活躍している。本書は、脳と芸術を極めた著者が、人間の脳はどのようにして創造性を発揮するのかを脳科学の視点から科学的に大胆に切り込んだ「芸術脳」の解説書である。
前半では、脳が情報を創成する仕組みについて、科学的な知見に基づいて詳細に解説される。
人間の脳内には、外界と作用する「再現的世界」と新たな情報を産む「情報創成の世界」が共存し、それらがダイナミックに協調し合うことが創造の本質であると捉える。ピカソの絵を例にとると、網膜が視覚情報の輪郭やコントラストをもとに「具象の世界」を形成し、一次視覚野は特徴抽出により「デフォルメされた世界」を再現する。そして高次視覚野がシンボリックな表現に進化したキュビズムの「抽象の世界」を生み出す。また、色についても、網膜や一次視覚野は「物理的な色」を感知し、高次視覚野は概念的な「恒常性の色」を再現するが、前頭葉では情報創成の世界の「心理的な色」が生み出される。このような脳の情報創成には、記憶と学習による神経回路網の自己組織化が必須であり、神経細胞はオシレーション活動を通じてお互いのコミュニケーションを図っている。
後半は芸術脳の視点で絵画の名作を鑑賞する応用編である。
レオナルド・ダ・ヴィンチ、モネ、シャガールなどの名画を挙げて、脳科学的な解釈が見事に加えられる。ハッと気づかされて、脳科学のプロを感心させるほど説得力がある。さらには著者自身の作品も丁寧な解説とともにカラーで紹介される。なるほど、創造への情熱がおのずから伝わってくる。最後に述べられている著者の脳研究の経歴は、日本の脳科学の発展史そのものである。
本書は、自由で独創的な発想を大切にして真理を探究することを楽しむ、塚田氏の生き方を表現した芸術である。脳科学者だけでなく、現代科学に閉塞感を感じる研究者や、創造の糸口を探している芸術家にも、ぜひ一読を勧めたい。きっと創造への勇気を得ることができるであろう。
前半では、脳が情報を創成する仕組みについて、科学的な知見に基づいて詳細に解説される。
人間の脳内には、外界と作用する「再現的世界」と新たな情報を産む「情報創成の世界」が共存し、それらがダイナミックに協調し合うことが創造の本質であると捉える。ピカソの絵を例にとると、網膜が視覚情報の輪郭やコントラストをもとに「具象の世界」を形成し、一次視覚野は特徴抽出により「デフォルメされた世界」を再現する。そして高次視覚野がシンボリックな表現に進化したキュビズムの「抽象の世界」を生み出す。また、色についても、網膜や一次視覚野は「物理的な色」を感知し、高次視覚野は概念的な「恒常性の色」を再現するが、前頭葉では情報創成の世界の「心理的な色」が生み出される。このような脳の情報創成には、記憶と学習による神経回路網の自己組織化が必須であり、神経細胞はオシレーション活動を通じてお互いのコミュニケーションを図っている。
後半は芸術脳の視点で絵画の名作を鑑賞する応用編である。
レオナルド・ダ・ヴィンチ、モネ、シャガールなどの名画を挙げて、脳科学的な解釈が見事に加えられる。ハッと気づかされて、脳科学のプロを感心させるほど説得力がある。さらには著者自身の作品も丁寧な解説とともにカラーで紹介される。なるほど、創造への情熱がおのずから伝わってくる。最後に述べられている著者の脳研究の経歴は、日本の脳科学の発展史そのものである。
本書は、自由で独創的な発想を大切にして真理を探究することを楽しむ、塚田氏の生き方を表現した芸術である。脳科学者だけでなく、現代科学に閉塞感を感じる研究者や、創造の糸口を探している芸術家にも、ぜひ一読を勧めたい。きっと創造への勇気を得ることができるであろう。
2018年9月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
タイトルにあるようにダイナリズムで、とにかくダイナミック、ダイナミックと繰り返し文章に出てきてそれが気になり内容が頭に入ってきませんでした。
2018年2月20日に日本でレビュー済み
毎回見直しても難しい部分があるが、読み返せば読み返すほど脳の基本概念⇒ヒトが一体何する生物かということがTop DownとBottom Upの対比で染み込む。しかも著者自身がヒトと他を分けた構成要素トリロジーである「こころ」「言語」「芸術」のうち”芸術”を実践されており、更にそれを科学者の観点で視て書かれているのでどんな脳の文献より入ってくる(⌒∇⌒)
2018/3/5に銀座である脳領域/個体/集団間のインタラクション創発原理の解明と適用
キックオフシンポジウムで講演されるようだ。行きたいな(><)
2018/3/5に銀座である脳領域/個体/集団間のインタラクション創発原理の解明と適用
キックオフシンポジウムで講演されるようだ。行きたいな(><)