アメリカの社会学者であるCWミルズによる、アメリカ社会における権力エリート集団についての研究書の上巻。全十五章のうち第7章まで収録。巻末に原著者註と訳者註。
章立ては、
第一章 上層諸グループ
第二章 地方社会
第三章 大都市上流社会
第四章 有名人
第五章 大富豪
第六章 会社最高幹部
第七章 会社富豪
となっていて、地方の名士からメディアに出没するセレブリティ、富豪やビジネス・エグゼクティヴといった範疇のエリート集団の生態と心理と社会的位置、エリート相互の結びつきや中下層の人々との違いについて議論を進めている。その内容は過激で、発表当時からさまざまな反論が寄せられたというが、反論されなければいけないぐらいの鋭い指摘が数多い。特に、その外側にいるものにとっては素朴に奇妙に思える権力エリートの中の人たちの思考回路というか世界観がどのように構成され、強化され、維持され、継承されていくのかについてのメカニズムはなるほどと思った。この上巻では経済界のエリートを多く収録しているが、以前から気になっているビジネス・イデオロギーについての指摘が多く、参考になった。
議論の中でヴェブレンへの言及が多く、依拠する先にも反面教師にもなっているようだが、読んだ後ではブルデューの問題意識と重なっているようで、一方でブルデューの議論ほど網の目は細かくなかった。しかしながら、知識人・インテリとしての力を存分に発揮した良作だと思う。寺山修司は「すべてのインテリは、東芝扇風機のようだ。回ってるけど、前進しない」と言ったが、その言葉を使って言えば、不合理や不正や偽善や虚偽に誰もが気づいていても口にしようとせず、トートロジーばかりが通用して澱んだ空気が渦巻いている状況を察知して、扇風機として言論を起こし場の空気をかき混ぜて活発な議論や快適な精神を取り戻すきっかけを作ることに成功している。(寺山修司自身が、短文章句や常套句・引用句の読み替えの達人として、文人インテリの一典型だったことも思い出す。)他に誰も話したりしなければおかしなやつらがまともに見えてくる、というのは歌の文句だが、この著作を読めば、まともを装っている人たちがおかしく見えてくるかもしれない。今の世界の見え方にも関わっている議論を含んでいる。下巻も面白そう。

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パワー・エリート 上 (UP選書 28) ペーパーバック
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- 本の長さ310ページ
- 言語日本語
- 出版社東京大学出版会
- ISBN-104130050281
- ISBN-13978-4130050289
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登録情報
- 言語 : 日本語
- ペーパーバック : 310ページ
- ISBN-10 : 4130050281
- ISBN-13 : 978-4130050289
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2014年11月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
金持ちであることで得られる享楽性や快楽に興味があって手に取ってみました。それがテーマの本ではないですが、そこが重要だと思うのです。
文中にある「真の大富豪は、自分のちょっとしたきまぐれや病み付きを巨大な規模で実現する手段を持っている。そしてその特権の中で最も羨ましいものは、考えや感じをとことんまでおし進める力であり、多種多様な気まぐれを実現する事により感受性を敏感にしうる力である」が面白かった。これが隠された大富豪の快楽や洗練されていく事の源泉でしょう。「欲する時に、欲する方法で、欲する行為をすること」とかもある意味究極だなーと目から鱗が落ちました。
どっかの社長が、ある場所までの飛行機旅行が楽しかったから、その場所にある会社を買収したとか、自分の思った事をすぐに実現できるというのは、確かににかなり快感が強そうです。
そして筆者は、貧乏人は金持ちが心空虚に繁栄していると思っているが、それは自分たちが折り合いをつけるために言ってるだけとまで言っててかなり身もふたもない・・・・・
かなり振り切れた本、という印象を持ちました。
アメリカのどこかの誰かのパワーエリートは、今自分の想像のつかないような(次元の違う)、楽しみや苦しみを感じていると空想しながら読むのはすごく楽しかったです。
文中にある「真の大富豪は、自分のちょっとしたきまぐれや病み付きを巨大な規模で実現する手段を持っている。そしてその特権の中で最も羨ましいものは、考えや感じをとことんまでおし進める力であり、多種多様な気まぐれを実現する事により感受性を敏感にしうる力である」が面白かった。これが隠された大富豪の快楽や洗練されていく事の源泉でしょう。「欲する時に、欲する方法で、欲する行為をすること」とかもある意味究極だなーと目から鱗が落ちました。
どっかの社長が、ある場所までの飛行機旅行が楽しかったから、その場所にある会社を買収したとか、自分の思った事をすぐに実現できるというのは、確かににかなり快感が強そうです。
そして筆者は、貧乏人は金持ちが心空虚に繁栄していると思っているが、それは自分たちが折り合いをつけるために言ってるだけとまで言っててかなり身もふたもない・・・・・
かなり振り切れた本、という印象を持ちました。
アメリカのどこかの誰かのパワーエリートは、今自分の想像のつかないような(次元の違う)、楽しみや苦しみを感じていると空想しながら読むのはすごく楽しかったです。
2011年9月2日に日本でレビュー済み
封建社会を経験した日本はヨーロッパでは、貴族は武士が君臨して、商人を統治するという伝統が長く続いた。しかし、アメリカには上層ブルジョアジー(経済エリート)を押さえつける貴族層が存在しなかった。その結果、経済エリートは「敵対者を持たないブルジョアジー」となり、富だけでなく権力や名声をも手にすることになった。