本書は次の書き出しで始まる。
「私は、誰かのために、何かできることがあるだろうか?
What can I do for someone?
人が生きていく上での喜びとは、自分が誰かのためにできることがあるという認識です。」(p.iii)
AKB48は東日本大震災の2か月後から被災地に入り、現在まで被災地訪問活動を中心とした「〔誰かのために〕プロジェクト」(義援金総額10億円以上)を継続している。その総括的概略が本書で語られている。あえて「全貌」と書かず「総括的概略」と評者が表現するのには、理由がある。まずは「峯岸みなみの涙」(pp.5-8)からその端緒を紐解いていこう。
2011年6月11日に実施された第2回被災地訪問活動で、メンバーがステージパフォーマンスを披露して、締め括りの挨拶をしているとき、4~5歳くらいの女の子が、ステージに近づいてきて、シロツメクサの小さな花束を峯岸みなみに渡す。おそらくその子の家の近くに咲いていた花なのだろう。「来てくれてありがとう」の意味を込めて、その女の子は花を摘み、小さな花束として峯岸に渡したのである。
そのとき、峯岸みなみはステージ上に膝をついて花束を受け取る。その様子は本書7ページに写真で収められている。しかし、後に峯岸は、涙ながらにその時の後悔を告白する。「なぜあのとき、私はステージから飛び降りて、その女の子をギュッとして(抱きしめて)あげられなかったのだろう。」と。アイドルであるがための苦悩、隣人を愛する温かい心を持っているがための苦悩を、峯岸みなみは覚えたのである。被災した人を励ますための活動が、図らずもメンバーの人間的成長の糧となっている。少女たちが邂逅したあまりにも美しく崇高な逆説である。
この峯岸の告白は本書には収められていない。ドキュメンタリー映画『DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら、夢を見る』(東宝、2012年)に収録されている(DVD DISC.1, 42分07秒~44分08秒)。
この一例からも分かる通り、AKB48の「〔誰かのために〕プロジェクト」には膨大な物語が蓄積されている。その総量は果てしなく、多くの人々の記憶に中で連綿と拡散し続ける。それは一書で詳述できるようなものではない。
本書を読むとき、我々は「生きている意味」「生きていることの尊厳」を再確認する。「私は誰かのために何かできているだろうか?そうだ。・・・をしていることで社会の一員として寄与しているじゃないか。」そうした思いを巡らせながら読んでみたら、きっと新たな勇気が湧いてくるであろう。

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AKB48、被災地へ行く (岩波ジュニア新書) 新書 – 2015/10/21
石原 真
(著)
「アイドルとして自分たちの出来ることをやろう!」。AKB48グループの被災地訪問活動は2011年5月から現在まで、毎月1回、一度も欠かすことなく続けられている。即席のステージで行われるミニライブや握手会に参加したメンバーの数はのべ450人以上…。彼女達はそこで何を感じたのか? アイドルの知られざる活動の記録。[カラー写真多数]
- 本の長さ208ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日2015/10/21
- 寸法10.5 x 1.1 x 17.5 cm
- ISBN-10400500816X
- ISBN-13978-4005008162
登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2015/10/21)
- 発売日 : 2015/10/21
- 言語 : 日本語
- 新書 : 208ページ
- ISBN-10 : 400500816X
- ISBN-13 : 978-4005008162
- 寸法 : 10.5 x 1.1 x 17.5 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 409,552位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 443位岩波ジュニア新書
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2015年11月13日に日本でレビュー済み
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2020年4月14日に日本でレビュー済み
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AKBには特に思い入れのないオヤジが買いました。
被災地にはたくさんの方々が支援に駆けつけました。が、未だに被災地へ赴き被災地の方に笑顔を届けている彼女たち。あれから9年、メンバーも変わり日本も変わった今でも被災地に駆けつけている彼女たち。本当にありがとう。貴女達が被災地の子供に一番笑顔を届けてくれたと思う。あの時の子供達が中学生、高校生になった今でもあの時の嬉しさは忘れないと思う。AKBのみなさん本当にありがとう。
被災地にはたくさんの方々が支援に駆けつけました。が、未だに被災地へ赴き被災地の方に笑顔を届けている彼女たち。あれから9年、メンバーも変わり日本も変わった今でも被災地に駆けつけている彼女たち。本当にありがとう。貴女達が被災地の子供に一番笑顔を届けてくれたと思う。あの時の子供達が中学生、高校生になった今でもあの時の嬉しさは忘れないと思う。AKBのみなさん本当にありがとう。
2016年1月11日に日本でレビュー済み
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その言葉を改めてかみしめながら読んでいました。もともと、マブリットキバさんのぐぐたす・755は拝読させていただいていましたし、それを読むだけで涙が止まらないくらいでした。しかし、こうしてAKB側の思いや信念、葛藤、試行錯誤を知ることで、あらためて復興とは何なのか、誰のためのものなのか、という色々なことを考えさせられました。震災からまもなく5年という事実を一年に一回ではなく、“What can I do for someone?”誰かのために、を日々考えていきたいと改めて心に刻みました。
2020年2月10日に日本でレビュー済み
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AKB48はファンでないが、この活動は素晴らしい。途中、握手会を襲われることもあったが、その後も活動してくれた。もう、卒業したメンバーもいるが、これからも、頑張って欲しい。
2015年11月15日に日本でレビュー済み
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大震災も4年経てば「もう過去の話。復興も進んでるんでしょ?」と思われがち。決してそうじゃないことをAKBの慰問活動が教えてくれるのだ。
彼女達の慰問活動がずっと続いていて、それをNHKの番組が定期的に取り上げるから「あーそうなんだ。まだ大変なんだ」と分かってもらえるし、忘れないでいてもらえる。震災の当座はいろんな有名人が現地に行った。でも、今もずっと続けている人は少ないだろう。だから、偉いのだ。
この本も「忘れないでもらう」ための手段の一つ。写真を沢山載せているのも、本書を手に取って、実際に買ってもらうための惹きを考えてのことだと思う。
カラー写真が映える紙質で作って、尚且つ余り高いお値段にならないように新書の形式になっている。それを儲け主義の「ぼったくり」と勘違いする人は、本をあんまり買わないのだろう。今のご時世、本を作るのはとっても高くつくんだよ。
彼女達の慰問活動がずっと続いていて、それをNHKの番組が定期的に取り上げるから「あーそうなんだ。まだ大変なんだ」と分かってもらえるし、忘れないでいてもらえる。震災の当座はいろんな有名人が現地に行った。でも、今もずっと続けている人は少ないだろう。だから、偉いのだ。
この本も「忘れないでもらう」ための手段の一つ。写真を沢山載せているのも、本書を手に取って、実際に買ってもらうための惹きを考えてのことだと思う。
カラー写真が映える紙質で作って、尚且つ余り高いお値段にならないように新書の形式になっている。それを儲け主義の「ぼったくり」と勘違いする人は、本をあんまり買わないのだろう。今のご時世、本を作るのはとっても高くつくんだよ。
2016年2月10日に日本でレビュー済み
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震災当初からの記事が載っていて、卒業メンバーが被災地へ出向いて活動した結果が載っていて懐かしかった。
2016年10月21日に日本でレビュー済み
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AKB48の違った一面を知る事が、できる本です。被災地に行った事のない人に特にみてほしいです。
2016年3月10日に日本でレビュー済み
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本のサイズが小さめなので心配してましたが他の本同様に丁寧な梱包でキチンと届きました